海

連載『オスカルな女たち』

《 孤独な闘い 》・・・7

「かわいさあまってってやつでしょうか…まるで父親みたいですね」
 その様子が想像できるだけに思わず笑みを漏らすひかる。
「父親…そうかも。母親は操(みさお)先生がやってるもんな」
「女3人じゃないじゃないですか…」
「いうね」
「たまには自分からあやまってみたらどうですか?」
「あやまる理由が見つからない」
 心の本音がつい言葉に出てしまった。
「真実(まこと)先生って…かわいいですね。楓さんがなんであんなになつくのか解る気がします、ふふふ…」
「あたしは解らない。かわいいとは無縁だ」
「だからって、若い患者さんと比べちゃかわいそうですよ」
「そういうんじゃない。そういうんじゃないけど」
 子どもを、作らないのではなく、作れない人もいるということを忘れている・・・・と、今は「出産」の望みを絶たれた織瀬(おりせ)のことを考えてしまう真実だった。

 と、その時、診察室の扉がノックされた。
「はい」
「最後の患者さん入りま~す」
 最近すっかりご機嫌斜めの楓が、真実の顔も見ずにひかるにカルテを手渡して出ていった。
(懐かしい語尾…)
 それをひかるから受け取りながら、
「はいよ」
 溜め息をつく真実に、
「楓(あちら)は早々にいいわけか謝罪をおすすめします」
 特別患者の専任を楓の代わりに命ぜられたひかるは、入り口に向かいながら「御承知の上でしょうけど」とドアノブに手をかけた。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです