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連載『オスカルな女たち』

《 軌道修正型恋愛 》・・・11

「それって…ずいぶん前から準備していた、って聞こえるけど?」
 今まで散々、つかさの申し出を破り捨てていた吾郎の行動とは結び付かないと考える織瀬(おりせ)だった。
「そうなんだよねぇ…」
そこが解らないのよね…とつぶやいて、
「しかもよ、舵(かじ)には『やっと決心したのかー』って言われたのよ、あたし。『しぶといなおねぇも』…って」
 思い出したことに憤慨する。

「え~なにそれ…?」
「でしょ!『なにそれ』、でしょ? あの日引き出しを見たら、やっぱり離 婚届のストックはなかったのよ。『明日また来る』って、てっきり夜だと思ってたから、日中取りに行って持って帰ればいいか…って軽く考えてたんだけど…」
「すでにこれが置いてあった…と…?」
「そう…」
 偽物かと思って何度も見返しちゃったわよ…と、こちらも半信半疑の様子のつかさ。
「荷物は?」
「ほとんど持って行ったみたい」

(今回ばかりは空き巣というより、夜逃げに近い状態だったな…)

 散らかして出て行かれるより、まったく荒らされた気配のないままクローゼットの中身が空になっていることの方が、これほど気持ちの悪いものかと実感したものだった。
「あとは適当に捨ててくれって」

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです