スパイス

連載『オスカルな女たち』

《 スパイス 》・・・5


「でも、資格とかいらないのかな? お茶出すだけにしても…」
「オフィスと一緒よ。セルフのカフェスペースを設けるだけならいらないと思うわ。気になるようなら一応調べておくけど、おいおい考えましょう。…それより、今のお店だけど、円満退社できそうなのかしら?」
 その言葉を受け、「そうそう…」とつかさは前かがみだった体制を起こした。
「それが、オーナーが。あそこは2年契約なんだけど、賃貸契約の値上げを提示されてるらしくて、立ち退きを考えてたらしいの。ただ、サロンは赤字なわけじゃなかったから言い出しにくかったんだって。あたしにとっては死活問題にもなるからね。そうそうに『出て行ってくれ』といわれちゃぁね、」
「あら、そう。なら、ちょうどよかったじゃない…?」
 玲(あきら)は眉を上げ、口の前で両手を合わせ拍手するように指先を動かした。
「そうなの、希望があればスタッフもそのまま連れて行けるし、ね。ただ場所が場所だから…ついてきてくれるかはまだ…」
「まぁね…問題はそこよね」
 玲はそういうと、少し考えるようなしぐさを見せ、
「…つかさの引っ越すマンションもなんだけれど、ペットOKの女性専用マンションにしようと思っているのよ。それとコンビニ付きマンションの方もペットOKで話を進めてもらっているわ」
「えぇ! それはありがたい…」

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