花茶

連載『オスカルな女たち』

《 ブレインストーム 》・・・14

「そんな前のこと覚えてないよ…」
「だから、如月総合病院の団体予約のあったあの日よ! 私、あの日初めて遥さんに彼女、若林さんの素性を聞かされて…。あなたが板場を出た後、船盛の桶を取りに行った彼女のあとを追って行ったのですわ」
「如月? 船盛…。あぁ、あれか」
「『あぁ、あれか』ですって!? えぇえぇ、それですわ。ほらごらんなさい、身に覚えがおありじゃないですの!」
「そんな…! あれをそうだというのなら、誤解だ。よろけたところを受け止めただけだろう」
「えぇ、そうでしょうとも。彼女はそういうことが得意だそうです」
「なら…」
「でも! そんなことを言っているわけじゃありませんのよ、聖(ひじり)さま。あの時、私が『なにをしていたのか』と聞いた時、誤魔化したじゃありませんか! それって、他になにかあるということじゃありませんこと…?」
「そんな無茶苦茶な…」
「だって聖さま…だって、この頃…。この頃の聖さま…は、冷たいじゃありませんの!」
「なにを言ってるのか解らないよ」
「解らないのは私ですのよ! なぜ! なぜですの! なぜ…なぜ…」
 どうにもその次の言葉が言い出せないらしく、明日香はとうとう泣き出してしまった。
「…きっと。お兄様は、甘えてらっしゃるんです。明日香さんの気持ちに」
 それまで黙って静観していた織瀬(おりせ)が口を開いた。

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