窓

連載『オスカルな女たち』

《 内緒話と捨て台詞 》・・・15

「プライベートスペースが、家?…ってこと。ぁ、これって、いつか言ってた『結婚記念日にもらった』…っていう?」
「えぇ、そう」
 玲(あきら)は口数少なく鍵を出しながら玄関に向かった。
「ちょっと待って。なんでそんな、えっと、プライベートスペースよね? あまり人に見られたくないんじゃ…」
 つかさの言葉に玲は、ゆっくりと振り返り、
「えぇ、そう。本来なら、そうね。でも…詰め腹を切る、ってことかしら」
「詰め腹…」
 いつもと違う玲の様子に、つかさは身構える。
「ここはもう、私は使うつもりはないの。折を見て改装工事を施そうと思っているのよ。この家は2階建てでね、下の階は防音設備の整ったワンフロアでなにもない部屋なの。だからキッチンを増設してパーティ会場にでも作り替えようかと考えているのよ」
 そう言って玲は鍵を差し、重厚な扉に手をかけた。
「へぇ…」
 なんとなく気が引けるつかさだったが、とぼとぼと歩をすすめた。
「つかさ。この部屋を見て、あなたがどういう判断をするかはあなたに委ねるわ。これから私が話すことに、おそらくあなたは『なぜ』『どうして』と疑問を抱くと思うのよ。その疑問に答えるにはここを見せた方が早いと思うの」
 言い終えると玲は、重そうな玄関ドアを引いた。

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