恋愛体質:BBQ
『唯十と友也』
4.conviction
「あなた、恋してるわね」
トイレに立った唯十を待ち構えていたのは、なにもかも見知ったような流し目を向ける雅水だった。
「なんでっ!?」
意表を突く発言にのけ反る唯十は、答えてしまって目が泳ぐ。
「やっぱりねぇ」
勝ち誇ったように腕を組む。
「最初は和音ちゃんを見てるのかと思ってたのよね~。でも。あの目は、好きな人を追うっていうより…敵を見るような感じだった」
そう言って顔を覗き込む。
「な、なんだよ」
「和音ちゃんじゃないとすると、答えはおのずと見えてくる」
そう言って雅水は、普段生徒の前でするように、人差し指を立てて唯十を見据えた。
(毒女がポテンシャル発揮してきたー!)
即座に視線を逸らす唯十。
「でも、応援はできないわよ」
「別に、そんなの望んじゃいな…」
顔をそむけたまま答えるが、
「なんで?」
すぐさま切り返す。
「なにが?」
とぼけているのか、唯十には雅水の真意が読めない。
「なんで応援? やっぱりおまえ、ユウヤさんのこと…!」
「違うわよ」
「だよ、な」
ひとまず安心。だが。
「じゃぁ…」
他に「狙っているやつがいるのか」と、言おうとして雅水に遮られる。
「そういうことじゃないでしょ」
再び腕組をして首を振る。
「なんなんだよ、その態度」
「あぁ、癖なの。黒板の前に立つと」
言われて雅水のすぐ後ろの壁には、なるほどホワイトボードが掛けられていた。
(こいつ、教師だって言ってたっけ。めんどくせぇ)
「偏見で言うわけじゃないわよ。職業柄、そういうことには敏感なの」
「それで?」
「見たまんまよ。あなたに勝ち目はないって思っただけ~」
「な…!」
「彼が、あなたの気持ちに気付いているかどうかは別として。彼からあなたに対する愛情は感じられないから。まぁ…信頼という意味では、絶大なんだろうけど?」
(鋭いじゃねーか、毒女)
鋭い視線を投げかけるも、ぐうの音も出ない。
「解ってるよ。そんなの」
「そ。バカではないのね」
「おまえに言われたくない。それに、」
「それにー?」
「その喋り方やめろ、イライラする」
「そっちが本性なわけよね。『ぼく~』とか言っちゃって、うまく化けたもんね。さすがホスト」
「ぅうるさい!」
「なんだ、連れションか?」
そこにトイレに立ち上がった重音が顔を出した。
「それとも…」
「お兄さん、冗談やめてください」
唯十はそそくさとリビングに戻った。
「あんまりいじめてやるなよ」
「別にそんなつもりは…ちょっと! ヘンな言い方しないでよ、人聞きが悪い」
「そうかぁ? 今にも食いつきそうだ」
そう言って高笑いでトイレに向かった。
「はぁ? どいつもこいつも、食えないヤツ」
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