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連載『オスカルな女たち』

《 ポジション 》・・・1

「織瀬(おりせ)は?」
 遅れて入ってきた真実(まこと)が、つかさと玲(あきら)の背中に問いかける。
「出張ですってよ」
 言いながら自分の小さなバッグをすくい上げ、右隣の席を空ける玲。
 金曜日とあって混み合うバーで、今夜は珍しくカウンター席に並ぶ3人だった。

「へぇ、めずらしいじゃん」
 あからさまなトーンダウンも本人にとっては無意識の行動だったが、それをそれと指摘しない暗黙の了解。
「とりあえずビールね。あ…ジョッキで」
 わざわざ「ジョッキで」と言わなければいけないこの状況もまた、滅多にない光景だった。今日はカウンターに真田の姿もない。
 まさか織瀬と一緒にいるのでは…と一瞬の勘ぐりをすぐに打ち消すように、
「明後日の結婚式で使うはずのウェディングドレスが、貸衣装屋さんのミスで他の式場に紛れちゃったらしくて、引き取りに行ってるらしい」
 と、つかさが即座に付け加えた。
「明後日の結婚式?」
 それで真田もいないのか…と頭の中で点と点を結び付ける真実。バーテンダーの真田の本業はケータリング業者であり、織瀬の職場とは取引関係にある。
「そんなこともあるのね」
 席に着く真実の代わりに答える玲。織瀬不在に違和感を覚えながら、なんとなくこのメンツでテーブルに並ぶのは「初めてではないか…」と再認識する。

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