【映画は監督がすべて】 『ルパン三世 sweet lost night 〜魔法のランプは悪夢の予感〜』感想

 ルパン三世#20 『ルパン三世 sweet lost night 〜魔法のランプは悪夢の予感〜』を見ました。一つ前のエントリーで、ルパンシリーズを1〜19作まで視聴し、「最近のルパンはなっとらん!」と嘆きのエントリーを残しましたが、その次に控えていた20作目でカウンターを食らいました。

 非常に面白かった。

アミノテツロ監督

 20作目の監督が誰か知ったのは視聴後です。序盤から作画と軽快な演出に引き込まれ、魔法のランプというチープなモチーフを利用しながら、意外と惹きつけるミステリアスな展開に、興味を持ち最後まで飽きずに視聴できたところで、エンディングで「絵コンテ アミノテツロ」の文字がたまたま目に入りました。
 本当に偶然です。もしその部分を見過ごしていたら、誰が監督をしているか調べずに次を視聴していたことでしょう。「20作目いいじゃん」と19作目までの評価を覆して。

 このアミノテツロ監督は、かなり優れた演出家です。爆走兄弟レッツ&ゴー、マクロス7、あしたへフリーキック、アイアンリーガーなど優れた作品を世に送り出しています。とは言え、アミノテツロ監督の存在を初めて意識したのは今年に入ってから。マクロス7があまりにも面白く、その監督の別の作品はと、アイアンリーガー、あしたへフリーキックと触手を広げて視聴していった結果、はずれがないかなりのヒットメーカーだと知ったのです。

 現在放送中の「いわかける」も、あるところではツッコミを入れられていますが、キャラクターがよく描けていて引き込まれることこの上なし。

 『ルパン三世 sweet lost night 〜魔法のランプは悪夢の予感〜』を見終えて、監督が誰だったのかを知り、面白さに納得してしまいました。

そして、タイトルにある通り、「映画は監督がすべて(の面白さのキーパーソン)」だと再認しました。脚本家も、俳優も、色彩も、編集も何もかも、結局最後は監督の意向が入るわけです。監督よければ作品も良い。

魔法のランプ

 さて、話を20作目に戻すと、作画がデザイン面でもアニメーションでも上手く洗練されています。15作目から19作目までは、デジタルで撮影され始めたタイミングで、薄っぺらい画面になっており、さらにキャラデザ・作画も同人臭(というと酷いですが)。平たく言えば微妙でした・・・。
 しかし、20作目からは違っています。おそらく監督がデジタルの演出に長けていたことと、スタッフの慣れがあったのではないかと推測します。画面の情報量が多く厚みが増しています。そしてキャラデザと作画も、宮崎版に近づけており、視聴者が一番求めているものに戻してきています。
 これは、監督がしっかり指示・演出ができたからこそでしょう。(おそらく)

 そして演出面も、「魔法のランプから妖精が出る」ファンタジー物になっておらず、ロジックで積み上げたミステリ仕立て。ハードボイルドさとギャグを備え、まさにルパンファンが好むものに仕上がっていると思います。そして、新規ファンも楽しめる程よい定番感。過去作のオマージュが過ぎれば、くどすぎてわかる人しかわからない作品になってしまいます。無理にオマージュをねじ込もうとすればなおの事。
 しかし、本作は、ルパンシリーズの定番を新規顧客もわかるように、しっかり笑えるように構成して演出されております。突然、訳のわからないオマージュが入ることもなく、物語の中に上手にはめ込まれているのです。素晴らしい。感嘆です。

 登場人物の数と役割も、ちょうど良い感じで、悪役の使い方も適切です。中途半端に、1キャラクターに要素を詰め込むよりも、悪役を2つに分けているのがよかったかもしれませんね。

 終盤〜ラストの演出も粋で、カリオストロの城を彷彿とさせる爽やかさ。カリオストロの城っぽく演出するシリーズ作もありますが、それはただパクっているだけで、新鮮味がありません。本作にマッチしたラストをしっかりと持ってきているところが快い。オチも、ほどほどな感じで素敵です。

 とまぁ、#20は久しぶりに面白いルパンを見れて、これまでのフラストレーションをスッキリさせることができました。これも、すべて、アミノテツロ監督の手腕でしょうね。

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