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8つの心理機能についての世界一詳細な解説 〜削減・増殖・解放・保存・結合・分解・発散・吸収〜

「16タイプ分類」や「MBTI」をちょっと深掘りすると出てくる、「Fi」とか「Ne」とかいうなんか元素記号みたいなよくわからん謎のアルファベット、なんなの? しかもこれを使う人ってなんの説明もなしに当たり前のように「Siは◯◯、FeはTiとうんたらかんたら」って書いてくるので、そしたらもう文章まるごと意味わかんねえよ! ってなってる方へ。

どうもすみませんでした。

ということで、8つある心理機能をがっつりと解説していきます。それぞれの意味を丸裸にしてやりましょう。

……ところで前提なんですが、人類誰しも、これらの8つの心理機能を備えています。そう仮定されています。それらの備え方の大小によってタイプが分かれるわけですが、決して「持ってない」ということはありません。
8つすべて、あなたの心の中にあるもの、という観点でご覧ください。

この8つの心理機能の成長率によって16タイプがどのように分けられるのかについては、こちらの記事にまとめてあります。興味のある方は併せてどうぞ。




●各心理機能の動詞化


長年、個人的に「Seは外向的感覚機能です」「Fiは内向的感情機能です」なんていう説明をされてもサッパリ意味を呑み込めなかったので、頑張ってわかりやすい言葉になおしてまとめてみました。
以下、各心理機能の役割を動詞化したものになります。


Te=『減らす』

取捨選択する。要素を引く。削除する。最短距離の検索。

Fi=『増やす』
発見する。要素を足す。生成する。最長距離の探索。

Ne=『解放する』
拡散させる。シャッフルする。飛躍する。カオスに向かう。

Si=『保存する』
定着させる。整理整頓する。復元する。コスモスを保つ。

Fe=『繋げる』
結合する。集める。異なるもの同士をくっつける。回収する。

Ti=『分解する』
分離する。分岐させる。矛盾を見つける。異化する。

Se=『発散する』
伝播させる。反響させる。特別性の検出。強化する。

Ni=『吸収する』
堆積させる。濾過する。バランス調整。均質化させる。


「┃」の記号で繋がれた両者は、対称関係にある心理機能になりますが、お互い同一の作動原理を持つ動作の、真逆の出力関係にあることがわかると思います。

また、P属性のFi(増殖)、Ne(解放)、Ti(分解)、Se(発散)が「外側へ向かう矢印」であるのに対し、J属性のTe(削減)、Si(保存)、Fe(結合)、Ni(吸収)が「内側へ向かう矢印」であることも確認できると思います。

どうせなので、この動詞を使って16タイプ分書いてみます。

ESTJ(Te Si Ne Fi)は、減らしてから、保存して、ちょっと解放して、ほんの少しだけ増やす。
ENTJ(Te Ni Se Fi)は、減らしてから、吸収して、ちょっと発散して、ほんの少しだけ増やす。
ISFP(Fi Se Ni Te)は、増やしてから、発散して、ちょっと吸収して、ほんの少しだけ減らす。
INFP(Fi Ne Si Te)は、増やしてから、解放して、ちょっと保存して、ほんの少しだけ減らす。

ENTP(Ne Ti Fe Si)は、解放してから、分解して、ちょっと繋げて、ほんの少しだけ保存する。
ENFP(Ne Fi Te Si)は、解放してから、増やして、ちょっと減らして、ほんの少しだけ保存する。
ISTJ(Si Te Fi Ne)は、保存してから、減らして、ちょっと増やして、ほんの少しだけ解放する。
ISFJ(Si Fe Ti Ne)は、保存してから、繋げて、ちょっと分解して、ほんの少しだけ解放する。

ESFJ(Fe Si Ne Ti)は、繋げてから、保存して、ちょっと解放して、ほんの少しだけ分解する。
ENFJ(Fe Ni Se Ti)は、繋げてから、吸収して、ちょっと発散して、ほんの少しだけ分解する。
ISTP(Ti Se Ni Fe)は、分解してから、発散して、ちょっと吸収して、ほんの少しだけ繋げる。
INTP(Ti Ne Si Fe)は、分解してから、解放して、ちょっと保存して、ほんの少しだけ繋げる。

ESTP(Se Ti Fe Ni)は、発散してから、分解して、ちょっと繋げて、ほんの少しだけ吸収する。
ESFP(Se Fi Te Ni)は、発散してから、増やして、ちょっと減らして、ほんの少しだけ吸収する。
INTJ(Ni Te Fi Se)は、吸収してから、減らして、ちょっと増やして、ほんの少しだけ発散する。
INFJ(Ni Fe Ti Se)は、吸収してから、繋げて、ちょっと分解して、ほんの少しだけ発散する。

……はい。
どうでしょうか。
各心理機能を動詞化してみるだけで、ちょっとでもイメージしやすくなりませんか?
ぶっちゃけ以上でこの記事の本旨は終わりなのですが、ここからは、それぞれの心理機能についてさらに具体的に深掘ってみたいと思いますので、右のシークバーの短さに付き合う覚悟のある方はこのまま続きをどうぞ。



●Te=『減らす』

取捨選択する。要素を引く。削除する。最短距離の検索。

第一機能に持つタイプ:ESTJ ENTJ
第二機能に持つタイプ:ISTJ INTJ

計画を立てて実行したり、合理的な判断を得意とするTeですが、突き詰めるとそのコアにあるのは「減らす」という動作なんだと思います。

・取捨選択する
Teの行使とは、「それは必要なのか、不要なのか」を“選別”することでもあります。「それは意味があるのか、ないのか」「メリットがあるのか、ないのか」「有益か、無益か」とにかくこう、目の前のあらゆる要素をなんでもかんでも真っ二つに分けていくということです。これがTeの能力の本体です。なのでTeを使う人の口癖が「それって必要なの?」になるのは必然みたいなものですね。

・要素を引く
真っ二つに分けたうちの要らないほうを、余分な要素として取り除いていきます。
不要なものはすぐに脳内・視界から消します。そうして、不要なものが取り除かれた後のシンプルな状態を早く成立させたいという「欲求」、これがTeの正体なのかもしれません。
逆にどっちつかずの状態で中途半端に残っている、というのが落ち着きません。また、どう考えても要らんものなのになぜか要る扱いされてる状態、も我慢できないです。
あと「消去法」ってありますけど、これはまさにTe的発想な気がします。

・削除する
余計なものを消して、結果的に、余計でないものだけがそこに残るので、あとはそれを選んで組み合わせれば、完成です。
完成したらどうなるのかというと、消えます。
じつは「結果を出す」とは「削除する」ということと同義です。たとえばタスクって「消化する」って言いますし、ミッションって「クリアする」って言いますよね。どうやら結果って、出ると消えるみたいです。
Teを使い物事を真っ二つに分けて、取り除いて、消して、それを繰り返して結果を出し続けた結果、「効率主義」「合理主義」と呼ばれたりもしますが、それはTeという能力を遂行した結果なのです。

・最短距離の検索
さっきから「結果結果」やかましいですが、それもそのはずTeはまず結果=ゴールを設定し、次にそこに到達するためのルートを構築する、という能力です。
ゴールからの逆算なので当然余計な寄り道など最初から組み込まれる余地はなく、ということはイコール最短ルートが構築されることになります。Teが第一機能のESTJやENTJの「決断→実行→完了」のスピード感がずば抜けているのはいわば必然と言えます。Teという能力の性質により「躊躇」だとか「思案」だとかがそもそも入り込む余地がないってことなんですね。
とてつもなく強いモチベーションをもった「ゴール」という磁石にスタート地点もルートも生まれた瞬間からすごい力で引っぱられてあっという間に収束してしまう、みたいなイメージです。
逆に言うと、ゴールが決まらないとスタート地点が出現しません。なのでTeは、そもそもゴールがなかったり、ゴールがあやふやな物事の処理を苦手とします。たとえば恋愛相談とか。相手が何を求めているのか、どういう結論に辿り着きたいのかをまずハッキリさせないと、何をどう受け答えしていいのやら、まずそのレベルでわからなかったりします。



●Fi=『増やす』

発見する。要素を足す。生成する。最長距離の探索。

第一機能に持つタイプ:ISFP INFP
第二機能に持つタイプ:ESFP ENFP

人や自分の感情に寄り添ったり、価値観の尊重を得意とするFiですが、突き詰めるとそのコアにあるのは「増やす」という動作なんだと思います。

・発見する
Fiの行使とは簡単に言えば、そこに何かを見い出したり、意味を与える、ということです。
どういうことかというと、たとえばテーブルの上に置かれた「リンゴ」に対して、「よく見るとたくさんのうぶ毛が生えてる」とか、「よーくみると赤一色じゃない、黄色とか緑とかオレンジとか青とか茶色とかいろんな色が混じってる」とか、「部屋の中にリンゴが置かれてる雰囲気ってなんだか素敵」とか、そうやってひとつの対象・事象から無限に“何か”を引っ張り出してくる能力、それがFiという能力になります。
つまり、通常誰もなんとも思わない道に落ちてるただの石っころを、見つけて、見出して、大切にできるその能力は「流れ」や「需要」などと無関係に発動できるので、巡り巡って資源の枯渇や文明の自己崩壊、ひいては自分たちの“絶滅”をガードする役割を担っているのだと個人的には考えます。
効率に反する復元力。誤った流れに対する反抗力。Fiって、一度「それは間違っている」と思ったらもう、テコでも動きません。
実際に、近代だって合理化・効率化に従い科学化・工業化を進めていった結果、行きすぎて環境ダメージがヤバいことになったりしましたが、それでも地球が終わらなかったのはなんらかのブレーキ的な力が働いていた=誤った流れに対する反抗力が働いた、と考えて差し支えないと思います。たぶん、「森の動物たちがかわいそう」とか「地球がかわいそう」とか、そういった感じの。

・要素を足す
さっき、Fiの能力を使うとリンゴを見て「部屋の中にリンゴが置かれてる雰囲気ってなんだか素敵」という“何か”を引っ張り出してこれる、と書きましたが、さて「雰囲気」ってなんなんでしょうか。
たとえば「この町の雰囲気が好き」っていう言い方がありますが、べつに、町は町です。けれどもその言葉の中には「自分とその町の関係」だったり「その空間自体の持つ印象」だったり「時間が与える影響」だったりと、ただの町の風景にいろんな要素が足されているのがわかると思います。そうやって、物事に価値を与えたり意味を付与するのがFiの能力だと思います。
また、この「要素を足す」という行為がイコール「好き」という感情が生まれるという現象なんじゃないかと思ったんですが、どうでしょうか。……まあ違うかもしれません。ただ、好きになる、お気に入りにする、推しを決める、ってつまり要素を足している、ってことですよね。

・生成する
Fiって、歌いたい、絵を描きたい、〇〇したい、という「心理的欲求」そのものじゃないかなと思います。
つまり胸の内側に沸き起こる「温かい熱源」みたいなもの、それがまさにFiの正体なんじゃないでしょうか。
発見し、見出し、要素を足していった結果、今度はその足された要素の集合体を丸ごと取り出して自分の外側に出現させる。その結果、無から有を産み出す=生成する、ということになります。原理的に「目的」とか「損得」とか「需要」とかそういう「周囲の要請」とは無関係に成立し得るのがポイントです。
Teがゴール地点、すなわち物事を終了させるエンドポイントに強いモチベーションを持っているのに対して、Fiはスタート地点、すなわち物事が萌芽するビギニングポイントに強いモチベーションを持っているように思います。

・最長距離の探索
Fiは、出発点から目的地までの間に存在する、ありとあらゆる要素を見出して、取り出すことができます。すなわち、永遠に終わらない寄り道をすることが可能です。
「フラクタル構造」ってご存知でしょうか。拡大しても拡大しても無限に複雑な模様が出現し続けるっていう不思議な構造なのですが、Fiってああいうイメージです。無限なる要素の現出。
Teのモチベーションが解決させることにあるのに対し、Fiのモチベーションは解決させないこと、すなわちありのままを認めること、にあるように思います。
たとえば「AさんとBさんが互いに矛盾する意見を持っている状態」、これをそのまま自然状態とみなすことができるのがFiという能力。
そうやって世界の「画一化」を防いで「多様性」をもたらします。生物種にとって必要不可欠な生存戦略です。
そもそもこうして、人間を16タイプとかにばらけさせて画一化されないようにしようという発想自体、Fiという機能の発想なのかもしれません。



●Ne=『解放する』

拡散させる。シャッフルする。飛躍する。カオスに向かう。

第一機能に持つタイプ:ENTP ENFP
第二機能に持つタイプ:INTP INFP

新たな可能性を模索したり、自由な発想を得意とするNeですが、突き詰めるとそのコアにあるのは「解放する」という動作なんだと思います。

・拡散させる
物事が固定された状態から、固定されていない状態へと変化させる。定着している状態から、バラけさせる。そうやって物事を拡散状態にしていくのがNeという能力です。
スイッチがあったら押してみる。高いところがあったら登ってみる。宝箱があったら開けてみる。壺があったら割ってみる。ロケットがあったら乗り込んで宇宙へ行ってみる。パンドラの箱があったらカギを開ける。
そのように固定状態を解除することによって「条件」を確認するのだと思います。スイッチを押すとどうなるのか、どのくらいの高さならどこまで見えるのか、どれくらいの価値の物なら宝箱に入れられるようになるのか、どれくらいのダメージを与えると壊れるのか。どこまで生きられるのか。何が起きるのか。
それを確認せざるを得ない「衝動」みたいなものがNeという能力の正体、かもしれません。

・シャッフルする
Neは固定観念を覆します。というか、Neの前ではそもそも観念はどこも固定されていません。好きなように中身を入れ替えたり上下逆さまにしたりできるたぐいのものです。
人びとがなんの疑問も持たずに当たり前のようにおこなっている手続きを自由に並べ替えることができます。そういうことになっている決まり事、決まり文句、お決まりのセリフ、お約束。「もしこのときこうしたらどうなるんだろう?」「挨拶するときぜんぜん違う言葉喋ったらどうなるんだろう?」
Neを使うと、あらゆる概念の留め具がはずれ、概念同士をするするとスムーズに、どこまでもシームレスに行ったり来たり移動させることができます。

・飛躍する
Neの発想や思考は、物理的制約や時間的制約を無視できる性質があります。
たとえそれが人間には不可能なことだろうと関係ありません。物理的に無理だろうと問題ありません。遙か遠い未来のことでもおかまいなしです。そういういろんな制約を無視して自由に行ったり来たり飛び回ったりできるのがNeという能力です。
人が通常どうしても囚われてしまう先入観や文脈もいったん無視できるので、「ゴールが見えない」「先がわからない」といって人びとが動けなくなってしまう状況を突破できます。言うなればNeって、「先へ進む」能力ですよね。人類が臆せず進歩し、文明を発展させていくために必要不可欠な能力です。

・カオスに向かう
Neの能力を使うと、あらゆる事象やトピックが、何かしらの結果に対する「原因」に見えるのだと思います。そこに見える町も、このスマホも、今年起きた事件やニュースも、何かの「原因」である。
つまりすべてはそこから何かしらの結果・結末に向けて「展開」していくわけですから、Neの視界ではいつもいろんなものが今にも動き出しそうにぷるぷるしていると思います。
ところでこの「展開」という言葉、物語などでよく「次の展開」みたいな表現で使われたりしますが、じつは「展開」って論理ではありません。なにしろ「どうとでもなり得る」わけですから。
この、解が無限にあり得るというか「別になんでもアリ」の事象を捉えて、把握し、思考や判断の材料にできる能力。これがNeの本体な気がします。
また、Neはすべての事象やトピックを、部品やパーツとして捉えているかもしれません。それらは何かしらの完成品の一部であって、それらがどう組み合わさって、何が完成するのか、いつもシミュレーションしていると思います。たとえばこの「16タイプ理論」自体もNeはもっとスケールの大きな何かしらのパーツの一部、として見ているんじゃないでしょうか。



●Si=『保存する』

定着させる。整理整頓する。復元する。コスモスを保つ。

第一機能に持つタイプ:ISTJ ISFJ
第二機能に持つタイプ:ESTJ ESFJ

ルールや経験則を大事にしたり、ルーチンワークを得意とするSiですが、突き詰めるとそのコアにあるのは「保存する」という動作なんだと思います。

・定着させる
それはおもに「繰り返す」という動作によって、ある手順だったり、手続きだったり、所作や物事の道理だったりが、徐々に安定していき、馴染んでいき、定着していきます。Siとは、それを遂行する能力だと思います。
また、よくSiが強い人は「記憶力が優れている」と言われますが、当然ながらこの定着させる能力は記憶やリマインドにも適用されます。
記憶や仕草に定着させる能力。一般的に「学習能力」と呼ばれたりもしますが、Siの目的はさらにその先、定着させた先に、いわゆる「型」を作ることにあるのだと思います。
その所作や手続きに再現性を持たせ、適用範囲を最大限に担保する。そうすると万人が扱えるようになり、平等性が確保されます。
また「型」になることによって、誰かから別の誰かに引き継いだり、受け継いだりすることが可能になります。
そうして、物事が広く行き渡り、継承され循環し、「長く続くようにする」こと。これがSiという能力の本質ではないかと思います。
つまりSiとは、人びとが安心して社会生活を送るための根幹の部分を担う能力ですね。
よくSiが「伝統を大事にする」と言われるのは、いわば当然のことというか、繰り返され、受け継がれ、長く続いていくよう働きかけることがSiの目的なので、伝統文化のような古くから今日まで続いているものは、ひとつの理想の形なのですね。

・整理整頓する
Siは概念や物事の整然性を確保する能力でもあります。散らかっているものは片付けて、こんがらがっているものはほぐして、重なっているものは並べて、その状態を保ちます。
そうすることによって、この世界のありとあらゆる「関係性」を把握し、知覚することができます。
要するに「それは誰のおかげで成り立っているのか」というのがわかる、ということです。
それは過去にAさんが頑張ってくれたからそこに存在している。Bさんが我慢してくれているおかげでCが動けている。次はDの番になる。EとFが互いに協力し合っているから今Gが空いてHがその恩恵を受けている。etc……。そうやって、ありとあらゆる関係が組み合わさって成り立っている「現在」という世界の、その全体をパッと認識できる。これもSiの整理整頓能力の成せる業だと思います。

・復元する
Neがあらゆる制約を無視したマクロ視点へジャンプできるのに対し、Siは逆に、スケールの目盛りを無限に拡大したミクロの世界に介入できます。まるで顕微鏡みたいな視界を手に入れることができます。
ちょっとした小さなズレ、微細な変化、普段と違う小さな違和感を知覚し、細かな微調整や摺り合わせをおこなうことが可能です。
つまり、元の状態へと復元させることができます。
修正すること。秩序を保つこと。これもSiの能力のひとつです。

・コスモスを保つ
Siとはいわば「動いているものを静止させる」能力です。
千々に乱れる物事の動きや道理、雑多な人びとの考えや行動を落ち着かせ、安全性・平等性を確立する。
つまりコスモスを保つ=調和状態を保存する役割を持った能力です。
Fiと同じように、文明の崩壊や人間社会の破綻をガードする役割があるように思われます。Fiよりはだいぶ直接的な防衛機能ですが、そこに存在する「不安定な状態を、安定させようとするモチベーション」こそが、Siの正体なのかもしれません。
ただ、ひと口に「調和状態を保つ」と言っても、「何かを一定に保ち続ける」ことって、じつはめちゃくちゃ高度な動作だと思います。世界を整理し現在を観察し、変化やブレを知覚し修正し、それを繰り返し、継続していく。Siのそんな能力によって今日も世界の調和は保たれています。



●Fe=『繋げる』

結合する。集める。異なるもの同士をくっつける。回収する。

第一機能に持つタイプ:ESFJ ENFJ
第二機能に持つタイプ:ISFJ INFJ

集団の和を取り持ったり、豊かな感情表現を得意とするFeですが、突き詰めるとそのコアにあるのは「繋げる」という動作なんだと思います。

・結合する
Feの行使とはすなわち「何かと何かを結びつける」ということです。
Feの結合能力は、必ずしも人間同士の関係に限定されません。人間とある事象、またはある事象とある事象を「結びつけて考える」、という思考法もFeの所作のひとつであると考えます。ただしNeのような関連性とかNiのような共通点とかの側面ではなく「接着点」の側面で考えます。つまり「どうすればその2つはくっつくのか」を。
つまり、それによって導き出される解は必然的に「実用性」や「具体性」を帯びることになります。少なくともN勢のように机上の空論に終始することはありません。
「じゃあこうしてみたらいいんじゃない?」「こうしてみるのはどうだ?」というアドバイスとして現れて、それを自分自身や他者に与えることができます。

・集める
そうして繋げたものを、どんどん集合させて、集めていきます。
その際に人や概念を引き寄せたり、呼び寄せたりするのも、Feの能力だと思います。
そうして集合体を作り出し、たとえばどこからでも情報を取り出せるようにしたり、必要なときに助けを得られるようにしたり、ある方面・あるジャンルにアクセスしやすくしたり、移動を便利にしたり、すなわち「共有関係」の状態を形成して、自己のあるいは自分たちの生存確率を高めるというのがFeの生存戦略なのだと思います。
そういう集合体を想像して今パッと「それネットじゃない?」と思ったんですが、その「ネットワーク」という言葉こそ、まさにFeの代名詞としてぴったりな気がします。
Feはネットワークを構築し、自身の周囲にどんどん情報源やデバイスを増やしていき、プラグインを増設していきます。

・異なるもの同士をくっつける
ともに仲間を作る能力であり、コミュニケーション能力でもあるFeとSeはよく混同されがちなのですが、
Feは「異なるもの同士を繋げる」能力
Seは「同じもの同士の繋がりを強化する」能力
というふうに整理することができると思います。
すなわちFeはたとえ理解し合えない者同士であろうと、食い合わせの悪いジャンル同士であろうと関係なく、とにかくくっつけてしまうことが可能です。
合うだの合わないだの、相性が良いだの悪いだの、価値があるだのないだの、意味があるだのないだの、自分が興味あるだのないだの、そんなことは二の次です。なぜならFeはくっつけること自体が目的ではなく、くっつけたその先に膨大なネットワークを形成していくことが至上命題だからです。
Feの特徴のひとつによく共感能力の高さが挙げられますが、それもまた、この課題を遂行するための手段のひとつなのだと思います。

・回収する
さてそんなFeという能力ですが、一見、ネットワークを際限なく広げていって、そのまま収拾が付かなくなるところまで広がっていく「拡散」系の能力に見えますが、そこはJ型の能力ということで、その本質はやはり「収束」になります。
Feネットワークの目的は「まとめること」そして「回収すること」。
ネットワークはしばし「蜘蛛の巣」に喩えられますが、言い得て妙だと思います。Feはまさに蜘蛛の巣のように張り巡らされて、すべてを繋げて、すべてを絡め取り、いつでも好きなときに好きな場所から好きな対象へアクセスできる状態にしてしまいますが、しかしながらその目的は捕食するためではなく、まとめるためです。そして資源を無駄なく回収するためです。
そして結果的に、争いや不条理を丸く収めたり、あるいは自身や仲間を争いや不条理から守ったりする役割を果たすのだと思います。



●Ti=『分解する』

分離する。分岐させる。矛盾を見つける。異化する。

第一機能に持つタイプ:ISTP INTP
第二機能に持つタイプ:ESTP ENTP

命題や真理を追究したり、論理的思考を得意とするTiですが、突き詰めるとそのコアにあるのは「分解する」という動作なんだと思います。

・分離する
Tiは、ある概念や物事の構造体の内部に入り込み、内部から全容を演繹的に把握する能力です。
言い換えると、一緒くたにまとめられているものを分離し、種類ごとに分けて並べ替え、そしてその分離状態を把握し、処理する能力です。
この、分離して種類が増えて複雑化していくいわば「途中の状態」をTiは冷静にキャッチし、客観視し、維持しておくことができます。
つまり思考や判断の材料として利用可能になります。
たとえばTeって、ハッキリとした二元論で「間違ってる・間違ってない」しか存在しないんですが、Tiはその両端の間をさらに細かく分割し得ます。
「微妙に間違ってる、一部間違ってる、正しいとは言えない、正しくはない、時と場合によっては間違いではなくなる、etc……」
その「差違」を、ひとつずつ並列し把握し検証することができます。さらに「それが間違いだったと仮定した場合……」なんて言いながらそこから分岐点を新規作成することもできます。
Teがおこなうのがあくまで要素ごとの比較にとどまるのに対し、Tiがおこなうのは要素自体の分解になります。

・分岐させる
Tiは、ある概念や物事が複数に分岐し、択が散逸した状態を把握する能力でもあります。
ひとつだったものが2つに分かれる、あるいはそれより大きな数に分裂していく。
「枝分かれ関知能力」とでも言うべきTiの能力を使うと、どれだけ入り組んだ複雑な構造体の中に入っても、冷静に自身の現在位置を特定することが可能です。つまり迷子になりません。
そもそもの話、分岐前の元の状態と分岐後の異化されたAとBの状態を同時に一元的に把握する、というのはめちゃくちゃ高度な処理が必要なはずで、おそらく複数の処理を組み合わせておこなっているのだと思うのですが、そのうちのひとつがTiのこのマッピング能力です。
ひょっとするとTiって、地図を読んだり、等高線を読んで地形を把握したり、道順やルートを頭に入れたりするのも得意かもしれません。
また「分解」の逆の工程、すなわち「設計図を読んで完成像を把握する」というのもTi由来の能力な気がします。

・矛盾を見つける
Tiを使うと、「齟齬」を一瞬で見抜くことができます。
たとえば主張が食い違っていたり、同じ話の前後で異なる前提が採用されていたり、違う原理で作動する2つのものが同じカテゴリーに入れられていたり、異なるもの同士が区別されていなかったり、いつの間にか話がすり替わっていたり、そういった「矛盾点」をごく自然に見つけ出すことができます。
だから、かどうかはわかりませんが、Tiは作問すること・問いを立てることが得意です。なにしろ「問い」ってそもそも、それが問われ得ることに気づけないかぎり作ることはできないですから。

・異化する
Tiは、「当然だ」とされていることを「それは本当にそうなのか?」と問い直す能力です。
世の中には誰もなんの疑問も持たずに「そういうことになっているから」やっていることが無数にあります。
「みんながそう言ってるから」「流行ってるから」「ずっとそうしてきたから」「偉い人が考えたから」「ニュースで取り上げられてたから」「これで上手くいくはずだから」「科学的に証明されたから」「そういうことになっているから」。
「それは、果たして本当にそうか?」と問い、そのロジックの構造を分解し、内部を観察し、そして矛盾点=間違いを発見することができます。つまり人類が大きな過ちをやらかしたり、見当違いなゴールに辿り着くのを未然に防ぐ能力です。
またTiは、「人間の中身」を観察することも可能です。すなわち「人間の中身」を「問う」ことができます。他者の中身も、もちろん自分自身の中身も。
そして人間の中身ってえてして「無量」なので、Tiを使う人って「人間の中身」に対して何かしらこう、尊重の念というか、丁重さというか、ある種の畏敬があるように感じられます。



●Se=『発散する』

伝播させる。反響させる。特別性の検出。強化する。

第一機能に持つタイプ:ESTP ESFP
第二機能に持つタイプ:ISTP ESFP

周囲の人びとを楽しませたり、五感情報の扱いを得意とするSeですが、突き詰めるとそのコアにあるのは「発散する」という動作なんだと思います。

・伝播させる
Seの行使とは、アタックして、人やものを動かし、エネルギーの波を起こすことです。
要は「とりあえずやってみる」というヤツですね。
とりあえず投げてみる、ぶつかってみる、飛び込んでみる、足を踏み入れてみる。
そしてその場に参加すること。その場に身を置くこと。その場に一体化すること。=「自分」という影響をその場に与えること。
「その場」からの影響を受け、自身も「その場」に影響を与え、相互に影響の波を及ぼし合うこと。
この「影響の波」を関知し、思考や判断の材料として扱える能力が、Seという能力です。

・反響させる
Seは自ら言葉や行動を発し、その場に「影響の波」を起こし、伝播させたエネルギーや情報を反響させて、跳ね返ってきた情報やリアクションを確認します。まるでエコーロケーションのように。
そして自分に向けて返ってきた言葉や行動を感知して、即座に「影響の波」がさらに増幅しそうな、あるいは面白く変化しそうな言動を見出し、次のさらなる「影響の波」を伝播させていくことができます。
そんなわけで、Seを使う人がめっちゃアドリブ上手いのは、いわば必然のことになります。
Seは、瞬間瞬間で変化する状況や関係性への対応力であり、それは1対1の場合でも1対多数の場合であっても関係なく同様に発動可能です。

・特別性の検出
Seは、相互に与え合う「影響の波」の中から「特別な波」を検出し、発見することができます。
「今、この中のどれが大切なものか」「どれを大切にしなければならないか」を瞬間的に判別できる能力というか、マークする能力というか、とにかく「これは特別だ」と見出したものを大事に扱うことができる能力です。
おそらくSeの視界では、その部分がピンポイントで光り輝いて見えていたりするのでしょうが、これによって周囲の注目を集めたり、引っぱり上げて見えるようにしたり、スポットライトを当てて目立たせることができます。

・強化する
Siが「幅広く全体を保存する」ベクトルであるのに対し、Seは「特別な一点を強化する」ベクトルであるように思います。
対象の人物や、対象の物事との関係性を、より厚く、より頑丈なものに強化していく。
Seは五感をフルに活用し「現在」という形而下の情報をほぼ100%知覚できるため、現状に不足している力や部品、情報を素早く察知しそれを補充することができます。また、逆に過剰な力や交換可能な部品も察知し、それを取り除いたり移動させることもできます。
この柔軟な「補充能力」は蓄積可能であり、また継続性もあるためこれをおこなうことによりSeは、相手や物事との結びつきや絆をさらに強めていき、純度の高いものにしていくことができるわけです。
逆に言うと、Seを使う人たちは、大切な人たちとの絆や、大事な物事との結びつきにたとえ大きなダメージを受けたとしても、それをまるごと受け入れて、わりとすぐに立ち直ることができます。



●Ni=『吸収する』

堆積させる。濾過する。バランス調整。均質化させる。

第一機能に持つタイプ:INTJ INFJ
第二機能に持つタイプ:ENTJ ENFJ

過去から未来への流れを予測したり、長期的視点を得意とするNiですが、突き詰めるとそのコアにあるのは「吸収する」という動作なんだと思います。

・堆積させる
Niの能力は「ただ取り入れる」「溜める」ことです。
つまり、受け取った情報を、自分の心の中に取り込む過程において、なんのリアクションも処理もおこなわずに、その最下層の無意識にまで落とし込んで、堆積させる、という動作です。情報の地層が自然形成されるのをじっくり待つイメージです。
つまりNiとは「自分の内部に、自分のものとして」の堆積ではなく、「自分の内部のさらに向こう側の謎の空間に、自分とは無関係のものとして」の堆積になります。
なので、Tiのような「熟考」やFiのような「感受性」ともまた性質の異なるものになります。
またSeが情報や刺激を伝播させる能力であるのに対し、Niは情報や刺激の伝播に対する反抗力でもあります。
なのでNiを使う人は、誤った情報が広まるの、めっちゃ嫌がります。それこそ、自身が行動を起こすきっかけになるほどに。

・濾過する
受け取った刺激や情報に反応しない、というやり方はSiと似ていますが、Siがそれを整然と保存するのに対し、Niは濾過します。つまり「だいたいこんな感じだった」という抽象化・変換がおこなわれます。そして、そこになんらかの意味が生まれるまで待ちます。
この生まれる意味を、「予感」とか「閃き」とか言ったりしますね。
この「閃き」に関して、NeもNiもどちらも発想法は「もしAすればBになる」なんですが、両者の間には少し違いがあります。
Neは「もしAしたら」→「◯◯になるかも? あるいは××になるかも?」
Niは「もし◯◯したら?」→「必ずBになる」
こういう感じになります。
Neの場合、前半のイフ部分が具体的で確定的、後半の結果部分が未確定です。
Niの場合、前半のイフ部分が未確定、後半の結果部分が具体的で確定的です。
同じ閃きでもちょっと違いますよね。Niの閃きのほうが若干説明しづらい(謎の確信、みたいな)のはこういうシステムだからだと思います。

・バランス調整
Niは、見ている世界全体の「整合性」を調節する機能です。
つまり、バランスを取ること。偏りをなくすこと。
たとえば平等であるべきはずの社会のルールがどちらか一方に有利なように偏っていたり、特定のあるグループにだけ救済措置がとられていなかったり、均等に振り分けられるべき資源の分配勾配が狂っていたりするとすぐに違和感を覚え、それに対する対処を試みようとします。
必然的に「少数派の味方につく」ということが多くなりますが、あくまでNiの目的はバランス調整であって、整合性が確保された後は味方ではなくなる、というのがポイントです。

・均質化させる
Niは受け取った刺激や情報を無意識層に堆積させ、濾過し、その自然形成された地層を観察して、同じことが繰り返されている部分や上と下で共通している部分などを抜き出します。
いわゆる「パターンの抽出」というやつですね。
「アレとアレは同じことだから、たぶん同じ結果になる」とか「あの問題にはあの解決方法が使える」とか「じつはこの道を進むのが正解だ」とか。
そういったものを思考や判断の材料にできるのがNiという能力です。
またNiは「おおよその範囲」を抽出することも可能です。
たとえば「みんなはSNSに何を求めているの?」という問いに答える機能がNiで、その答えは言語化されない「だいたいこういうようなもの」という範囲推定方式になりますよね。
なのでNiは「SNSでそれをやっても絶対に失敗する」、「根拠は説明できないけど」。という謎の確信を持つことができます。その際の説明されない根拠を言語化すると「推定範囲から確実に外れているから」ということになります。
そのように、あまりに多様で複雑でコントロールすることも把握することもできない世界の中から「共通点」や「法則性」を引っ張り出し、世界をなるべく均質化させ、コントロールしたり把握したりしようとするやり方が、Niの生存戦略なのです。



●まとめ


ここまで長長とお付き合いいただきありがとうございました。

で、今さらで大変恐縮なんですが、この記事の内容はすべて私の個人的な考察に過ぎません。なので、たぶん真実ではありません。ただ、決して適当に思い付きで書いたわけではないので、ちゃんと長年研究して出した答えではあるので、参考程度にしていただけたらと思います。

まとめていて思ったことは、人っていろんな能力を駆使して生きてるんだなあということです。そんでもって、他者がよく使っていて自分があまり使わない能力に対して、いろんな偏見が生まれます。
独り善がり、固執している、お節介、非常識、理屈っぽい、ネガティブ、社交辞令、保守的、etc……。←MBTIの説明でよく目にするよなあこの言葉たち……。
でもそれって単に、それぞれがそれぞれの能力を駆使して生きている結果に過ぎません。
なので、この記事を見て、これらの偏見がちょっとでも軽減されてくれれば嬉しいです。

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