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レジェンド先輩方

年功序列は大切だ。
と中学高校と体育会系であった僕はそう思う。実際年上の人は年下の人よりも長く生き抜き、先輩はグループを守りぬいてきたという部分では頭が上がらない。

しかし尊敬という気持ちは、背中を見ることで湧き上がってくると思う。

 中学時代サッカー部に所属していた僕は、当時1つ上の学年の先輩方のことを尊敬していた。

  2年の夏を過ぎると先輩方は引退し、僕は副部長になり、より一層部活に力を入れていた。

 そんなある日の休日練習の時のことだ、顧問の先生が事務作業をしに職員室に戻っている間に、グラウンドの入り口から五人組が横並びになって歩いてくるのが見えた。

 先輩方が部活を見にきてくれたのだ。僕は心の中で(先輩方だ!いや、レジェンド先輩方だ!)と喜んでいた。

 その後部室で着替えを済ませスパイクに履き替えた先輩方がコートに入ってきて「お前ら久しぶりだなあ」と言い、僕らと一言二言話すと早速アップを始めた。

 しかし練習を進めていると、僕らが使っていない側のサッカーゴールを使って先輩方がPK合戦をして遊び始めたのだ。そこで自分の勘違いに気づいた。先輩方は練習を見に来たのではなく自分たちが遊ぶためにサッカーゴールを使いに来たのだ。

 後輩が練習している隣で遊んでいるOBってどうなんだろうと思いながら練習をしていると、 職員室の方から「おい、お前ら!」という声が聞こえた、他の部活の人も振り返るほどの声量だ。見ると顧問の先生が職員室から出て来て先輩方に向かって叫んでいたのだ。何か話しにくるのかと思い見ていると、「邪魔だから帰れ!勘違いしてんじゃねえぞ!」と罵声を浴びせてぶちぎれたのだ。その後何度か怒鳴られた先輩方は、ブツブツと文句を言いながらグラウンドを去っていった。その後ろ姿を見て僕の先輩方に対する尊敬は薄れてしまった。

 しかしそんなふうに先生に怒られて後輩からの尊敬を失うOBというのは後にも先にも見たことがない。そういう意味ではやっぱりあの方々はレジェンド先輩方なのだ。

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