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歴史上「最も偉い人」とは

まずは、アメリカ人のアベル・ウォルマン(1892ー1989)とリン・エンスロー(1891ー1957)。

と言っても、私も「21世紀の啓蒙」を読むまでは私も全く知りませんでした。


何を基準に「偉い」と判断したかという世界の歴史上「最も多くの人を救った人」。

彼らは何をしたことで最も多くの人を救ったかというと、塩素を使った水道システムを発明したこと。

さて、どれぐらい人を救ったかというとなんと「1億7700万人」

塩素殺菌による水道水の浄化は、赤痢やコレラなどの各種感染を未然に防ぎ、多くの病気から人類を救ったというのです。

次は、ウイリアム・フォージ(1936ー)。まだご存命です。

天然痘撲滅戦略を考案した人で、エドワード・ジェンナーによる天然痘の予防接種に基づき、世界保健機機関と連携してたった3億ドルちょっとの費用で1977年のソマリアを最後に撲滅に追い込み、1.3億人の人を救いました。天然痘が撲滅したのは知っていましたが、まさかこの人だとは全然知りませんでした。

それにしても、ウォルマン&エンスローはネットで調べてもWIKIでの引用は本書からのみしかないなど全くの無名人。ウイリアム・フォージに至ってはWIKIでも出てこない。

もちろん3人ともノーベル賞もとっていない。

そして、事実上飢餓を撲滅したノーベル賞受賞者の以下3名。

化学肥料を発明(=ハーバーボッシュ法)したドイツ人のフリッツ・ハーバー&カール・ボッシュのコンビ。
飢餓の恐怖から人類を解放し、27億人の人を救ったといわれています。2人はこの方法でノーベル化学賞受賞。ただフリッツ・ハーバーの方は第一次世界大戦でドイツ軍が使用した化学ガスも発明したことで賛否両論。

そして「緑の革命」を主導したノーマン・ボーローグ。ノーベル平和賞受賞。
小麦はじめ様々な穀物の品種改良によって1961年→2009年までに世界の農地面積が12%増えたが、生産量は300%増え、化学肥料の発明とともに飢餓を過去の出来事にしてしまいました。

将来、人口は70億人→最大110億人まで増え、その後漸減するといわれていますが、食糧問題に関しては気候変動のマイナス影響を上回る技術革新が(遺伝子組み換えやゲノム編集含め)、引き続き進んでいるのでほとんど問題ないでしょう。

以上、農業生産革命も感染症の撲滅も衛生環境の改善も、全ては近代市民社会の原理と同じ理念「啓蒙主義の理念(※)」によってもたらされたもの。

※啓蒙主義の理念=理性・科学・ヒューマニズム・進歩の理念のこと

スティーブン・ピンカーやハンス・ロスリングのファクトフルネスが明らかにしたように、「利用可能性バイアス」や「認知バイアス」に惑わされずに数値化することによって、ちゃんと世の中を評価していかないといけない格好の事例ですね。

*イタリア共和国 ローマ市 水道遺跡

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