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「兵庫の風土」阪神・淡路大震災とその復興


1995年1月17日に起きた兵庫県南部地震によって引き起こされた阪神・淡路大震災

三田市「兵庫県立人と自然の博物館」の展示より。2024年5月撮影:以下同様

地震が頻繁に起きる関東と違い、兵庫県南部地震が起きる前までは、姫路出身の私の母含め「関西は地震はないから安心」みたいなことを言われていたこともあり、兵庫県南部地震は関西の人たちに大きなショックを与えたようです。

淡路島:北淡震災記念公園 野島断層保存館にて「断層のズレ」がはっきりわかる部分

⒈阪神・淡路大震災の被害状況

やはり、地盤が新しい沖積平地で揺れが大きかったのか、古い建物が多かったのか、特に平地のエリアで被害が大きい様子がよく分かります。沖積平地は地盤が新しいので、揺れも大きく軟弱地盤であることが多いように思います。

色が濃くなるほど被害が大きかったエリア「人と防災未来センター」の展示より

現段階の地震学の知見では、日本列島には2000ヶ所以上の活断層があり、仮に活断層が2000年に1回程度、断層がずれて大地震が起きるとしたら、毎年日本のどこかで大地震が起きていてもおかしくない、という確率。

なので私たちは「南海トラフ地震の発生確率が高い」などに惑わされず、(熊本や能登半島の事例を見れば分かるとおり)「日本のどこに住んでいても大地震の可能性がある」と思って準備しておく必要があります。

さて、阪神・淡路大震災に関する大規模な施設としては、三宮駅からバスで14分の海沿いにある「人と防災未来センター」があります。

人と防災未来センター

私自身、実際に神戸の方に、当たり障りのないよう話の流れの中で「なんとなく」の感じでヒアリングしてみましたが、興味深い話としては、

「隣近所の寝ている部屋まで知っていたから、生き埋めになった人の救助に役立った」
「神戸にもタワマン増えてきたけど、電気・水道・ガスが止まった時のことを考えると、とてもじゃないけど住む気にならない」
「水道よりも電気のほうが復旧がはやかった(長田区で4〜5日ぐらい)」

などなど、みなさんそれぞれ伺うと30年近く前のことですが、いろいろ教えてくれました。

各種ライフラインの復旧については、やはり上下水道の復旧が一番時間がかかり全復旧まで3ヶ月。

神戸新聞HPより

直接聞いた声も含めて、実際の地震体験施設や地震が起きると生活は具体的にどう変わるのか、何が必要なのか、などを時と細かに紹介しているのが「人と防災未来センター」。

被災者の証言が、動画で聞けるようになっています

展示自体は素晴らしくて実際に学生が団体で見学しているなど、教育に活用されているようです。ただ「人と未来の防災センターに阪神・淡路大震災に関する展示がある」なんて想像できないですから。地震に関するミュージアムを探すのに個人的には苦労しました。

実際に倒壊した自宅とその被災者の証言を流す動画

「復興」や「未来」もテーマにしたミュージアムなので、復興に向かう街の姿や

防災に必要な知識なんかも展示されています。

実際に影響が大きかったという長田区なども自転車で走ってみましたが、

「震災の痕跡は建物が新しいな」というぐらいで震災から30年近く経過して、ほぼ復興が終わったように感じます。

⒉北野異人館「フロインドリーブ邸=北の物語館」の復興

NHKの朝ドラ「風見鶏」の主人公のモデルになったドイツパン、フロインドリーブの創業者ハインリッヒ・フロインドリーブの邸宅ですが、大震災で全壊。

フロインドリーブ邸では大震災当時、震災前は息子さん一家が住んでいたそうですが、震災後は孫娘のヘラ・フロインドリーブさんがオーナー。

ヘラさんは、修復費用に2億円かかると言われ、店や工場等の費用の捻出のため売却。その後神戸市教育委員会が動き、神戸市が建物の部材の寄付を受け、現場所に建築当時の姿を復元。今は「北の物語館」として再生されたそうです(『神戸歩いて百景』179頁より)

*同じく北野異人館、アメリカ総領事の邸宅だった「萌黄の館」の事例

震災で全壊はしなかったものの、煙突が庭に落ちた状態がそのまま、震災の遺構として残されていました。

大震災で折れて屋根から落ちた煙突

今は新しい煙突が設置されていました。

天井にある茶色い部分が新しく設置された煙突

⒊断層のズレを間近にみる

兵庫県南部地震を引き起こした淡路島・六甲山断層帯。断層帯の一部、野島断層のズレについて淡路島の「北淡震災記念公園 野島断層保存館」に行くと、上の写真のように、そのままの形で保存され、展示されています。

野島断層のズレた地層を断面図で見せてくれているのですが、明確にそのズレが分かります。

畦道の断層のずれもはっきり残っています。

さらに野島断層の真上にあった住宅がメモリアルハウスとして展示されており、敷地のレンガのずれた様子もはっきり見て取れます。

兵庫県南部地震によって発生した野島断層のズレは、地震の凄まじさを間近に見られるまさに生き証人ともいうべき存在。淡路島に行った際には必ず訪れてほしいと思います。

⒋阪神・淡路大震災における「液状化」

それでは、液状化はどんな様子だったのでしょう。東日本大震災では、千葉県浦安市や千葉市の幕張エリアの埋立地を中心に大規模な液状化が起きました(詳細は以下)。

阪神・淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震でも、埋立地中心というか、埋立地の一部のみ液状化が起きたことがよく分かります。

三田市「兵庫県立人と自然の博物館」の展示より

液状化とは、地下水を含む砂の地盤で地震が起きるとその揺れで砂の結合がバラバラになり、地下水とともに地表に溢れ出てしまう現象。主に埋立地などの地盤の新しいエリアで起こりやすい現象です。

同上

都心のタワマン含め、埋立地には多くのマンションが建設されていて、「地下奥の硬い地盤」つまり洪積台地と同じ地質の地盤に杭を打って倒れないようにしているはずです。ですがマンションのまわりは軟弱地盤の可能性が高いことには変わりなく、マンションに引き入れるガス・上下水道・電気などのインフラは、ガタガタにならないのでしょうか?

同上。ポートアイランドにおける液状化

ちなみに東日本大震災における浦安市の液状化の場合は、ガスの復旧に3週間、水道の復旧に1ヶ月かかったらしい。ただ、首都直下型地震が発生したときに、電気・ガス・水道の事業者様の人手が本当に足りるのだろうか、という心配はあります。

阪神・淡路大震災の場合は、被害エリアが局地的だったので、近隣の大阪はもちろん、兵庫県内の姫路など、多くの事業所からの応援があって復旧が早かったと思われます。

実際、3500万人規模の人が暮らす東京首都圏では、首都直下型地震が起きたときにこんなに早く復旧できるとはとても思えません。

アジュール舞子のBE KOBE

以上、阪神・淡路大震災について現地で確認してきましたが、何よりも復旧は人の力でしかできない。ここまで復興した神戸市民の力は見事というしかありません。

最後に「ВЕ КОВЕ」というメッセージで終わりにしたいと思います。

BEKOBEは、阪神・淡路大震災から20年目の2015年

人のために力を尽くす」という市民の熱い想いを集めて生まれたメッセージです。「市民が神戸市民であることを誇りに思う気持ち」を表しています。先進的で開放的、さらには豊かな創造性と国際性に富んだ、みなとまち。“神戸らしさ”を育みながら大きな苦難を乗り越えてきた「これまでの150年」から、若者が挑戦し活き活きと活躍する「これからの150年」に向けて、神戸は出航します。

                   神戸開港150年記念2017年1日神戸市

BE KOBE
神戸港メリケンパークのBE KOBE


続く。次回は「本当の金持ちは芦屋ではなく旧住吉村にいる?」について。

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