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『意識はいつ生まれるのか』ジュリオ・トノーニ著 

<概要>

一般人にも読みやすく、かつ著者の人文科学的素養もあって、楽しく読める。内容的には意識は大脳皮質系の複雑で統合的な活動によって生まれるのではないか、ということを科学的に証明した本。タイトル通り「意識はいつ生まれるのか?」を証明した本です。

<コメント>

意識とは自我そのものだから、それが科学的には一体何者なのか?これを解明すれば、相当なことだろう。本書のほか、古生物学者の更科功先生の講義の内容も包含すると、現段階では、意識は脳のネットワークが密接に絡み合った結果生まれる現象らしい、ということがわかっています。

少なくとも、意識が生まれる事象といいうのは、トノーニ氏の情報統合理論による実験「経頭蓋磁気刺激法」でなんとなくわかったような気がします。

睡眠状態・麻酔が効いている状態と、覚醒している状態及び夢を見ている状態の大脳の働きは明らかに違う。

覚醒している場合と夢を見ている状態は、大脳全体が一つのシステムのように統合的に複雑に動く(=電気信号のやりとり)状態。つまり、この状態が意識がある状態ということ。

つまり大脳のニューロン(神経細胞)の働きは、緊密に繋がっていて、全体が一つのものとしてまとまっています。この働きが意識を生み出しているらしい。

一方で、運動機能を司っている小脳は、多くの独立したモジュールから成っていて、モジュール同士は繋がっていません。

運動するためには素早い反応が必要なため、大脳のように全体が緊密になったネットワークだと、レスポンスが悪くなってしまうから。

逆に小脳のモジュール同士は繋がっていないため意識は宿りません。とある手術で小脳を全摘出すると、想定通り運動に支障は出ますが、意識にはまったく影響が出ないということがわかっています。

分離脳を持った人がいます。分離脳というのはてんかんなどの手術で、過去に脳梁が繋がっている左脳と右脳を脳梁の部分で切断し、脳を分離させた人たちの脳のことです(今でも十人程度いるらしい)。

分離脳の実験では、大脳が右脳と左脳で分離しているので、例えばスーパーマーケットで欲しいものに右手を伸ばそうとすると、そこに左手が割り込んできて両手が争うなって現象が起きます。これは左脳・右脳それぞれの大脳で意識のネットワークが形成されてしまうからだといいます。

このように、意識は、大脳全体がネットワーク化した結果生じる現象のようです。

意識を持つ動物のうち、一部大型類人猿でも実験した事例もあるらしいのですが、まだ定説ではないのですが、大型類人猿を実験すると、覚醒している時の脳波は大脳全体が働くような事象が生じるらしく、大脳のニューロンが密接に絡み合った結果だからではないかと言われています。


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