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老化現象と寿命の生物学的意義



生命の維持はどのような構造になっているのか?そして老化現象とは生物学的にはどのような現象なのか?

死は、我々の生そのものに直結する問題で哲学のテーマでよく取り上げられますが、生物学的には、なぜこのような現象が起きるのか?発生学の第一人者で文化功労者でもある浅島誠氏の著作です。

生物の身体というのは、代謝機能によって身体を構成する物質がどんどん入れ替わっています。タンパク質が合成されては分解されていく過程そのものが、生物そのもの。

人間の場合には、1日300〜400グラムのタンパク質が分解されているというから、体重60キロの人で400グラム分解されるとした場合、分子レベルで120日間で身体が入れ替わっていることになります。

分解する機能のひとつとして、オートファジー(自食)という仕組みありますが、この解明が大隅良典さんがノーベル賞を受賞した研究らしい。

老化とは、合成されては分解されている、その代謝の機能がどんどん劣化する現象。特に合成されるにあたって必要となる幹細胞の機能の劣化が一つの原因であって、アミノ酸→タンパク質を合成するDNAの欠損によって、その合成力が落ちて行く過程。

そして我々は寿命を迎えます。

ただし、生き物でも無性生殖生物の場合は、実質的に自分と同じ細胞をコピーしていくわけだから、同じ遺伝子がずっと継続して寿命がないようなもの。

一方で我々含む有性生殖の場合は、生き残りに有利な有性生殖という方法を手に入れる代わりに、寿命という「プログラムされた」死を手に入れたといいます。

理屈的には、有性生殖によって個体レベルの遺伝子を不連続にアップデートしていくことで、ウイルス感染防止含む環境適応力の多様化を図っているわけです(マット・リドレー著「赤の女王の仮説」も参照)。

そう考えると、遺伝子の継続という観点では人間含めた有性生殖生物の老化というのは必然であって、有性生殖のメリットを生かすことによって種が継続していくというわけです。


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