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なんでも因果関係で考えてしまうのは?

ファストアンドスローからの知見の続きです。

人間は、何か新しい事象を体験すると、すぐに因果関係で理解しようとします。

因果関係思考は、ダニエル・カーネマンの視点からみると、システム1(反射的思考)の機能の一つで、多くのバイアスを生み出すといいます。

システム1は我々の世界を表すモデルを自動更新しつつ「あなたの世界では何が正常か」を保持しています。

システム1の描く世界像は、周囲の状況、様々な事象、行動、その結果(同時または短時間内にほぼ規則性を持って起きる結果)を連想によって、関連づける作業を通じて構築され、我々の生活に起きる様々な事象をどう解釈していくか判断するそのモデルみたいなもの(ファスト&スロー上 第6章参照)。

◼️基準理論
このように蓄積された世界像は、これまでの世界の文脈と全く違った事象が起きると以下の事例のように違和感を感じてしまいますが、2回目以降はシステム1がアップデートされているので、もう違和感を感じなくなります。

事例その1:男が言う「私は妊娠していて気分が悪い」→ 違和感を感じる
事例その2:上流階級の言葉遣いで「私は背中にタトゥーを彫らせたのでございます」→ 違和感を感じる

システム1の世界像は知識と因果関係のかたまりとして肯定的に内面化されているため、あることについて限られた情報しか持ち合わせていない場合であっても、手持ちの断片的な知識を結びつけて、自分の世界像にマッチするようにうまいこと辻褄の合う因果関係を拵えます。つまり自分の都合の良いように解釈するわけです(確証バイアスといいます)。

これは科学者も同じで、本来自分の仮説は反証によって検証すべきなんですが、実際には自分の仮説の都合の良い仮説ばかりで検証してしまうらしい。

[因果関係の知覚(心理学者アルヴェール・シュミット):人間は様々な事象の相関性を繰り返し観察することによって物理的な因果関係を推察するとされている]

この因果関係的思考は、発生論的にも説明のつく習性で、多くの実験によると生後6ヶ月の乳児に連続する出来事を見せると因果関係として認識すること、出来事の順序を入れ替えると「驚く」ことが確かめられているそうです。

更に進化論的にも説明のつく習性で、私たちは環境変化の兆候に自動的に目を光らせる習性が身についており、規則性探しは警戒行動の一部として種の生存と繁栄に大きな意味があるというのです。

また、システム1は因果関係で世界像を生成するので、ストーリーの出来で重要なのは情報の「整合性」であって「完全性」ではありません(同 第7章:結論に飛びつくマシン、自分が見たものが全て)。

むしろ手元に少ししか情報がない時の方が、上手に全ての情報を筋書き通りにはめ込むことができます。つまり「自分が見たものが全てだ」となれば、辻褄は合わせやすく、認知も容易になるのです。情報が少ない時は安易に結論を出すべきでないということです。

システム1により、私たちはパターンを探そうとする傾向があり、世界には一貫性があると信じています。そこでは規則性は偶然に起きるものではなく、機械的な因果律が、でなければ誰かの意志によって起きるものだと考えています。

そんなわけで

「私たちは人生で遭遇する大半のことはランダムであるという事実をどうしても認めたくないという習性を持っている」

という事実を私たちはよく知っておくことが大事だということです。


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