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大東亜共栄圏と混合民族論「単一民族神話の起源」より

引き続き本書より。

あまり関心はなかったのですが、本書の戦前の民族論考察で「大東亜共栄圏」だとか「世界は一家、人類は皆兄弟」という戦前の思想がやっと理解できました。

結局、アイヌや琉球人はもちろん朝鮮人や台湾人などの植民地現地人を同化(日本名への変更、日本人との結婚奨励=混血、日本語教育、居住地の相互引越しなど)してアジア人の混血の象徴たる天皇のもとの臣民として他民族を抹消し、ヤマト民族として統合することだったのです。

その根拠としてヤマト民族は、そもそも北方民族や朝鮮人やマレー系等の南方人の混血民族だとし、植民地のアジア人みんなと混血して同化して天皇のもとに統合民族=ヤマト民族となった状態を目指したのが大東亜共栄圏という考え方。

したがって、天皇のもと擬似家族として「世界は一家、人類は皆兄弟」となったのです。

戦前の「混合民族論」に関して本書362頁で簡潔にまとめられているので、以下そのまま引用します。

1.帝国は朝鮮・台湾を獲得し、その他の原住民を帝国臣民に含むようになった。日本人を純血の日本民族のみに限定するという考えは、領土を拡張してその地の人間を帝国に編入するさい支障となる。そのような意識は捨てるべきである。
2.日本は太古において大量の異民族や渡来人を同化した経験を持っている。天皇家にも、渡来人の血統は入っている。それ故日本民族は異民族を統治・同化する能力にも長じているのであり、この経験を生かして領土拡張と同化政策を遂行すべきである。
3.日本民族は南北アジア諸民族の混合であり、彼らは日本民族と血統関係にある。したがって、彼らの同化は容易なはずだし、アジア各地への進出は故郷への帰還であり、日本民族は南方にも北方にも適応できる体質を持っている。
4.日本は古来から諸民族を一視同仁で混合同化してきた。ゆえに日本民族は人種差別とは無縁であり、その点で欧米よりも倫理的に優れている。
5.異民族が併合されても、養子であると位置づければ、日本が家族国家であることと矛盾しない。
6.太古において、天皇家は朝鮮半島から渡来した。天皇はその地の主であったのだから、再び天皇家の領土にくみいれることは当然である。

以上、日本民族論とは「戦後の弱いときは単一民族論で身を守り、領土拡張していた強いときは混合民族論で外部を取り込む(364頁)」という、なんとも日本に都合の良い理屈ではあったのでした。

*写真:2011年 長野県 上高地


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