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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#スティーブンピンカー

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

『人はどこまで合理的か 下』 より 相関関係と因果関係の違いとは

『人はどこまで合理的か 下』より、今回は、相関関係と因果関係の違いについて。ここは哲学にも通じる深い議論で「そもそも因果関係とはなんぞや」という根本的な問題も絡むので大変興味深いところです。 ■因果関係は、相関関係の一部このエピソードで思い出すのは、積極財政派の某経済学者の消費税増税悪玉論で、彼は「消費税を上げるから給与がずっと上がらないんだ」という仮説を主張。 その際「消費税を上げるたびに給与が伸び悩む」というのをグラフでお示しになって「確かにそうだな」と一瞬そのときは

人間の本性を考える(中巻):スティーブン・ピンカー著 書評

<概要> 上巻で展開された「人間はブランクスレート(空白の石板)でなく遺伝的な要素も大きい」という考えは、決定論的極論を生みやすいが、むしろ遺伝的影響を正しく見据えることこそが、人間を正しく理解することに繋がり、その可能性を見出すことができると提言した中巻。 <コメント> ◼️「遺伝子」という本体論(※)の展開 進化論や脳科学が明らかにしてきた人間の本性は、そもそもこの世に普遍的真理は存在しないとした相対主義(ポストモダニズム、脱構築主義など)に対抗し、遺伝子=盲目の時計職

言語が生み出す本能(下) スティーブン・ピンカー著 書評

<概要> 言語(話し言葉)に関しての系統的領域、発生論的領域、脳科学的領域、進化論的領域に加え、言語の流動性に関して考察した書籍。 <コメント> 下巻も言語が本能から発したというその論拠を様々な領域から展開して、これでもかとばかりに解明していきます。 ◼️系統的領域 地球上には4,000〜6,000の言語があり、種の進化のように1つの祖先から言語が枝分かれしたのかと思ったらそうではなく、言語タイプに全く相関関係がない場合が多いらしい。言語は本能だからもともとからしてホモ・

人間の本性を考える(上巻)スティーブン・ピンカー著 書評

<概要> 副題の[心は「空白の石板(ブランク・スレート)」か]との問いに対し「違います」とし、進化生物学や脳科学の成果に基づいて、心の先天性の問題について解説した著作。 上巻の内容は、なぜブランク・スレートが主要な学説になったのかについて整理する一方、進化論に端を発した学問&脳科学の「文化」に関連する学説の紹介、及びこの新しい理論を批判するラディカルサイエンスの主張への論駁。 <コメント> 本書出版当時(2002年)のアメリカ学術界は、まだまだ人間は皆、ブランク・スレート

言葉を知らなくても人間は生きていけるのか?

<概要> 世界には言葉を知らずに大人になる人がいる。耳の聞こえない人=ろうあ者は、手話という独自の言語を習得する必要があるが、手話を教えてもらえない環境に育った場合、言葉を知らずにそのまま大人になってしまう。 果たして言葉がない人の世界とは?そもそも言葉を知らずに大人になっても言葉は覚えられるのか?耳が聞こえず言葉を知らない27歳のメキシコ人男性イルデフォンソと彼に言葉(=手話)を教えた24歳のアメリカ人女性の数奇なる感動のノンフィクション。 <コメント> スティーブン・

言語を生み出す本能(上)スティーブン・ピンカー著 書評

<概要> 言語のうち「書き言葉」は文明だが「話し言葉」は本能であり、カラスが空を飛べるように人間が本能的に持ち合わせた先天的な能力であって、どんな言語でも共通の心的言語を基盤にして成立していることを主張した書籍。 <コメント> 言語学は全くの門外漢ですが、本書を読む限り「確かにその通り」という印象。英語の比較文や文法的言語の解析を口語・文語双方ともおこなって精密に論を展開していく(特に4章の言語のしくみ)ので、理解するのに手間暇がかかりますが、ちゃんと真面目に読んでいけば、

21Lessons ユヴァル・ノア・ハラリ著 書評

全世界で話題のハラリの著作は、ホモ・サピエンス全史→ホモ・デウス→21Lessonsの順番で通読をお勧めします。本書は、これまでの著作に引き続き、現代世界の世界像と近未来像を解明するとともに「では著者自身はどうするのか、どうしているのか」を解説。 各章にこれでもかとばかりの実例=ファクトをあげつつ、かつ読者に分かりやすいように、絶妙なそのファクトの組み合わせによって独自のロジックを編み上げていくその筆力は、その博識さや知性もさる事ながら、説得力あるその表現にどんどん飲み込ま

「21世期の啓蒙」と人工知能

スティーブン・ピンカーも人工知能に対する懸念については「人工知能は進化しても人間は滅ぼさない」として、人工知能による「テクノペシミズム(悲観論)」には否定的。 「AIの暴走を危惧する第1の誤りは、知能とモチベーションを混同していること(21世紀の啓蒙下巻第19章)」と指摘。 「知能とは、ある目的を達成するため、新たな手段を考える能力のこと」と定義し、知能が高いことと「何かを欲すること=目的」は別物。 例えば、人間の知能は、ダーウインの自然淘汰の産物であって競争を生き抜く

21世期の啓蒙 下巻 スティーブン・ピンカー著 書評

下巻に至って啓蒙主義の理念に基づき、世界中の我々自身が普遍的な共通理解として啓蒙主義の理念を持つべきだなと確信させてくれる内容でした。 「暴力の人類史」を「20世紀の啓蒙」とすれば、本書はまさに現代人と近未来人に向けた「21世紀の啓蒙」です。間違いなくお金を出して時間をかけて読むに値する名著だし、全ての人に読んでもらいたい。そんな感動的な読後感でした。 社会の虚構としての近代市民社会の原理とほぼ同じ概念である「啓蒙主義の理念」が世界共通の虚構として、いかにこの世界を進歩さ