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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2021年9月の記事一覧

「大阪アースダイバー」中沢新一著 書評

<概要>アースダイバーと称して、地域ごとの地質・自然環境と時間軸に基づいた人間社会の変容を思想(主に宗教)をベースに紹介した書籍の大阪編。 <コメント>春の奈良県に続き、秋(10月)は大阪府に2週間ほど実地検分にいく予定のため、本書を図書館で借りてきました。 関西地方に関して、みるべきものは京都・奈良・神戸ということになっていますが、大阪は考えてみれば奈良と同じタイミングで文明化された土地なわけで、神戸はもちろん京都よりもずっと歴史ある地域。そして、海につながる水の都とし

日本は雑種「日本習合論」内田樹著 書評

<概要>「日本は本来雑種的である」とし、神仏習合を代表例に雑種的であることが、今台頭しつつある原理主義を排除し、持続的な社会をつくっていくことになることになるとした「雑種文化日本」礼賛の書。 <コメント>個人的に神仏習合に興味があるので、本書を手に取って読んでみました。著者は神仏習合が本来の日本の特性を具現化した文化形態だとし、日本は加藤周一が論じたように「雑種文化」である、としてその論を展開しているのが本書。 著者が本書を書いた動機は、ここ10年ほど「異物を排除して原初

「宗教の本性」佐々木閑著 書評

<概要>「リア充を味わえないなら、リア充の源となる欲望そのものをなくしてしまえばよい」という仏教の本性を中心に「一般に宗教の本性とは何か」を紹介した著作。 <コメント>「サピエンス全史」の著作で有名なイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの唱えた概念「虚構」をイコール宗教とみなして、自身の信仰する「釈迦の仏教」の教えをベースに展開。 ハラリのいう通り「貨幣」「国家」「宗教」も皆同じ虚構なので、みんなが信じている時は成り立ちますが、みんなが信用しなくなった途端に崩壊しま

「私とは何か」平野啓一郎著 書評

<概要> 「私とは何か?」「私とは、複数の分人によって形成された単位=個人である」とし、複数の分人(=キャラ)が、保有する「私」の生き方や解釈の仕方について指南した著作。 <コメント> 「私」をこうやって解釈すれば「よりラクに楽しく生きられるよ」という作家 平野啓一郎さんの提言。なるほど「私」って複数の大小様々な分人が同居している存在だと思えばいいんだな、と思わず納得してしまいました。 これは哲学者千葉雅也の「コード」という概念にも通じるし、わたし的には「虚構」という概念