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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2020年9月の記事一覧

「読まなくてもいい本の読者案内」橘玲著 書評

<概要> 「読まなくてもいい本」、つまり古いパラダイム(哲学・文系心理学・社会学・法律学・経済学)に関する本ではなく、新しいパラダイムといえる最新の学問(複雑系、進化論、ゲーム理論、脳科学、功利主義)に関する本を読むことで、価値ある知を身につけるべきと提言した著作。 <コメント> 従来から橘さんの関心領域に興味があり、彼の本を通読してきた私は、5年前(2015年)に本書を読むに至って「納得できない感」満載になった私にとって記念すべき著作です。フッサールが提唱した現象学をバッ

「生きる力」 ハインリッヒ・ポポフ

障害者の人は「生きる力が強いな」といつも感じています。 哲学者ニーチェのいう「生きんとする意志・力」で生きようという感じといったらよいのか。 「ピンチをチャンスに」とはよく言いますが「ピンチをいかにチャンスにしていくか」というノウハウがしっかりしています。 ポポフさんは、パラリンピックのレジェンド的存在だそうですが、子供の頃に余命短いと医者に宣言されたからこそ「1日1日を大事に生きよう」とした結果、挫折を成功に導くことができたそうです。 全然知らなかったのですが、義足

「脳がわかれば心がわかるか」山本貴光&吉川浩満著 書評

<概要> 「脳科学の研究が進めば、いずれ人の心は解明できる」という、(ノーベル賞学者でも信じてしまう)一見真っ当にみえる考え方の原理的な錯誤を、科学的思考の原理と合わせてわかりやすく解説した著作。 <コメント> 「脳がわかれば心はわかるか」→「わかりません」というのが本書の回答。 初版は2004年に出版されているのでだいぶ古い本ですが、内容はいまだ古びていない。私の関心事の一つである脳科学・自然科学の限界と可能性について、哲学的視点から社会的視点まで幅広く解説しています。

「ゴルギアス」プラトン著 書評

<概要> ソフィスト(ゴルギアス&ポロス)とアテネの政治家(カルリクレス)とソクラテスの対話を通じ、「善」を目的とした生き方であってこその人生であり、「善」を押し進めることによってこその政治であるとのプラトンの理想を伝えた対話編。 <コメント> プラトンの創作ではあるものの、ソクラテスがソフィストの大家と言われたゴルギアスやその弟子のポロスを追い詰めていく姿は見事。 ◼️善く生きる 結局、プラトンがソクラテスを通じて言いたかったことは、何においても「善く生きる」ことが前提

「勉強の哲学」千葉雅也著 書評

<概要> ポストモダン思想の成果と今の私たちが使っているリアルな言葉に基づき、私たちが内面化している価値観(著者は「ノリ」と表現)を相対化した上で、新しい価値観に出会い、深く知るための勉強の考え方とその考え方に基づく具体的指南書。 <コメント> 「言葉は生きている」ということが実感できる著作。 本書は、言葉は常に変化していくモノだから、どんな読み物でも「今」の言葉で読むのが一番最適だということを認識させてくれる好事例です。本書をもし30年前の人に読ませたら「デフォルト」だ