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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2020年4月の記事一覧

「民族の創出」 岡本亨著 書評

<概要> 大和民族という単一民族といわれる日本は、維新政府が創作した「想像の共同体」であって「本来は多民族国家」だということを、出雲を中心にエミシ(東北地方)、クマソ(南九州地方)、池間民族(宮古列島の一部集落と池間島)などの、いわゆる古代ヤマト民族(=天孫民族)に属しない民族の事例をあげながら、日本も多民族を前提とした多元的な国家像であるべきと提案した著作。 <コメント> 様々な社会の虚構を考察する上で、ベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」読後、さて日本の場合はど

鴻上尚史のほがらか人生相談 書評

珠玉の言葉が満載です。やっぱり演劇で鍛えられている人は人間関係でも鍛えられてるんだなという印象。 そして鴻上さんの価値観は「近代市民社会の原理=啓蒙主義」そのものなんで、そしてちょっと現象学的なんで、私の価値観(社会の虚構の方)にもマッチしていて、とても心地良い。まさに私にとっての確証バイアス全開な著作でした。 ◼️「この世の中には”ちゃんとした結婚”があって、私の結婚はそれとは違っていてだからどうしていいか分からない」(相談1) 鴻上さんのいうように、世の中には「ちゃん

世界があるのではなく、自分が世界を作っている(ユクスキュル)動物学編

動物学的視点でも「世界があるのではなく、自分が世界を作っている」 本書「生物から見た世界」は、ハイデガーの「気遣い」相関図式(竹田青嗣先生命名)のネタ元とも言われています。 ハイデガーの世界観は、世界は存在者の気遣いに応じて構成された実存的な世界。つまり自分の関心と欲望によって自分の世界が生成されるので、これを動物に例えれば、イルカにはイルカの、マダニにはマダニの気遣い(関心のベクトル)とその結果としての用在(道具)で構成された世界像がある、という感じ。 ユクスキュルは