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宇宙×ドローン~衛星技術を用いたUAVの可能性~

はじめに

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻。この戦争は、様々な点において従来の戦争に対する考え方を一変させるものであったが、その大きな特徴の一つとして指摘されているのが「ドローンの活用」である。数千台の無人航空機(Unmanned Airial Vehicle: UAV)が上空を飛び交い、敵の部隊を追跡したり、砲弾を標的に導くために使われている。
このように、軍事分野にも応用が進むドローン技術であるが、最近では宇宙に関する技術との組み合わせによってさらなる進化が期待されている。
今回は、宇宙技術×ドローン技術の領域で、どのような動きが起こっているのか、それらが持つ国防へのインプリケーションはどのようなものなのかということについて概説していく。

宇宙技術のドローンへの応用

現在ドローンのさらなる進化を実現させるために、以下の分野での宇宙技術の利用が模索されている。

①ポジショニング/ナビゲーション

ドローンに応用される宇宙技術の一つとして注目されているのは、衛星測位システム(Global Navigation Satellite System: GNSS)である。GNSSとは、人工衛星を利用して地上の現在位置を計測するためのシステムである。例としては、今やスマートフォンやタブレット、スマートウォッチなど、さまざまな機器に搭載されているGPS(アメリカ)をはじめ、みちびき(日本)、GLONASS(ロシア)、Galileo(EU)が挙げられる。
この技術をドローンに応用することで:

  • 地球上の特定地点への飛行

  • ある特定の地点におけるドローンのホバリング

  • ドローンの全自動的な拠点への帰還

  • 火山地帯や紛争地帯といった危険地域の迂回

といったことが全自動でできるようになる。すなわち、ドローンの自律化(自動運転)が可能となるのだ。

②衛星通信

もう一つ注目されている宇宙技術は、衛星通信である。ドローンはいわゆるラジコンのようなものであり、ドローンの本体が操縦機の電波の届かない範囲まで飛んでいってしまうと、以後は操作不能となってしまう。
衛星通信を使うことによって、本来電波の届かなかったはずの場所や人間が立ち入ることの難しい場所(山間部や危険地帯など)からでもドローンを遠隔操作することができ、また、ドローンが撮影したデータをリアルタイムに取得することができるのである。

このニュースにおいては、民間への応用事例として、山奥の工事現場の遠隔監視に低軌道衛星通信技術(ここではスターリンク)を用いたドローンを導入した事例が取り上げられている。衛星通信を応用することで、遠隔操縦、遠隔監視が可能になるのだ。

宇宙×ドローンが持つ国防へのインプリケーション

以上に現在の宇宙技術のドローンへの応用事例を見てきたが、これらの動向がもつ国防へのインプリケーションはどのようなものだろうか。

①偵察能力の強化

まずは、宇宙技術を応用したドローンは、偵察能力を強化する。従来人の目が届かなかった場所の撮影が可能となるからだ。特に、周りを海に取り囲まれている日本にとって、遠隔操作ができるドローンや自律型のドローンは、より抜け目のない国境管理を可能とするだろう。

②自衛隊の人手不足の解消

「自衛隊の人手不足」という話題は近年よく耳にするだろう。実際、現場では「本当に人手が足りない」といった声が上がっており、改善の方策を打ってはいるものの、少子化の影響もあり、応募者数はこの10年で3割減と効果のほどは芳しくない。
遠隔操作や自律飛行を可能とするドローンは、こうした自衛隊の人手不足という課題に対処しうるものであり、ひいては日本全体の防衛力の底上げに繋げることができるのだ。

おわりに

以前の記事では宇宙安全保障について取り上げたが、その中の一つの概念として「宇宙からの安全保障(宇宙の国防への利活用)」というものがあることを紹介した。今回紹介した宇宙×ドローンの領域とそれが持つインプリケーションは、まさにそこに分類されるものだ。 宇宙安全保障への注目が高まっていく中で、今後も宇宙に関する技術動向やその軍事的含意を見逃さないようにしていきたい。

参考資料

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