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今日はロクヨン

ロクヨンと言えば横山秀夫サンによる推理小説でテレビドラマ、映画にもなった。警察の広報官のハナシでもあった。映画は佐藤浩市サン主演だった。昭和から平成に新元号となった時の誘拐事件を扱ったもので、「D県警」はこの事件をロクヨンと呼ぶのだった。そうロクヨンは昭和64年だね。

漢字で六四と書けばまた意味はずいぶんと変わってくる。1989年の今日は中国で衝撃的な事件が起きた。自分が初めて北京を訪れたのはその翌年1990年の夏だった。タクシー運転手はメインストリートである長安街を走りながら「この道路のガタガタは去年の戦車の通った跡さ」と教えてくれた。真偽のほどは定かでない。

後に結婚することになった妻は当時、北京で教師をはじめてすぐの頃で学生も教師もバスやタクシーが無料で天安門へ送迎したという。われわれはニュース映像で知っているが彼らには「現場」しかなかった。今でも6月4日やその関連ワードは検索できないし、妻の友人たちもソーシャルメディアでそれを話題にすることは避けている。

避けているといえば、さらに遡ること50年以上前には文化大革命(1966-1977)があった。毛沢東が学生を扇動した政治闘争だ。大学時に中国近現代史で学んだ。近現代史というが実際は「現在史」といえる。学んだ後に中国へ行ったので、知りたい、尋ねてみたいという純粋な好奇心に駆られた。そこで、中国語の家庭教師をお願いしていた年配の女性に聞いてみたが固く口を閉ざしてしまった。その時初めて、「聞いてはいけないことを聞いてしまった」と気づいた。

一年半後、私が帰国する際に挨拶に行くと、その方は「いつか、文革のことを聞いたね」と言って、家族、親族を含めたその凄惨な体験を話してくれた。以前軽々しく尋ねたことを激しく後悔したが、「外国人であるあなたにもこういう事実を知っていてほしい」と言ってくれたのが救いだった。

ロクヨン、ブンカクに限ったことではないが、事件や出来事の影響が大きければ大きいほど、真意を理解し、咀嚼したい。


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