見出し画像

接客バイトで出会った色んな人たちの話

ネットで接客業あるあるみたいなんを見てたら、
そういや昔バイトやってたときこんなことあったな〜
って言うのを思い出したんで、忘れないうちに書き留めておこう、思い出ってあればあるほど良いのでね。

接客業、やったことありますか?
「いらっしゃいませ〜↑こんにちは〜↑」つって
1週間店先に立たされた挙句、語尾アゲアゲで大声を張り上げさせていただいた経験があるんすけど、

後々それをやらされたのが、後にも先にも自分だけだったと知ったとき、アチャ〜してやられた〜!つって笑いましたね、
顔で笑って心で泣いたね。
当時どんだけウィスパーボイスで面接受けたんだろうなつって。囁くように志望動機、言っちまったかな?つって。

そんなつもりは毛頭なかったんだけども。


ま、そんな愉快な輸入食品の小売店でバイトしてたんすけど、やっぱトリッキーなお客さんって居るわけですよ。

でもお客さんからしたらこっちも絶対変な店員だったと思うんすよね。

今回はよくある変なお客さん話じゃなくて、変な店員の話でもしようかと思いますね。

戦国女王

うちの店には戦国女王がいたんすよ。
何で戦国か?つうと苗字が有名な戦国武将と一緒だったのと、専属パシリポジションの人の名前が内藤君でナイトだったので必然的に女王ですよね。
「とっつぁん坊や」のコミカルさを込めて。
ま〜もうとにかく人をいびるわけですわ。怖い怖い。

ただ女王にも一つだけ弱点があったんすね。

「おはようございまーす」

おっと今日から入ってきた新人さんか。
そんな気持ちで、どうもどうも〜と出迎えた時

女王「アンタが今日からの人ね、よろしく。わかんない事があったらちゃんと聞いて。

新人「はい、よろしくお願いします!」

じょ、女王が優しい
いつも挨拶のときはそばに居らず、
各人が挨拶した後ラスボスのようにバックヤードから現れる女王が!?

自ら挨拶を!?!?!?

まだ当店の四天王倒されてませんけど!?

この時点で個人的には動転しまくってたんすけど

一体どんな新人が来たのかと見てみると、


い、いい、い、イケメンだーーーー!!!!


そう、女王はイケメンにはめっぽう弱かったんすね。
ほんといつからそこに居たんだ女王、出迎えたのに挨拶で遅れたよな。

「あっどうも46番です、今日からよろしくお願いしますね。」

つうわけで更衣室の手前まで案内して、
「近くの売り場に居るんで終わったらバックから出て声掛けてください。」

と、更衣室に入る背中を見送るわけですが、

今??あれ???女子更衣室に入って行ったな???
えっ?声は男だけども、見た目もかっこいい男の子だったけども?なんか複雑な事情的なやつか?かっこいい女の子??なのか男の子なのか??

いやまあとりあえず

バイトには関係無いからそういうのはいいか!!(思考放棄)


ということで、全体的に見なかったことにして、
仕事を色々教えていくわけですが、
身体がすげえ弱い。なんかもうどうした?つうくらいしゃがみ込む。これもなんか複雑な事情からなる何かしらのアレなのかな?
こちとら健康優良児だもんでどうしたらいいかわからん。そんな感じで謎を抱えつつ数日後。


そろそろレジでも教えるかと思って話をしてるわけですが、全然伝わらん。
ビビるぐらいレジの仕事が伝わらん。
いやこりゃ厳しいなーどうしたもんかなと考えあぐねてる時

女王「今日のやつは?

自分「何ですか?」

女王「あんたに話しかけてない。

新人「あっ、すみません。よろしくお願いします。」

女王「はい、ありがとう!」

ヘヘッ女王もシャイだねぇ、そういうの、嫌いじゃないぜぇ!!


何渡してんのかな、と思って何の気無しに見てると、
どうやらA5くらいのノート。
そしておもむろに赤ペンを取り出した女王が何か書き込み始めるわけですね。

見てみるとこれは?
丸つけやってんのか?

計算の?二桁の足し算と引き算の?

女王「はい、じゃまた明日もやってきて。」

新人「はい、ありがとうございます。」

いやいやいや何!?なんで今???
小学2年生並みの問題の丸付けやってんの?
というかまあこの謎のやりとりは置いといて

もしかしなくてもそれ、問題も手書きで書いてあるな!?
しかもそのハンガーみたいに吊り上がった特徴的な字、


女王の直筆!?

この人ら何やってんだ!?


上の階のデカい文房具屋で計算ドリル買えば!?!?!?

(What  is  this?)「これは何ですか?」

女王に聞いてみるわけですね。

(Homework)「宿題。」

いやそういうことじゃねえよ!!!
経緯だよ!!!


こりゃどういうことが起きてんのか、奴に聞くしかねえな。
この合戦場の主人。そう、店長に。
いつも何かの爆発に巻き込まれたみたいな髪型をしてるボンバー店長にな…。

「ボンバー店長、あのー新人さんと戦国さんのアレってどういうアレのやつなんすかね?」

店長「俺は知らん」

嫌でも多少は関与せえ(心のノブ)

店長「そういえば聞いた話だが、新人さんは有名な武道の大会で全国優勝したことあるらしいぞ。」
店長「あとなんか両親が海外に居るから弟と二人暮らしらしいわ。」


いよいよクセが強いんじゃあ!!(本心のノブ)


武道は黒帯でもレジはどうかな!?ワッハッハー!!

あまりのことに全然関係無いことを考えてしまった。

まあこんな感じで謎が新たな謎を呼び、
正直そこにはもう謎しかない新人さん。
別に店員が四則演算出来なくてもレジが勝手にやるから関係ないんだけどな?と思いながらも
どうにか簡単な仕事だけで時間を潰してもらう日々。

店長「おい46番大変じゃ!!!」



あの常に寡黙な店長が慌てている、人が慌ててるとなんか冷静になって来る。
いかんいかんまた思考を放棄してしまった。
日常に転がってる様々なボケにツッコめない日々が続くと人間ダメになるな。

店長「新人さんが倒れて緊急入院になった」

いや大変じゃねえかよ!!!!!


そういえばよくしゃがみ込んでたし、やっぱり何か色々身体の不調を抱えながらも頑張って働いてたのかと。
謎に包まれすぎて謎に包んだままそっとしてきたが、
話ちゃんと聞いておけばよかったか!?
色々な考えが頭をよぎりながら、新人さんの無事を祈るわけですわな。

3日後


新人さんのシフトの抜けを互いに補いながら過ごす日々。

店長「46番大変じゃ!!」

おいおい今このタイミングで大変なことってもうアメリカンジョークで

「やあボブ!悪いニュースともっと悪いニュースがあるんだよ、どっちから聞きたい?HAHAHA!!!」

のパターン並みに悪い話が確定してるじゃねえかよ。


店長「全部うそだった。」

え?

店長「家に電話したら父親が出てな、
新人さんの容態について確認したら手術なんかしてないんだと。
普通に家に居るらしい。」

な、なんだってーーーー!!?!?!?!?!?

だ、騙されたーー??どこから!?!?!?

店長「武道の大会も俺検索してみたんだけど、優勝者として名前とか一切出てなかったわ。」

自分「え、じゃあ弟と二人暮らしも?」

店長「弟も居ないな。」

自分「じゃ、じゃあ戦国女王が何故か手書きしてた計算ドリルは

店長「まあ計算出来ないのは嘘だろうな。」


じょ、女王ーーーーー!!!!


自分「へ、ぇえ!!?こんなドデカい嘘に全員が思いっきり騙されるとは。」

店長「なんか、まあ店的には損失だし、最初すげえ腹立ったんだけど、なんつうかな。」


店長・自分「「逆に面白くなってき(まし)た。」」


自分「へへ、ボンバー店長。戦国女王の計算ドリル、アレぁなんで手書きだったんすかね?」

店長「正直俺も、何で上の文房具屋で買わないのかなと思ってたよ。」

自分「アレはしばらくは恥ずかしいでしょうね?」

店長「他の人への風当たりが弱くなるかはわからんぞ。」

自分「あの常に殺気立って人に暴虐を尽くしてきた女王が、騙されて計算ドリル手書きで作ってたんすよ?」

店長「愛だな。」

自分「愛っすよね〜。」


自分「野暮な話っすけど、愛は性別を超えるつうことですわな。ヒュー!いいじゃないっすかねえ。」

店長「まあ、いや、わからんけどな。」

自分「えっ?」

店長「新人さんは常に下にTシャツを着てて、上から制服のシャツを着てたらしくてな。結局一回も脱がなかったらしい。」

自分「謎っすねえ。」

店長「謎だな。」


その後、新人さんが出勤することは勿論ありませんでした。

まあなんつうか、嘘をいっぱい吐かれて皆確かに振り回されたんすけど、
あんま悪い気はしなかったんすよね。

その直後にいつも穏やかだったパートさんが店の商品定期的に盗んでたことが発覚したからかもしれません、

普通に家庭を築いて、子供も居て、別段貧乏ってわけでもない人が盗みをやってたって事、
穏やかだったパートさんが店長に向かって警察を呼ばないでほしいって土下座してる様を目の当たりにしてしまった事、
なんつうか誰しもが何かしらを抱えていて、
その様々をなんとかやり過ごしながらギリギリで生きてるってことも大いにあり得るんだろうなって思うわけですわ。

だからあの新人さんの嘘がどこまで真実か、嘘かって
つまびらかにしたいって気持ちも無く、
ただあの人が嘘をつかず生きられる道に、
そしてあの人が商品を盗まなくても良い道に、
歩めるといいなと思うばかりだったなっていう。

そういう昔話でした。人にやさしく生きてえもんだよな。思い出すたびにそう思いますよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?