見出し画像

ロードバイクのリムブレーキ(キャリパーブレーキ)の調整

ブレーキの調子が悪いと感じた時に

リムブレーキ(キャリパーブレーキ)のロードバイクで感じるブレーキの不調。トラブル別に対処法をまとめました。自分でできることは自分で試してみましょう!
ちなみにキャリパーブレーキというのはこういうもの。主にロードバイクで使われているブレーキシステムです。

キャリパーブレーキ


もうひと種類がVブレーキと呼ばれるもの。主にクロスバイクで使われているブレーキシステムです。こちらの調整も一筋縄ではいかないのでいつか記録に残しておこうと思います。
尚、コンポーネント(ブレーキ、変速機など)を調整する場合は、各社のマニュアルをしっかり確認しながらすることをお勧めします。シマノなら、「シマノ (型番) ディーラーマニュアル」で検索すれば公式のページが出てくるはずですのでご参照ください。シマノ以外は、やったことないのでわかりませんが、ディーラーマニュアル、サービスマニュアルなどの単語で引っ掛けられると思います。

ブレーキの調整

「ブレーキを握っていないのにリムに擦っている。走っていると定期的にシュ、シュって音がする。」
「ブレーキレバーの遊びが大きい。握った感じがふにゃっとしてる。」
「ブレーキをかけるとキーッ!って音が鳴る」
などがブレーキ不調として感じるポイントかと思います。それぞれの場合の対処方法と、一旦全部リセットして、すべて順番に整備していく方法を書いておきます。

ブレーキシューがリムに擦っているとき

ブレーキシューはブレーキ本体についていて、リムに当たるところのゴム状の部品。リムはホイールの外周部分のことですが、この記事ではさらにその側面でブレーキシューが当たるところをリムと呼びます。
ブレーキシューがリムに擦っている原因は大きく3つ。バイクをひっくり返して、ホイールを手で回したとき、ブレーキシューとリムの隙間を見ます。
1.左右の隙間のバランスが悪く、どちらかのシューが擦っている
2.左右の隙間が狭すぎて、どっちのシューもリムに当たっているように見える
3.隙間の量が1~2mmで、バランスも悪くないのに回してみるとリムと擦るポイントがある

順番が違うのですが、まず3.の場合、これはブレーキの調整では解決しません。ホイールのフレ(スポークのわずかなテンション差によって、微妙に歪んでいる状態)が大きすぎることが原因です。この場合、ホイールのフレ取りが必要なのですが、これには特殊な道具、特殊な技能が必要です。一般人がやるにはハードルが高いので、素直に自転車屋さんに行って状況を説明してみるのが一番だと思います。後日フレ取りについてもnoteしてみます。

次に1.の場合、これはブレーキ本体の固定をいじる必要があります。リセットして整備の項目の⑦「ブレーキ本体を固定する」の項目をご参照ください。

最後に2.の場合、これはブレーキワイヤーのテンションが高すぎて、常にブレーキレバーを引っ張っている状態になっていることが原因です。左右のブレーキシューの間隔が狭くなっているので、ホイールリムとの隙間も狭くなり、ホイールのちょっとしたフレ(多分許容範囲内のもの)でブレーキシューがすれてしまう状態です。この場合、うまくいけばアジャスターだけで調整可能です。アジャスターをねじ込む方向に(右回りに)回してみます。シューとリムの間隔を目で見ながらアジャスターを回して、左右の間隔が少しづつ開いていくのを確認して下さい。これでリムとの間隔が1~2mmになり、ホイールを回しても擦らなくなればOKです。
アジャスターを回してもシューとリムの隙間が一定以上広くならない、擦れが解消しない場合はアジャスターの対応範囲を超えてしまっているので、リセットして整備が必要です。片方の隙間が一方的に開いていくような場合もリセットが必要です。

ブレーキレバーの遊びが大きい、握った感じがふにゃっとしているとき

「リムに擦っているとき」と逆で、リムとブレーキシューの隙間が大きすぎることが原因です。
ちなみにもう一つ、クイックレリーズ(リリース)が開いたままという原因もあります。ちゃんと走行ポジションにしたら治ることもありますのでバカバカしいですが一応チェックすることをお勧めします。

クイックレリーズ(リリース)が開いた状態ではブレーキシューとリムの間隔がひろがる。この状態でもブレーキをかけることはできるが、ダウンヒルなどでは命に関わる。走行前に必ず確認のこと。


ブレーキシューとリムの間隔を見ながらアジャスターをねじを緩める方向(左回り)に回します。段々と隙間が狭くなっていき、1~2mmの範囲に収まった状態で、ホイールを手で回しても擦らないことが確認できれば完了です。
アジャスターを回しても一定以上隙間が狭くならない場合には、アジャスターの調整範囲を超えてしまっているということですので、リセットして整備が必要です。
調整することによって左右の隙間に差ができて、バランスが悪くなっていくような場合もやはりリセットが必要です。

ブレーキをかけるとキーッて音が鳴るとき

原因はブレーキシューの取り付け角度です。この修正法はリセット整備の⑥に詳しく載せますので、そちらをご参照ください。

リセット整備

アジャスターの調整ではうまくいかなかった場合、ブレーキシューの交換をするとき、新しくブレーキを取り付けた場合などは、ワイヤーを張り替えるときと同様に、ワイヤーをブレーキ本体から外して固定しなおす必要があります。手順は多いですが難しいところはないので、ご安心を。

①ワイヤーの固定を外す
リセットが必要なケースは、ワイヤーの初期のテンションが悪いということなので、一旦ワイヤーの固定を外すことからはじめます。通常ブレーキワイヤーの終端にはエンドキャップが付いているので、完全にワイヤーを外すのは大変(もしくは無理)です。
ブレーキ本体を片手で握りこみながら、固定ネジを緩めて、ワイヤーが滑るようになればそれでOKです。本体を握りこまずにネジを緩めると、バンッって感じに急にブレーキが開いて驚くことになりますし、下手したらケガするのでご注意ください。
クイックレリーズは動かす必要はありません。走行ポジションのままにしておきます。

ブレーキ本体を握りこんだ状態でワイヤー固定ネジを緩める
クイックレリーズは走行位置のままで

②ブレーキ本体の固定をちょこっと緩める
これがキモの作業です。ブレーキ本体の固定ネジを1/4回転ほど緩めます。目標はちょっと力をこめると本体が動く程度。これをやっておくとこの後の作業中に勝手に位置がいい感じになります。

この時点では1/4回転ほどが適量。これでもグラグラ。

③アジャスターを締めこむ
これもキモ。基本の状態を「もっともワイヤーにテンションがかかっていない状態」にするため、アジャスターをねじ込んでいきます。頭が完全にブレーキ本体についている状態、もしくはネジ先が最もブレーキ本体からはみ出している状態が目標です。

一番ブレーキワイヤーが緩んだ状態のアジャスター。この状態でワイヤーを張らないとどうしょうもなくなる。

④必要ならシューを交換する
④-1 シューをブレーキから外す
まずその前に作業性を確保するために、ワイヤーを外すことをお勧めします。詳細は本編で。クイックレリーズを回しただけでは十分なクリアランスが確保できず、イライラすると思うので。もう一つホイールを外すって手もありますが、作業台持ってないと逆に面倒になるのでお勧めしません。あとシューの写真も撮っておいた方がいいです。付けなおすときに向きとか間違えると目も当てられませんので。
ブレーキが開いたら、クイックレリーズも開き(ここ重要。大体のブレーキでクイックレリーズの凸部とブレーキシュー固定ネジが干渉するので)アーレンキーでブレーキシューを本体から外します。ブレーキシューの固定ネジには大概、通常のワッシャーと、片面が球面状に凹んだワッシャーの2つがハマっているはず。これを無くさないようにご注意ください。
④-2 シューの交換
カートリッジ式の場合、制動面のゴムだけを交換することができます。安上がりで良いですね。

上:カートリッジ式 下:一体型

④-3 シューの仮固定
新しいブレーキシューをブレーキに取り付けます。まだワイヤーは外れたまま、クイックレリーズも開いたままです。シューには上下、前後がありますので、元の取り付け状態を参考に、間違えないように。
ブレーキシューのネジ受け周りは写真のように球状に凸になっています。この凸に、片面凹んだワッシャーを載せてブレーキ本体、ホイール側に差し入れ、平たいワッシャーを付けたネジで固定していきます。この時の固定は、なんとなく止まる程度で。位置も気にしません。左右とも付けちゃってください。

ホイール側に凹んだワッシャー、外側に通常のワッシャー

④-4 シューの上下位置の調整
ワイヤーを張ります。そこまで厳密にやる必要はなく、ブレーキ握ったときにシューがリムにくっついてくれればそれでOK。
シューの固定ネジを緩めたらいったんアーレンキーを置き、片手でブレーキレバーを握りつつ、残った手でシューの位置を調整します。ブレーキの押し付け具合を片手で調整しながら、シューの上下位置と回転(リムのカーブに沿っているか)だけに集中して調整します。例え固定ネジがグラグラでも、ブレーキ握っていればシューは動きません。場所が決まったらブレーキをぐっと握ったまま、もう片方の手でアーレンキーを拾い固定ネジを締めてください。この作業を左右ともやります。この作業と、トーインの作業を同時にやろうとするとイライラマックスになりますのでご注意ください。

このくらいの位置がベストではないかと。汚くてごめん。
位置調整に失敗したまま乗り続けたブレーキシューの慣れ果て

⑤ワイヤーを仮固定する
この後の工程でブレーキシューの位置決めをするので、作業がしやすいようにワイヤーを張ります。
まずワイヤーのたるみをなるべく取るために、ワイヤー先端を軽く引っ張りながら、ブレーキレバーを握ったり離したりします。特にレバーから手を離すときにワイヤーを引っ張るようにしてたるんでいないことを確認してください。
ワイヤーを外した時と同様に、ブレーキ本体を片手で握りこみます。

ワイヤー外すときと同じ

その状態で、残った反対側の手でワイヤーを少し引っ張り、途中に変なたるみがないように再確認したあと、ワイヤーから手を放し、代わりにレンチでワイヤー固定ネジを締めこみます。人間の手は基本2本しかないので、ワイヤーを引っ張りながらネジは締められません。
ワイヤーが固定(規定トルクまで締め付ける必要はありませんが、作業途中で外れるとケガするので、比較的しっかり締めた方がいい)出来たらブレーキ本体から手を外して、シューとリムの間隔をチェックします。左右ともに2~3mmであれば合格。
ここでは仮固定なので、2mm以下でも、3mm以上でもあまり気にせずにOKです。
(参考)誰かに手伝ってもらえるか、腕が3本あるか、もしくは器用にブレーキを押さえながらワイヤーを引ける人は、このやり方だとクリアランスが確保できず、かつアジャスト不能になる可能性があります。そんな時はアジャスターを半分くらい伸ばしてからワイヤーを張るか、リムとシューの間に何かを挟みながら張るなどの手段が考えられます。

⑥ブレーキの音鳴り対策
バイクのブレーキシューはトーインと言って車体前側からリムに接地する様に調整する必要があります。この前後の角度が変わり、車体後ろ側からリムに接地するようになると音が鳴るのです。
この調整にはジグを作ると便利。だいたい0.5mm~0.7mmくらいの厚さのプラバンがいい感じです。プラバンがなくても適当に厚紙を折ったものでも全然大丈夫。
このジグを、片手で車体後方側のブレーキシューとリムの間に差し込み、反対の手でブレーキを握ります。挟んだものが固定されたら、そちらから手を放し、代わりにアーレンキーを拾って、固定ネジを緩めます。ブレーキは握ったままです。十分に固定ネジを緩めたら、そのまま今度は締めていきます。ぐっと固定出来たら完成です。左右ともやります。

トーイン調整中

⑦ブレーキ本体を固定する
片効きにならないよう、ブレーキレバーを握ったり、離したりして、リムとの当たり方を見ます。ブレーキを握りこむことでホイールが(タイヤが)右か左かにぐっと寄せられるような動きを見せる場合は片効きの状態です。
この場合、ブレーキ本体の固定をさらに少し緩めて、ブレーキを握りこみ、握ったまま、ブレーキ本体の固定ネジを規定トルクまで締めます。これで大体はバランスよくなるはずですが、うまくいかない場合は手動で位置調整します。ブレーキを握りこんだ状態のまま、先にリムに当たってしまっているサイドと逆からぐっと押さえるような形で力を入れて固定ネジを締めるイメージです。
それでもだめなら、緩めて位置決めして仮固定とブレーキ握って位置確認を繰り返すしかありません、この時の注意点は「固定ネジを締める際の回転方向にブレーキ本体も釣られて回る」ことです。この釣られて回る量を考えて位置決めしなくてはいけませんので何度か試行錯誤が必要になります。
ブレーキの種類によっては片効きを調整するためのネジが存在するものもあります。
またブレーキの硬さ(ばねの強さ)を調整できるものもありますね。マニュアルを見ながら、自分の好みに調整すると良いでしょう。

⑧ワイヤーを固定する
シューの位置とブレーキ本体の位置が決まったら、一旦ワイヤーを外し、⑤の工程と同様の手順で固定しなおします。これが最終となりますので、2~3mmの隙間を目指してください。ブレーキ本体を握りこむ力で調整します。

⑨シューとリムの間隔調整
最後にアジャスターを回して間隔調整をします。今はアジャスターが締めこまれた状態=もっともワイヤーテンションが緩い状態のはずです。この状態で、すでに間隔が狭い(1mm無い)ような場合は調整のしようがないので、もう一度ワイヤーを外して⑦の手順を繰り返します。間隔が広すぎる場合(3mm以上)も張りなおしたほうが無難です。
間隔が決まれば、ブレーキの調整は完了です。

最後に

ブレーキは命に関わる機構です。最後にもう一度、ブレーキ本体の固定ネジ、ブレーキワイヤーの固定ネジ、シューの固定ネジに緩みがないか、そしてクイックレリーズが走行ポジションになっているかを確認してください。
もし近所に信頼できる自転車屋さんがあるならば、一度確認してもらうといいでしょう。
以上です。お疲れさまでした。

おまけ キャリパーブレーキのしくみ

さらにブレーキの仕組みを理解したいひと、なぜ調整ナットで調整できるのか知りたいひとは以下のリンクをご参照ください


#ロードバイク #キャリパーブレーキ #リムブレーキ #ブレーキ調整 #ブレーキワイヤー交換 #ブレーキ #メンテナンス #メンテ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?