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【ショートショート】『初めての』

 優れたスナイパーは敵から身を隠す術においても一流である。場所により草木に偽装したりなどは日常茶飯事だ。そして、ターゲットが現れるまで微動だにしない。さしずめ、現代の忍者だ。

 その日も草に偽装した状態で草原に伏せたまま既に二時間は経とうとしていた。漸くやってきたターゲットの男女。仲睦まじく手を繋いで野道をやってきた。

「ねえ、けーすけ。ちょっと一休みしようよ」
「わかった。いいよ」

 女は一心不乱に花を摘んでいる。男は寝そべって空を見上げているが今にも寝てしまいそうだ。

 ここで、耳のイヤホンから指令だ。

『タイムリミットだ。急がせろ』

 現場で声出しは許されない。マイクを指で二回軽く叩くとミッション実行だ。

「お嬢ちゃん、もう行かないと日が暮れるよ」

「あなたは、だあれ」
「花の精さ」

 きょとんとして辺りを見回す女。もちろん見つかるわけがない。園児とはいえ責任感溢れる姉は、弟の手を取って歩き出した。

「じゃあね花の精さん。おつかいに行かなくちゃ」

 ミッション大成功。
 
 

(420文字)

* * *

 
以上、こちらからお題をいただきました。



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