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PTAのアップデート

 これからのPTAは「これまで通り」のやり方を変えて、アップデートしていく必要があります。それは、PTAが社会の変化に対応する必要があるからです。

PTAのアップデートが必要な理由 

PTAのアップデートが必要となっている理由には、例えば以下の三つが考えられます
A) PTAの担い手の減少
B) 個人情報保護法改正
C) 「PTAは入退会自由」が広く周知・認知されてきた

A) 「活動の担い手」の減少

 PTAを取り巻く社会の変化として、もっとも大きなものは「活動の担い手」の減少です。子どもの数の減少、すなわち子どもを持つ世帯が大きく減少しています。さらに、これまでのPTAの担い手となってきた、いわゆる“専業主婦”の比率も大きく減少しています。この世帯数の減少(子どもの数55%)と“専業主婦”の減少(50%)を掛け合わせると、この40年間で27.5%にまで減少しています。「PTA問題」の背景
 “専業主婦”が主に活動を担う、PTAの「“専業主婦”担い手モデル」の担い手が、40年間で3分の1以下にまで減少しています。これでは「これまで通りの活動」が立ち行かなくなって当然です。

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図1:専業主婦世帯数と共働き世帯の数の推移
資料:労働政策研究・研修機構 『早わかり グラフでみる長期労働統計』


B) 個人情報保護法改正

 2017年5月30日の個人情報保護法改正により、PTAも「個人情報取扱事業者」に該当することになりました。
 改正前は5,000件以下の個人情報を取り扱う事業者は対象外とされてきましたが、この改正によりPTAも 「個人情報保護法」に則って会員の情報を取り扱うことが求められるようになりました。
 「これまで通り」の会員の個人情報の入手や取扱の方法ではなく、対応が必要となるPTAも多いのではないでしょうか。

C) 「PTAは入退会自由」が広く周知・認知されてきた

 マスコミなどでPTAが「PTA問題」=「社会問題」として取り上げられる機会が増えてきています。
 PTAが「PTA問題」として取り上げられるのは、そのほとんどが「強制」の問題で、それは「強制加入」と「強制参加」の問題に整理することができます。(「強制のないPTA」とは?)その際、PTAの大前提として「そもそもPTAは入退会自由の団体」という説明がされ、広く周知・認知されてきています。
 これまで、多くの人が「PTAは親の義務だから必ず加入・参加しなければならない」と信じてきた、「『PTAは親の義務』神話」は崩壊目前といえるのではないでしょうか。(PTAは保護者の義務なのか
 「これまで通り」ではなく、明確な「入会意思確認」が必要となっています。

アップデートして解消すべき課題

アップデートして解消すべき課題を以下の5つにまとめてみました。
①. 意思確認なく入会となる「自動入会の課題」
②. 本人の同意なくPTA が個人情報を取り扱う「個人情報の課題」
③. 意思確認なく会費が引き落とされる「会費徴収の課題」
④. 未加入世帯児童・生徒への対応の課題
⑤. 1子1回ルールやポイント制などの「義務的な参加の課題」

①②③手続きの課題

 5つのうちの最初の3つ(①自動入会の課題・②個人情報の課題・③会費徴収の課題)は「手続きの課題」としてまとめてアップデートすることができます。
名古屋市立小中学校PTA協議会で情報提供している「PTA入会申込書・会費引落委託及び個人情報取扱同意書【参考例】」を使ってくだされば、シンプルに対応できます。
 さらに、個人情報の取り扱いについては、同じく名古屋市立小中学校PTA協議会で情報提供している「PTAにおける個人情報の適正な取扱いのために」を参考に、以下の5つのポイントを押さえてください。

(1) 「個人情報取扱規則」の策定と周知
(2) PTA会則(規約)に項目を追加
(3) 学校との業務委任契約
(4) 個人情報の取得と取り扱いの同意
(5) セキュリティー対策

 さらにポイントとして、強調しておきたいのが、「要配慮個人情報」は取り扱わないということです。「要配慮個人情報」とは、「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの」とされています。このような責任の重い個人情報はPTAとして取り扱いたくないものです。
 特にPTAで気をつけたいのは、委員・役員を選出する際に、PTAから各家庭の事情の開示を求める場合です。PTAから文書の提出を求めたり、口頭での説明を求めたりすることも「要配慮個人情報」の入手と考えられます。

④児童・生徒への対応の課題

 マスコミで多く取り上げられているものに「④未加入世帯児童・生徒への対応の課題」があります。
 会員になっていない世帯の児童・生徒には、お祝い品などを渡さないというような、いわゆる「コサージュ問題」や「まんじゅうプロブレム」といわれるものです。
 もっとも基本的な考え方として「PTAの会員は保護者と教職員であり、児童・生徒ではない」という前提があります。その児童・生徒の保護者がPTAの会員であるかどうかによって対応を変えることは、児童・生徒に対する差別にあたります。
 「PTAという団体から、学校の子どもたちへのお祝い」であるならば、そのお祝いの気持ちを大切にして、すべての子どもたちに平等な対応をする必要があります。

⑤活動参加の課題

 おそらく、現在のPTAが抱える課題として最も大きなものが、1子1回ルールやポイント制などの「⑤義務的な参加の課題」だと考えられます。
 最初に見たように、PTAの担い手は大きく減少している中、「これまで通りの活動」を続けていこうと、なにかしらの「強制」を働かせるルールが必要になっているのではないでしょうか。
 このような「強制」による「イヤイヤベース」の参加では、やりがいのある活動にはなりません。(「強制ベース」から「賛同ベース」・「イヤイヤベース」から「やりがいベース」への転換)「参加したい」と思う人が参加することでPTAの活動は活発になります。そのためには、「参加したい」と思ってもらえるような活動とあり方を工夫すること、さらに、PTAの目的や活動を広報などの機会を使って伝えていくことで、「PTAの目的に賛同して入会して、活動の意味を理解して参加する」という活動スタイルに変えていく必要があります。
 最近では、あらゆるノルマをなくして活動しているPTAも増えてきています。例えば、委員会を廃止して、全ての活動を募集する「活動エントリー制」(PTAの活動をエントリー制にしませんか?)や、全ての委員を立候補だけで選出するなどの工夫をしているPTAがあります。

PTAのアップデート

これからのPTAは

・適切な手続き
・「参加したい」と思うような魅力的な活動
・PTAの目的・意義、それぞれの活動の目的・意義の説明や広報

というような方針で運営し、「入退会自由」を大前提としたうえで、「PTAの目的・意義に賛同して入会する」、「PTAの活動に参加したいから入会する」というような、加入・参加の動機を意識することが必要です。

「入会したい」「参加したい」楽しく活発なPTAにしていきましょう。


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