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「強制のないPTA」とは?

 PTAが内包する問題は、その設立が推進された70年以上前から様々なものが指摘されてきました。しかし2000年代以降に多くの声が上がっている、いわゆる「PTA問題」とはPTAの運営・活動における「強制」の問題に尽きるといえるでしょう。

5つのPTA問題

 近年のいわゆる「PTA問題」として指摘されているものは、具体的には以下の5つに整理できると考えています。

○入退会にまつわる問題
 ①子の入学と同時に自動入会する「自動入会問題」
 ②本人の同意なくPTA が個人情報を持つ「個人情報問題」
 ③入会意思確認なく会費が引落とされる「会費引落問題」
 ④非入会世帯の子に差をつける「非加入世帯児童生徒差別問題」
○活動参加にまつわる問題

 ⑤1子1回ルールやポイント制など「活動参加強制問題」

「入退会にまつわる問題」とは、入退会の自由がない「強制加入」の問題です。子どもの学校入学と同時に、入会の意思を確認されることなく会員となり、会員名簿に登録され、会費の支払いを求められる。もし入会申込書があったとしても全員に提出が求められる。さらに退会についても、その方法がなかったり、退会・非加入を申し出ると子どもへの不利益を告げられたりと、その学校の保護者であるならばPTAに必ず加入し、辞めることもできないような運営の問題です。
 「活動参加にまつわる問題」とは、会員は必ず何かの活動に参加しなければならない、という「強制参加」の問題です。多くのPTAでは役員と委員が選出され、主なPTAの活動には役員と委員だけが参加しているようです。この役員と委員の選出に様々な「強制」が伴っていて、学級委員が決まるまで帰れない学級懇談会やくじ引き、子ども一人につき一回は委員・役員を引き受けなければならない「1子1回ルール」、子どもの卒業までに必ず何ポイントをクリアしなければならない「ポイント制」など、様々な「強制参加」の工夫がなされています。また、委員・役員を引き受けられない理由、例えば、個人・家族の病気や家庭の事情といった、デリケートなプライバシーをクラスの保護者の前で話さなければならなかったり、書面で提出させ役員で免除の可否を判断したりするような「免除の儀式」といわれるものも「強制参加」の問題に含まれるでしょう。
 このように近年のいわゆる「PTA問題」とは、すなわち「強制加入」の問題と「強制参加」の問題とに大きく分けることができます。

「強制加入」の問題の解消

「強制加入」の問題は手続きの問題であり、その解消のためには手続きの整備を行うことです。
 名古屋市立吹上小学校PTAでは、入会の際に「PTA入会申込書・会費引落委託及び個人情報取扱同意書」の提出を受けています。また、「退会届」の書式も公開しています。これにより上記5つの「PTA問題」の①「自動入会問題」②「個人情報問題」③「会費引落問題」が解消できます。(これに伴い、会費引き落としのための学校との「業務委任契約」を結ぶとともに、「個人情報取扱規則」を定めています)

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④「非加入世帯児童生徒差別問題」については会則の「方針」に「本会の活動において、すべての児童は平等に扱われ、児童及びその保護者の属性によるあらゆる形態の差別をしてはならない」と定めています。会則に定めれば「差別」が解消できるというわけではありませんが、運営における指標とはなるでしょう。 2020年の加入率は93%です。

「強制参加」の問題の解消

 吹上小PTAでは、2017年度から全ての委員・委員会を廃止し、全ての活動を募集により主体的に集まった人で行う「活動エントリー制」(別記事:PTAの活動をエントリー制にしませんか?)を導入し活動しています。これにより⑤「活動参加強制問題」が解消できます。
 2018年度の活動参加率は57%でした。

「強制のないPTA」を目指して

 吹上小PTAでは、「強制のないPTA」を目指し、以上のような運営方法の変更を行なってきました。その結果、2020年に行ったアンケート調査(n=227 回収率78%)では、5.7%の会員がPTAに強制を感じ、81.1%の会員が強制を感じていないという結果でした。

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「強制のないPTA」とは?

 以上のように、近年のいわゆる「PTA問題」として指摘されているものを「強制加入」「強制参加」の問題と整理し、吹上小PTAではその解消のために「強制のないPTA」を目指し運営方法の変更を行なってきました。しかし調査結果からは「強制『感』」を完全にゼロにすることはできていないことがわかります。
 果たしてPTAの「強制『感』」を完全にゼロにすることは可能なのでしょうか。PTAの運営としてできることは一切の「強制」をなくすように「システム」を変えることしかなく、「強制のシステム」をなくしてもなお残る「強制『感』」をなくす術をPTAとしては持っていません。「強制『感』」をなくすためには、一切の「強制のないシステム」を運用し続け、「PTAとは主体的に参加するもの」という原則が文化として定着することを待つほかないと思われます。
 現時点における「強制のないPTA」とは、一切の「強制のシステム」を持たず、5つのPTA問題を解消していることが条件だと考えます。その上でさらに「強制『感』ゼロ」のPTAを目指して工夫を重ねていくことが必要です。

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