見出し画像

授業の様子⑧:グローバルスタディーズ学科

今日は、グローバルスタディーズ学科、アフリカアジア専攻2年生の必修科目である「地域研究入門」(阿毛香絵担当)を紹介します。必修の学生に加え、選択科目として受講している他専攻や人文学科の学生をあわせて25人ほどのクラスです。受講生全員が、3年次に国内外のフィールドワークに出ることを前提に、地域研究の基礎知識や理論を学びながらゲスト講師を招いたり、グループワークを通して自らの興味のあるテーマや地域に関する文献をあたったりしつつ講義を進めています。
 授業のテーマは「学際的な学びへむけて」。「多文化共生」「違いをみとめあう」といったキーワードが聞かれる今日の世界ですが、そもそも文化とは、地域とはなにか、「エリアスタディーズ」として学ばれる個別のエリア=地域はどのように「作られ」、学ばれてきたのか。私たちが当然のように考えている地域的な括りや文化圏に対する考えかたを見直すことで、新しい視点から文化や社会にアプローチすることを目指しています。例えば「イスラーム圏」といったとき。アラブ諸国やアジア、アフリカの一部を思い浮かべますが、欧米や日本、世界のあらゆるところにイスラーム教徒のコミュニティがあります。日本に生きるイスラーム教徒にとって、イスラーム文化とは遠い国の文化ではなく私たちが生きている日本の制度やリアリティに基づいて常にアップデートされているものなのです。

写真1:ゲスト講師を交えた授業の様子(撮影日:2022年10月19日)

授業のゲストには、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、ヨーロッパなどそれぞれの地域や分野で経験がある講師をお招きしています。先週はラテンアメリカがご専門の山本純一先生(慶應義塾大学)にお話しを伺いました。山本先生は長年メキシコの先住民コミュニティーに寄り添い、1990年代から「インターネットを武器にしたゲリラ」として活動を行うサパティスタ運動、そして同国チアパス州の生産者と繋がり起業するに至ったコーヒーのフェアトレード研究など、研究と実践を続けられています。講義で紹介いただいた「参加型アクションリサーチ」、「世界を変えるには根底、つまり私たちの考え方を変えなければならない」(アルチュセール)、「無知は暴力になる」(小熊英二)といったキーワードが学生にとって印象的だったようです。

写真2:サパティスタ運動について解説する山本先生(撮影日:2022年10月19日)

サパティスタという「ゲリラ」が生まれた背景には、16世紀にさかのぼるスペイン人によるアメリカ大陸先住民の支配の歴史があります。国として独立し近代的な制度が整っても、そこから取り残されている人々がいる。ラテンアメリカは多様な国があるというだけでなく、そこに生きる人々の人種や文化、生活環境も様々なグラデ―ションと多様性に満ちています。受講生からの質問への答えの中で、山本先生は「サパティスタは、多くの世界が入るひとつの世界を望むと訴えている。(…)サパティスタの自治区はいわばひとつの「くに」で、外部の支援を受けながらも、自給自足的な社会、自前の学校、組合などをつくっている。そのような世界をつくるには、(下からの地道な)積み重ねが必要」と話されていました。
どういう単位で「地域」にアプローチし理解していくのか。私たちが文化や社会を語るときに使う「国」という単位(フランス文化、日本社会等)は絶対的な括りではなく、人々の実際の生活を理解するには、より多様で重層的な地域の考え方や見方が必要です。

学生たちのグループワークのテーマは「メディアと乗り物」「韓国の食」「フランスやオセアニアの宗教・伝説」など様々。学期を通じてそれぞれのテーマについていろいろな資料に触れながら自ら調べてみることで、地域や異なる社会について新たな視点を発見できるよう取り組んでいます。

写真3:京都精華大学に新しくできたTerra-Sのカフェで本格的なタコス
(ラテンアメリカの定番料理)が食べられます。ぜひお試しください。

2022年10月25日 
阿毛 香絵(グローバルスタディーズ学科教員)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?