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授業の様子⑳:グローバルスタディーズ学科

今回は、人文学部3年生を対象に2022年4~8月の間行った「フィールド・プログラム」の様子を紹介します。これから最大6カ月間の現地調査で海外に行く皆さんの参考になればとの思いから記述します。

皆さんが所属する京都精華大学国際文化学部の前身の人文学部は、1989年に1学科、収容定員180名で発足しました。当時の学長笠原芳光氏は、人文学部発足の意義を以下のように説きます。

「これまでの学問が多くは書物中心、机上の勉強であったのを改めて、体験し、行動し、生活しながら学ぶという、いわばフィールドワークの方法を大きくとりいれることにしました。それも京都、日本全国、そして海外各地、とくにアメリカとオーストラリアとタイでは現地の大学や研究所と提携し、第三学年の後期を全面的に、そのような実習をともなう勉強に充てることにしました」(笠原芳光『木野通信12号』)

上記より本学は、発足当初からフィールドワークを重視してきた伝統があることが分かります。多くの人文系の学部を有する大学では、3年生の期間はゼミなどを通じて、座学で、専門性を追究することが一般的に行われている姿です。本学では、フィールドワークを通じて、実学で、体験を重視する点が大きな違いや特徴だといえます。

今から紹介する「フィールド・プログラム」「地域・企業研究~在京の中小企業・ベンチャーの魅力を発信する〜」(授業担当者:服部静枝・南了太)でも、人文学部の伝統を受け継ぎ、3年生の前期に学生たちは、個々に、自らに課したテーマをもとに、課外活動を行い、研究を報告書やパネルにまとめる作業を行いました。

この授業の目的は、京都の中小・ベンチャー企業を対象に、その企業の魅力を学生目線で社会に伝えるための企業研究を行うことです。具体的には、各チームで京都企業の実態を文献やインターネットを通じて調査し、そこで学んだ知識を元に企業に対してインタビュー・撮影を行い、インタビュー内容を編集して映像にまとめ、社会に発信するまでの一連のプロセスを学びました。特徴的なのは、学生の目線で企業の魅力を様々な角度から発信し、産学連携や広報の視座のみならず、自身の就職意識の向上も含めて授業を展開している点です。コロナ禍で思うように社会と接点を持てない受講生に対して様々な経験を積ませたいとの思いから、かなり負荷がかかる様々なメニューを用意しました。

授業の進めかたは以下の通りです。先ず、3年生受講生17名を対象に、企業研究や映像指導を行いました。マナー講座やメールの書き方などの社会人の基本的な素養の指導をはじめ、対象企業の業界・同業他社の動向調査、撮影技法、広報の紹介、実演、企業訪問、映像・企業研究会発表、成果発表など多岐に渡りました。また、様々な課題をこなす必要から、個人ではなく、4人1組のチーム編成にし、①リーダー(グループの取りまとめ、企業窓口・アポイント等)、②質問者(問いのまとめ、対象企業へのインタビュー)、③編集者(映像データの編集作業)、④撮影(映像撮影)、⑤書記(インタビュー内容のメモ作成)の役割を課しました。社会人になるとチームで仕事をすることが一般的です。在学期間中から、このような体験を行ってもらいました。

写真1 フィールドワークの様子

さらに、撮影や編集技法は、株式会社OFFICE SAWAMURA(京都市東山区)の協力を得ました。そして、包括連携先の京都リサーチパークの協力の元、図表2の対象企業に対してインタビューを行い、最終的には、学生目線で企業の魅力を伝える5分程度の映像を作成し、関係企業を招き、京都リサーチパークを会場に成果発表会を行いました。

写真2 成果発表会の様子

「フィールド・プログラム」では個々人でテーマを設定し、現象を記述し、報告書をまとめることが一般的です。今回の活動は、チームで行い、企業と連携を図り、企業のプロモーション映像を作ったことで、従来の「フィールド・プログラム」の枠組みを超えた活動となりました。関係機関からの様々な協力を得た本取組を通じて、受講生は様々な力を養うことができました。実際、履修者に対しては、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」 の12の項目(①主体性、②働きかけ力、③実行力、④課題発見力、⑤計画力、⑥創造力、⑦発信力、⑧傾聴力、⑨柔軟性、⑩情況把握力、⑪規律性、⑫ストレスコントロール力)を用い、事前・事後でどのように変化したかを5件法で主観評価しました。15名の回答があり、その結果、「そう思う」、「ややそう思う」の回答を10人以上集めたのは、主体性、実行力、課題発見力、計画力、発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性でした。すなわち、基礎力の大部分において向上が見られました。

フィールドワークは、個人的な活動のみならず、チームで実施した際にも効果があり、さらに社会人基礎力の向上も期待のできる、成長の源です。グローバルスタディーズ学科の皆さんがたくましくなって海外の調査地より戻ってこられることを期待しています。

参考①:対象企業と完成動画

企業名:株式会社カンブライト
所在地:京都市中京区
業務内容:食品開発コンサル事業・オリジナル缶詰商品の企画~販売など
完成動画:https://youtu.be/WEVv1yLHHLc

企業名:株式会社ウエダ本社
所在地:京都市下京区
業務内容:リノベーション事業・空間プロデュース事業など
完成動画:https://youtu.be/kNwK3I93JLo

企業名:大東寝具工業株式会社
所在地:京都市伏見区
業務内容:寝具・寝装品の製造
完成動画:https://youtu.be/gqjz_5XyO8A

企業名:HILLTOP株式会社
所在地:京都府宇治市
業務内容:機械加工事業・表面処理事業・装置開発事業
完成動画:https://youtu.be/1sDpGUeifF4

参考②:成果発表会

人文学部3年生によるフィールド・スタディーズ成果発表会を開催。
京都の企業4社を調査し、企業紹介映像を作成しました。
https://www.kyoto-seika.ac.jp/news/2022/0804_2.html
(2022年8月4日 京都精華大学HP)

2023年3月6日
南了太(グローバルスタディーズ学科教員)

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