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満月

私は太陽より月が好きな人間である。
根暗なのもあるが、退勤すると励ましてくれるのは月や都会で少しだけ見える一等星だけだったりする。実家をとうとう追い出されかけている私はコンビニか公園で一服しながらベンチで体育座りをしていた。

そもそも、収入がかなり低い片親の家で芸人を目指すというのはかなり無理があるのだ。正社員だった頃の私に助言するとするならば、悪いことは言わないから貯金をしておけということだけ。

「身の丈にあった生活をしろ」

母のよく言う言葉だった。実際今食料も無ければ、東京に出るのが限界値のお金くらいしかない。
唯一の趣味と言っても過言では無い賭け事すらできていない状態である。身の丈にあった生活とは、と考えながら同期から貰った非常食を口にしている。

月の満ち欠けというのは、太陽と地球の関係性で、光が当たる部分によって見え方が変わる。私のこの生活だって、見方を変えれば、節約家のミニマリストということになったりしないだろうか?

満月は太陽が1番当たっている、月自身が一番輝くことのできる日である。そんな日に私はコンビを結成した。
「フォルモント」ドイツ語で満月を意味する。
(ドイツ語専攻だった母に、ハゲ頭という意味もあるということを指摘されたことを差し置いても)かっこいい響きである。抜けきらない厨二病が疼くような気もする、ネーミングセンスである。

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