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米国映画業界のわさわさから思うこと

ユニバーサル・AMCの契約とそれが示唆すること

一時は離婚の危機に直面していたユニバーサルと米国大手映画館チェーンのAMCが複数年契約で、劇場公開後、3週間でプレムアム価格($20前後)であればVideo On Demandで配信しても良い、但し、その配信売り上げの一部はAMCとのレベシェアである。料率などは不明。

コロナ感染拡大で大打撃を受けた映画界。大手スタジオや配給会社、そして劇場も変容を迫られながら生き残りを賭けていることには違いありません。

大手スタジオ(配給)

他の大手スタジオや劇場がこの流れに追随するかどうかは、今のところ不明です。ディズニーのように月額のストリーミングサービスを運営しているところはプレミアムオンデマンドの契約を劇場と結び、レベシェアというのはあまり旨味がないのではないでしょうか。劇場で大ヒットしてくれた方が、サブスクサービスの新規会員獲得や既存会員のリテンションに効果があるかもしれません。この辺はまだ、不確定要素が多いのでなんとも言えませんが・・・配信と公開同時の場合の宣伝予算の組み立てとサブスクビジネスへの影響など、色々なケースをテストして分析して、勝ちパターン(作品のLife Time Valueを一番高める可能性が高いパターン)を見つけてくると思います。いずれにしても、この段階でAMCと個別契約をすることはないのではないでしょうか。

大手シネマチェーン

他のシネマチェーンも今は様子見ですが、意外と早いタイミングで追随するのではと上記記事では考察されています。それが、映画館というビジネスを従来のエコノミーでは成り立たなくさせることになっても、選択がないのではないかとのことです。

独立系の劇場

ここでいう独立系の劇場とはアート系作品やインディーズ映画と言われるようなミニ作品を中心に上映する日本のミニシアターとは少し違い、どちらかというと地方都市やローカルに根付いた、独立オーナーの映画館のことを指していると思います。大手スタジオの作品も大都市のシネマチェーンと同時かあるいは遅れて上映します。もちろん、オーナー企業の強みですたじを作品以外も上映するところも多いと思われます。日本でも地方都市に長く存在する映画館などは大型作品も当然上映したりします。

独立系の映画館に関しては、米国でもそもそもが経営が厳しいところが多く、このコロナ禍で相当数の倒産が一方では予想されています。

大手シネマチェーンのような交渉力を持っていない映画館は、結局は大手どうしが決めた新しいルールに乗るしかなく、仮に、上映から配信までの時間が短くなると、映画館によってはそっくりお客さんが配信に流れてしまうという悲観的な見方がされています。

残念ながら、米国の場合はそうなのかなと思いますが、日本の場合、配信サービスのユーザー数が現状まだ、大都市に圧倒的に多い可能性も高く(事実、某大手や某スポーツ配信はやはり大都市にユーザーが集中しているという話を聞きます。。。)まだ、少しの期間は街に唯一の映画館だったりしますと出向くお客さんはいるのかなと思います。が、それも、そもそも映画館に行くことに対する人の意識、このコロナでやはり影響は出ているはずなので、見通しは不透明ではあります。

映画館への意識は、思ったほど、下がっていないという結果はこちらから。

映画館のメディア機能

さて、私は、この動きは記事にあるようにAMCの経営状態がかなり厳しい中での生き残り施策の一つであると思います。今後、全てのスタジオが製作、配給する作品が一気に、ものすごい短期間で公開と配信が同時になったりはしないと思いますが、確実に変容はして行くと思います。

大手以外の作品は尚更、従来の慣習にとらわれないチャンレンジがもっと早いスピードで実施されるでしょう。

そこで、重要なのは、やはり、興行と配信、それぞれからの収益をトータルで考え、作品の規模やターゲット、そして社会情勢に合わせ、利益ベースあるいはLife Time Valueの最大化を意識してマーケティング戦略を考えること、他ならないと思います。多くのスタジオで興行と配信やホームエンタテインメント部門でマーケティングチームが異なる、データも共有されていないということを聞きますが、これからは、まさに、マーケティング組織も同じKGI(コンテンツの利益)に対して動くべきではないでしょうか。そうなってくると、場合によっては、映画を劇場で公開するということは予告編をTVで流すより、効率がいいマスマーケティングになるということもあり得るかもしれません。もちろん、劇場で2週間公開することを認知させることはしないとダメですが、期間や劇場数が限られるのであれば、従来の予算を使う必要もないかもしれませんし、TVも公開地域だけでいいかもしれません。公開後、すぐ、配信へ移行する場合、そもそも、デジタルチャネル中心の宣伝の方が適している場合もあるかもしれません。

リアル型のビジネス(飲食やホテル)がコロナ禍でメディアとしての機能を保有する道を模索しているという話と合わせて考えてると、映画館も映画を届ける役割に加え、映画やコンテンツの価値を底上げするメディアとしての価値、機能、収益化を考える時期なのかもしれません。



配信、劇場公開に限らず、映画を効果的に宣伝することに興味があれば、是非、お声がけください。