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【非営利事業と対象者設定②】こども食堂の事例から考える

最近、「こども食堂」という言葉をよく耳にするようになった。

こども食堂には様々な運営方法があるが、ほとんどが民間による非営利事業だ。

この記事では、実際のこども食堂の事例を挙げながら、
非営利事業の対象者をどのように設定していくべきなのかを検討していきたい。

こども食堂とは

まず、本題に入る前に一度、一般的なこども食堂について簡単に説明しておきたい。

こども食堂とは、地域住民や自治体が主体となって
無料または低価格で子どもたちに食事を提供する事業だ。

孤食を避けたり、栄養のある食事を提供したりすると共に、地域の交流の場になっていることも多い。
そのため、近年の核家族化や経済格差などの社会問題を解決する手段の一つとして注目されている。

実際に「認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」が行った調査では、
2023年2月現在、全国に7,363か所のこども食堂があるとしており、
319か所だった2016年から比べると、急速に増加しているといえる。

( https://musubie.org/news/6264/ )

それでは、具体的にどのようなこども食堂があり、どのように対象を設定しているのか、
実例とともに見ていくことにする。


こども食堂Aの事例

こども食堂Aの定員は15名。
所得等の制限は設けず、子どもとその保護者に食事を提供している。

こども食堂Aの長所は、資金面で苦労することが少ないということだ。

提供数が少ないために、多くの食材を必要としない上、
コミュニティを活かした助成金や寄附の補助も受けている。

一方で、欠点として挙げられるのは、
定員が少ないために募集開始の案内の後、すぐに定員がいっぱいになることだ。

さらに、利用者の多くは親が近くの大企業で勤めており、裕福な家庭が多いように感じる。


こども食堂Bの事例

こども食堂Bの定員は100名。
所得等の制限は設けず、開催場所の地域に住む子どもとその保護者に食事を提供している。

こども食堂Bの長所は、地域を巻き込んだ支援ができていることだ。

市や地区、学校と連携したり、地区内の施設と連携したりしながら
調理師免許を持つ本物のシェフが料理を振舞っている。

定員も多く、定員オーバーを理由にお断りするケースは少ない。

一方で、定員が多い中で継続して運営していくためには、
ボランティアスタッフの確保や食費の削減など、考えなければならない課題がたくさんあるのも現状だ。


こども食堂Cの事例

こども食堂Cは事前予約制で定員を設けていない。
社協や学校からの紹介で利用している人がほとんどで、利用条件の1つに所得制限を設けている。

こども食堂Cの長所は、所得制限を設けることで、より支援を必要とする家庭を対象にすることができる ということだ。

しかし、こども食堂に通っていることを周りの人に知られると、
所得が少なく、貧しい家庭だという色眼鏡で見られるようになったり、
子どもがいじめの対象にされやすくなったりすることも少なくない。

そのため、通いづらいと感じる家庭も多いだろう。


非営利事業で大切なこと

こども食堂A、B、Cにはそれぞれの特徴とそれに伴う長所と短所がある。

しかし、どの こども食堂が正しいというわけではないし、
短所のない完璧な事業などほとんど存在しないように、完璧なこども食堂を作ることは不可能に近いだろう。

だからこそ、様々な特徴を持つ こども食堂が存在し、それぞれが長所を活かした運営をしていく中で、
利用者がどこを利用するのかを決定できるようにすることが大切だと思う。

非営利事業を行っていくにあたって大切なのことは、
事業を大きく見せて名声を得ようとしたり、どちらが優れているかを競ったりすることではなく、
それぞれの長所や短所を共有し、利用者の要望に一番合っている団体を紹介し合えるような環境を作ることなのではないだろうか。

たとえ利用者が少なくても、救われる人がいるのであれば、それでいい。

非営利事業を行っていくには、そう思えることも大切なのかもしれない。


非営利事業の対象者設定

これらのことを考えると、非営利事業を行うにあたって対象者をどのように設定すればよいのかが見えてきた。

継続できることが何よりも大切であるが、
地域の特徴や事業の現状・ニーズを知り、そのニーズに対応しつつ、今の事業にはない対象者を設定していくべきなのではないだろうか。

例えば、困窮家庭の支援をしたいと考えたとき、
ひとり親世帯に向けた支援しかなく、対象外となる家庭があることを知ったのであれば、
収入による制限を設けた支援をするべきだと思う。

また、収入やひとり親であることを公言したくないというのであれば、
対象者に制限を加えず、誰でも利用できるような事業をするべきだと思う。

1つの事業で困っている人全員を助けることは不可能だろう。

だからこそ、様々な人の意見に耳を傾け、共有することで、
どこかの事業で救われるような社会になれば、より多くの困っている人を助けることができるのではないだろうか。

もちろん、このような社会をつくることは簡単ではない。

しかし、少しづつでも前に進めるように行動していきたいと思う今日この頃だ。

(hina)


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