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人材紹介会社の限界

どこのIT企業もエンジニア採用には苦戦しているだろう。
ある大手エージェントに聞いた情報によるとWebアプリ開発のSEについては、毎月500人が新規登録するそうだが、それに対して求人票の数が5,000あるとのこと。
カオスすぎる。
資金力やネームバリューのある大手に根こそぎ持っていかれているのが現状である。

つまり、中小企業は人材紹介エージェントに任せていたら、奇跡が起きない限り採用できない。
私も試行錯誤してみたが、エージェント経由は年に4人が限界だった。
(ちなみにエンジニア以外は、エージェントを使えばすぐに採用できた)

しかし、現在成長フェーズの会社としては、この2倍、3倍のペースで採用したいところ。
さて、どうしたものか。
とりあえず、棚卸しがてらエージェント対応の強化でどのようなことをしたか振り返っておこう。

【今期の採用改革の結果】

1Q 応募:20名、内定:0名
2Q 応募:37名、内定:1名
3Q 応募:54名、内定:2名
4Q 応募:69名、内定:1名
まだまだ内定の数に不足はあるものの、応募数は徐々に拡大することができた。

【エージェント強化の取り組み例】

1.コミュニケーションの増加
人事担当になってから、まず始めにやったことです。
結局は人対人だから、仲良くなれば絶対好意にしてくれるはず、という理論です。
これは効果がありました。ご足労いただいて会社の魅力や課題を細かく伝え、担当者が紹介しやすいようにいろんなデータも提供しました。
月別残業時間や有給消化率、事業部長の経歴などなど・・・。
また、困ってることがあったら、すぐにエージェントを頼ることにしました。
主要5社に絞り込み徹底的に。
そしたら「こんな人いるんですけど、どうですか?」等、エージェント側からもカジュアルに提案してくれるようになりました。
もちろん質はピンきりですが、母集団形成という意味では強化になりました。

2.求人票の見直し
これがその次にやったことです。
やり尽くしてると感じている人事の方も多いと思いますが、1をやったあとにやり直すとさらに効果的だとわかりました。
関係性が深まったエージェントの中でも、特に優秀で事業理解の深い担当者と相談して、エージェントの知識もフル動員で作り直します。
そうすると自社で考えてた範囲を超えたアイディアや、競合と差別化を図るための文言なども盛り込むことができるようになりました。
そして1つのフォーマットができたら、その求人票を他のエージェントに転送し、全て書き直してもらう。
これも一定の効果はあったと思います。
さらに、いつか紹介しますが、Green等のダイレクトソーシング等にも転用することができました。

3.紹介フィーアップ
これは結構後半戦で実施しました。
通常35%だと思いますが。45%にアップしてエージェントのモチベーションを上げる方法。
これはまったく効果がありませんでしたので、オススメしません。
もちろんうちも闇雲にフィーアップをしたわけではありません。
それぞれの担当者の目標の持ち方や、社風によって、大きく3つのタイプがあることがわかりました。
①求職者担当と、企業担当のどちらもが売上数字にコミットしている会社
②求職者担当と、企業担当のどちらもが人数にコミットしている会社
③求職者担当と企業担当が一帯になっている会社
このうちフィーアップをして効果があるのは①だと考え、そこだけをフィーアップ対象としました。
ところがフィーアップの前後でまったく紹介数に変動がありませんでした。
特にマイナビとenはフィーアップ要望が強かったですが、効果0です。
お金で簡単に紹介数が増えたら、それもそれで人材サービスとして心配になるので、良かったと思うことにしてます。

4.エージェント用資料の作成
いろいろ話してみると、企業担当が求職者担当にうまく魅力を伝えられていないことがボトルネックになりやすいとわかりました。
もちろん企業によって違うのですが、求職者担当に嫌われると、その企業やその企業担当にはまったく人が回って来ないこともあるのだとか。
しかし、中小企業レベルだとなかなか求職者担当と直接話す機会を作れない。
そこでシンプルに社内で展開できるような資料を作ることにしました。
自社の労働環境や新製品の情報、キャリアパスの情報といった、人づてでは伝わりにくかったり、理解されにくいところをまとめて展開をしてもらうことにしました。
これは、母集団形成に大きく影響したという肌感覚はないですが、特に第二新卒の候補者については当社の理解度が高い状態で面接に来てくれることが増えたと思っています。
ギャップを少なくすることには有効なようです。

【まとめ】

最初の仮説に立ち返りますが、エージェントも結局は人なわけです。
きっと「人が好き」「人のキャリアを応援したい」という人が人材紹介会社には多く集まっているはずなので、うちがどれだけ困っているか、どんな人だったら活躍できるのか、紹介した人が安心して働ける環境があるのか、そのあたりをしっかり共有してあげることが大事なのだと思います。
だからエージェントと仕事するこということは、しっかり現場から意見を吸い上げ、それを言語化して、企業担当に伝え、それを求職者担当に伝えてもらい、求職者に理解してもらうという究極の伝言ゲームマスターになるということなのです。
もっと小さい時に伝言ゲームで遊んでおけばよかった・・・。

p.s.
私の業務領域は、採用だけではなく、育成、処遇、代謝、労務、風土、理念等、いわゆる人事業務全般に渡るので、棚卸しがてら少しずつ記事をまとめていこうと思います。

数ある中から、お越しくださって、 ありがとうございます。 人事って正解がない。 でもできるだけいい方向に持っていきたい。 そんな事例が自分の中に溜まったら、おすそ分けできるように頑張って体系的にまとめていきます。 ご縁があれば奇跡的に巡り会えますことを・・。