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過去の判例・裁判例があれば同じ判決になる?【弁護士 解説】

皆さま、こんにちは。
弁護士をしております、中野秀俊と申します。
今日のテーマですけれども、過去の裁判例があれば同じ判決になるの?というお話をしたいと思います。

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最高裁判例≒法律

裁判例がある場合にその後の事件も同じ判決になるのでしょうか?というご質問をいただいたので、お答えしたいと思います。

まず、最高裁判所の判例はかなり重く、法律と同じ効力があります。厳密に言うと同じではありませんが、同じような効力があります。つまり、最高裁判例が出ると法律論に関しては同じ判断になります。ですので、最高裁判例が出ると各高等裁判所、地方裁判所も法律論に関しては基本的には同じものになります。
最高裁判例によって地方裁判所等の判断が同じものとなった例として、グレーゾーン金利の問題があります。過去には利息制限法と出資法の間のグレーゾーンの金利があり、これが違法かどうか不明とされていました。しかし最高裁判例でグレーゾーン金利は違法とされたことでいわゆる過払い金というものが一気に生まれました。グレーゾーンの部分を返さなければいけないのかどうなのかという法律的判断については最高裁判例が出されたことで地方裁判所等も基本的にはそれに追随しました。これによって過払い金請求ができるようになったわけです。

下級審判決≠法律

次に裁判例(下級審判断)についてです。基本的に判例とは最高裁の判断のことをさし、裁判例とは下級審(第一審、第二審)の判断をいいます。この裁判例については法律と同じ効力はありません。もし「第一審ではこういった判断がされています」となったとしても「今回の場合は違います」という形で同じ地方裁判所でも判断が分かれることは往々にしてあります。
ただし高等裁判所の判断は重いかと思います。もちろん1件だけの裁判例であれば違うかもしれませんが、高等裁判所で同じような裁判が続いているとすると判断としては重く、有力なものになるかと思います。

判例、裁判例があっても諦めるな!

では、自分の訴えとは対する判例や高等裁判所の裁判例がある場合に自分は絶対に勝てないのかというと、そこは少しお待ちください。そもそも判例や裁判例はある事実に対して判断を下しているものです。最高裁判例の場合は基本的には「法律審」といい、事実の齟齬は争えません。あくまでも法律違反と憲法違反しか争えない部分があるので最高裁判例の場合は少し異なりますが、判例、裁判例があったとしても、中には今回の事実とは似ているけど異なる場合もあるわけです。ですので、事実が違うのであればそもそもその判例、裁判例は適用されません。これを判例の射程といいますが、「この判例はAとBのことはいっているけど、今回はAとCの事実があるので、Cの事実に関してはこの判例、裁判例ではいっていない」という話になります。そうすると「この判例、裁判例には当てはまらないので違う結論になるべきだ」という主張ができる場合も往々にしてあります。
そもそも判例、裁判例が変更される可能性もあります。先ほど最高裁判例は法律と同じような効力とお話しましたが、法律自体が変わることも裁判例が変わる可能性もあります。ですので、まったく同じような事案であったとしても変わる可能性はあるのでチャレンジする意味はあるかと思います。

ただ、最高裁判例はかなり重く、変更することは難しいという面があります。ですので、まずは「今回のケースでは判例、裁判例があるのかどうか」について確認し、判例等がある場合には「事実が違うと主張できるのかどうか」については検討する必要があるかと思います。

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