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IPOするDriven Brands Holdingsの強みがわかるnote -30兆円の「地味な市場」で急成長する自動車メンテナンス企業 $DRVN

グロースボウズです。普段は某ファンドにて運用をしていますが、趣味で米国企業やテクノロジー産業の動向についても解説しています。ツイッター( @growthbozu )もよろしければフォローお願いします.

さて、今回は、1月15日にIPOが予定されているDriven Brands Holdingsについて解説したいと思います。洗車などの自動車メンテナンスをやっているとても渋い企業ですが、意外にも注目度が高く、まとめることにしました。

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調べてみると、オールドエコノミーな自動車メンテナンス産業に属しているにも関わらず、巧みなM&A戦略とテクノロジーの活用、優れた組織化ノウハウによって、高い成長力を持つ優良企業であることが浮かび上がってきました。ぜひご一読いただけると嬉しいです。

基本情報

Driven Brands(ドリブン・ブランズ)は、アメリカ・ヨーロッパで自動車のアフターメンテナンスを4100拠点で展開する企業です。サービス内容は、洗車、メンテナンス、オイル交換、修理、ガラス、事故修理、塗装など多岐にわたっています。2019年は5000万台の車両にサービスを提供しました。

出店形態は、自社出店よりもフランチャイズ出店がメイン。なるべく固定資産を軽くして資本効率性を高める戦略です。出店地域としては、ヨーロッパはドイツやイギリスがメイン、アメリカは主として東海岸側に集中的に出店されています。

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売上の50%は消費者から。残り50%は損害保険会社やフリートオペレーター(社用車をリースする会社など)から稼いでいます。

業績

Driven Brandsは、2015年から2019年にかけて、売上高は1.68億ドルから9.36億ドル(5.6倍)に、店舗数は2306店舗から4037店舗(75%増)に、フランチャイズの末端売上高まで含めたシステムワイド収益は14億ドルから32億ドル(2.3倍)に、大きく成長しています(2020年に買収したICWGが期初から寄与していた前提)。

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M&A戦略

Driven Brandsは、M&A戦略によって成長してきた企業です。ただし、ただ買収するだけでなく、買収後にノウハウを注入することによってバリューアップをしています。

バリューアップを示すデータとして、既存店売上高の持続的な成長が挙げられます。なんと、2008年から12年連続で既存店売上高が前年を上回っています。12年間の既存店の平均成長率は4%。

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具体的には、Driven Brandsは買収した企業に以下のノウハウを注入しています。


①独自の研修・教育
社内にATIという独自の研修期間をもち、フランチャイズ加盟店に有償の研修を提供
②データベースマーケティング
180億件のデータを蓄積し、マーケティングや新規出店に活用
③大量調達による仕入原価の値下げ
消耗品や修理部品を一括大量仕入れして原価を下げる。また、自動車卸を傘下に収めることで調達経路を多様化させる。
④クロスセル
買収した会社のプロダクトをグループ内の他店舗で販売

これらの施策によって、買収資金を早期に回収し、持続的な成長と財務健全性を両立させているようです。


展開ブランド

Driven BrandsはM&Aによって多くの自動車アフターメンテナンスフランチャイズを傘下に収めてきました。2015年以降だけでも40件以上のM&Aを実施しています。さらに、2020年には世界最大の洗車フランチャイズの「ICWG」を買収し、今期から業績に寄与しています。
以下、代表的な傘下ブランドを紹介します。

①Maaco(自動車塗装)
✔塗装、表面処理サービス
✔452店舗

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②CARSTAR(事故修理)
✔2015年買収
✔衝突事故を修理するフランチャイズで北米最大
✔937店舗
✔保険会社からの売上が85%以上

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③UNiBAN(ガラス)
✔自動車のガラス修理
✔1977年設立
✔フランチャイズ205店舗

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④Meineke(自動車整備)
✔ブレーキ、タイヤなどのメンテナンスなど
✔1972年設立
✔815店舗

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⑤TAKE5(オイル交換)
✔2016年に買収
✔ドライブスルーのオイル交換
✔1984年設立
✔フランチャイズ81店舗、直営店475店舗

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⑥ICWG(洗車)
✔14か国で洗車サービスを展開
✔2020年に買収
✔売上の35%がサブスクリプション形式の会員課金

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⑦1-800-RADIATOR(自動車部品卸)
✔2001年設立
✔10万店舗の自動車修理工場やボディショップに自動車部品を販売
✔199店舗(99%がフランチャイズ)
✔10万の顧客基盤が将来的なM&Aリストになる

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⑧PH Vitres D'Autos
✔カナダでフロントガラス販売
✔1967年設立
✔8000社の顧客基盤

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市場構造や今後の見通し

米国では2.75億台の自動車が稼働車として走っており、アフターマーケット市場全体は3000億ドル以上に達しています。巨大な市場ではありますが、地域ごとに中小企業が乱立した市場構造で、Driven Brandsのような資本集約型のプレイヤーにとってはシェアアップの余地があるといえます。さらに、以下の3つの理由により、今後もアフターマーケットは成長が予想されています。

①自動車の構造が複雑化しており、専門のプロに修理やメンテナンスを任せる割合が高まっている
②自動車の複雑化に伴って、平均的な修理費用が高まっている
③自動車の高性能化によって自動車の寿命が長くなり、稼働者がより高年式車になっている


たとえば、最近の自動車には先進運転支援システム(ADAS)が普及しているが、ADASをメンテナンスするためには専門知識が必要なため、Driven Brandsのような業者に依頼するニーズが高まっています。また、最新のエンジンのメンテンナンスには、より高単価なモーターオイルが必要となっており、オイル交換の単価が高まっていくことが予想されています。

また、多くのアフターメンテナンス需要は、新車から6年ほどたつと需要が増えてくるようです。2013年以降、世界の自動車の新車販売台数が増加しています。そのため、2013年以降に販売された自動車が順次6年以上の高年式車になっていくことで、Driven Brandのターゲットとなる市場も拡大していくことが予想されています。

自動車のアフターメンテナンスは枯れた産業のように思われがちですが、実はまだまだ成長が続く産業のようです。また、3000億ドルを超える巨大産業のため、まだグループ全体の収益が32億ドルのDriven Brandsであればシェアアップによる成長も可能でしょう。

まとめ

自動車のアフターメンテナンスという非常に地味な産業で成長を続けるDriven Brandsを紹介しました。彼らは、M&Aによって次々とアフターメンテナンス事業者を傘下に収めるだけでなく、買収企業に自社のノウハウを注入することでバリューアップし、さらに相互に商品をクロスセルすることによってシナジーもつくりだす、というとても巧妙な「勝利の方程式」を持っています。コロナ禍で自動車産業がダメージを受けている中で、身売りを検討している企業=>買収対象企業も増えているはずです。今後もM&Aを軸にしたDriven Brands Holdingsの成長に期待したいと思います。

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