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友人だけが合格通知

都内の私立は、一つは神宮にある綺麗な校舎で、もう一つは対称的に当時でも珍しいくらいの全木造建築、尋常小学校と呼ばれる時代の学校を彷彿されるような校舎だった。

「都内の学校=先進的」みたいな固定概念を抱いていた自分にとっては、ちょっとショックを受けるくらいの衝撃だった。

 二つとも自分しか受ける人間はいないと思っていたが、木造建築の方は、奇跡的にもう一人受験するMがいた。

Mも比較的成績が上位の方なので、私は勝手にプレッシャーを受けていた。

自信のない学校を受験する時は、知り合いがメンタルの妨げになる。

 受験の際、同じ学校を受ける時と合格発表は一人で見たい。

現地に見に行くのは自分の中ではお勧めしない。

嬉しいのは合格者だけだ。

試験日に知り合いに会ってしまうだけで、いらぬ雑音が懸念に変わり、恐怖に苛まれる。

試験後にそうなるのならまだしも、試験が始まる前にそうなると、折角落ち着かせた心理状況がカオスへ戻ってしまう。

 Mも私と同じ木造建築校を受けるということが分かると、「願書を一緒に取りに行こう」と誘われた。

試験を受けるわけでもないので快諾した。

試験日は、各自で会場へ向かい、合格発表にも学校を途中で早退して一人で向かう予定だったが、途中でMと出くわしてしまう。

「合格発表、今日でしょ?一緒に行こうぜ」
という流れから、一緒に行くことになった。

 ここからは、案の定の流れで、私が貰い受けた封筒が薄く、Mがもっている封筒の方が厚みがある。

確認しなくても一目瞭然で私は不合格、Mが合格したのだ。

こういう結果になるのは、自然の摂理だが、だからこそ一人で向かいたかったのだ。

Mだって落ち込んだ私を見るだけでなく、1時間も同じ電車の隣で揺られないといけないわけだ。

こんなに空気の悪い状況はない。

 Mの第一志望は、公立難関校で、そこが合格したので、都内の私立にはいっていない。

どこでもあることだが、自分の第一志望は、別の人からすれば第二、第三希望で、第一希望の自分は落ちたけど、第三希望にしていた受験生が受かったけど行かない時、そのポストを喉から手が出る程欲しい。

何とも残酷な現実だ。

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