緊張を乗り切るためのパワーワード
「緊張しい」になった
5年ほど前に入院してから、すっかり弱気になって、何事にも緊張するようになっていた。
まず、出かけるのも緊張するし、電話なども緊張する。レストランの予約でさえも緊張するのだ。
それからパスワード入力。
忘れていたらどうしようと思うと、居ても立ってもいられない。
1人でご飯を食べに行くのも、ちょっと周りの目が気になる。緊張する。
職業訓練校でプレゼンの真似事をした時なんか、ほとんど日本語すら忘れてしまっていた。
果てはコンビニプリントすら緊張の対象で、この先どうなるのかと途方に暮れたものだ。
ところが。
先日、ある大学の公開講義の予約をして、大学の事務所に電話確認をした時、全く緊張していないことに後から気がついて驚いた。
ああ、私、普通じゃん…と。
なぜかと考えてみれば、昨年住んでいる住居をリフォームして、そのために2度の引越し、膨大な数の業者との打ち合わせ、ショールーム見学、友人を呼んでお披露目…などなどを経験したからだと思われる。
満足のいく結果になって、きっと自信がついたのだろう。
つまりは「慣れ」である。
パワーワードを思い出す
なぜ緊張するかといえば、悪い未来を勝手に想像しているからである。
レストランが予約できていなくて、同行者と途方に暮れる未来。
パスワードがまちがっていて、ATMが長蛇の列になる未来。
…書いてみると、馬鹿らしいのである。
途方に暮れていないで新しい店を探せ。
長蛇の列で何が悪い。パスワードなんて本人確認すればどうにかなるだろ。
そうして、若い頃キーワードとして心掛けていたある言葉を思い出した。それは、
「死にゃしねえ」
このワードを思い浮かべれば、不思議な勇気が湧いてきたものだ。
それで私は知らん人にも話しかけられたし、経験のない世界にも飛び込んだりできていたのだ。
つまりは「死ぬこと以外かすり傷」みたいな意味なんだけど、
そのくらい強気にならないとやってられない時もある。
多少の迷惑、お互い様でしょ。
みんな何かしら抱えて、どっこい生きてんのよ。
緊張しまくっていた頃
ある私のお気に入りの文筆家が、
「8000字の文章は鼻歌を歌いながら書けるけど、ドコモショップを予約するのすら冷や汗をかく」
と言っているのを聞いたのだった。
それで、
「ああ、きっと私も彼と同類で、他の人には簡単に思えることができない代わりに、文章の才能を与えられているんだわ…」
などと勝手な妄想を抱いていたのだが。
どうやら私と彼は違うらしい。
本当は「普通の人」なんていない。
支障なく人並みの生活ができることは当たり前ではない。
今日も1日を大切に、一生懸命。