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ゲームレビュー #8   NieR:Automata Game of the YoRHa Edition/PS4

#8  NieR:Automata Game of the YoRHa Edition/PS4
プレイ環境:PS4(純正コントローラー)


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遠い未来。
突如侵略してきた異星人。
そして、彼らが繰り出す兵器「機械生命体」。

圧倒的戦力の前に、人類は地上を追われ月へと逃げ延びていた。
地球を奪還する為に人類側はアンドロイド兵士による抵抗軍を組織。
さらに膠着した戦況を打破する為、
新型アンドロイドである戦闘用歩兵「ヨルハ」部隊を投入する。

人のいない不毛の地で繰り広げられる
機械兵器とアンドロイドの熾烈な戦い。
やがてそれは 知られざる真実の扉を開けてしまう事となる……。



ということで、以前から気になってたゲーム『ニーアオートマタ』。
セールを機に購入し、30時間以上かかってようやくクリアしたので早速レビューを書きたい。ネタバレ満載なので未プレイの方はご注意。



・ストーリー

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メインストーリーはひたすらに鬱で精神的に苦しい展開が続くが、
・「物語前半でプレイヤーに感情移入させておいて中盤からは破滅に向かい続ける『9S』」、
・「『2B』の面影があり、『パスカル』やレジスタンスを通じて少しずつ心変わりし、『9S』を救済に導くのでは?と思わせる『A2』」、
・「何となく良い方向へ話の結末を誘導するように見える狂言回しをする『9S』と『A2』のポッド」
この3つの要素が絡み合い、「この物語の結末は一体どうなるのか」という気持ちを引き出させるのが上手い。

ただストーリー自体に目新しいものは正直なところあまりない。
1時間もプレイすれば「ヨルハ部隊ってなんかヤバくね?裏があるっぽくね?」と匂わせてくるし、衝撃の展開!とかそういうものが基本的に鬱な方向にしかなく、どこまで突き詰めてもストーリー中のモヤモヤが晴れた気持ちよさというものは味わえない。

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またこのゲームのストーリーは3部構成になっており、1部目の『2B』で進めたのと同じ物語を、2部目は『9S』でもう一度辿るというのが率直に言ってダルい。
もちろん2部をプレイすることで明らかになる物語も多々あるのだけど、
このゲームでは過去に起こった重要な事件や記録をサウンドノベルのような文章を読むだけで終わりにしてしまっているので、それが許されるなら2部もそれでいいのでは?という気持ち。

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こうなったら年表だ!みたいな雑さを感じる。


・キャラクター

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“黒のワンピース・白のレオタード・目隠し・銀髪・太刀・大太刀・アンドロイド”と属性の過積載にも程がある『2B』は非常にキャッチーで、もうこのキャラを操作できるだけで名作認定したいというほど完璧なキャラデザだと個人的には感じる。
それに対して『9S』はその見た目に加えて「敵をハッキングして内部から破壊する」みたいな戦い方も相まって如何せん地味。
『A2』に至ってはハイレグの『2B』である。

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その主要3キャラの中で一番パンチの効いたデザインの『2B』がゲーム中で一番操作できる時間が短いというのは、ハッキリ言ってこのゲームで最大のマイナスポイントである。

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しかも中盤の『2B』は決戦仕様と称して衣装が変わる始末。いい加減にしてほしい。

また敵キャラクターのバリエーションが少ないのも難点。
厳密に言えばバリエーションは豊富だがすべて基本ベースの機械生命体からの派生なので見た目が似通ってしまっているということ。

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『ドラゴンクエスト』で例えたらボス以外はスライム系統のモンスターしか出ないようなもの。スライムナイトやキングスライムはスライムではないがスライムなのだ。

・グラフィック

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グラフィックは素晴らしいもので、寂れた鉄工所、砂漠に埋もれた団地や、自然に侵食されたショッピングモールなど、その手のフェチにはたまらないものが多い。
フィールドは一見すると広いが通れそうなのに通れなかったりする行き止まりが多く、見た目よりもずっと狭い。
とは言え移動手段が転送以外は徒歩しかないので、歩くには広く微妙に道がわかりづらいフィールドをひたすら走るハメになる。
せめて飛行ユニットが移動手段として使えればよかったのだが。


・BGM

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これはもう文句なしに最高に素晴らしい。
終始流れているどこか寂しげな、ともすれば破滅的なBGMはフィールドのグラフィックと抜群に合っているし、ボス戦の高揚感もとてもいい。
唯一アレなのはせっかくのエンディングがSTGのせいでトラウマになるところぐらい(後述)。


・戦闘

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武器の種類は剣から槍、拳など様々あるが、攻撃モーションを見てる暇がないので面白みがない。
というのも基本的に敵からの一発のダメージが大きいので、ポッドでの遠距離攻撃でハメるか、攻撃ボタンと緊急回避ボタンを同時に連打して敵の攻撃を回避しながら殴りまくるというもの以外に選択肢が無い。
なので超高速で攻撃と回避を繰り返すだけで何をやってるのかよくわからない。
また度々視点が変わって望遠になったり真上から見下ろした形になったりと、ますます何をやっているかわからなくなる。

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正直攻撃モーションはよく見れば凝っており、武器の見た目も個性的なので、これは本当にもったいないところ。
無双ゲーか?というほど大量に敵が湧くが、わりと頻繁に処理落ちする。
さらにザコ敵もやたら固いので、ハイスピードスタイリッシュアクションに対して爽快感という点では物足りなさを感じてしまう。


・STG

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このゲームにおける、ある意味で最強の敵がこのSTGである。
飛行ユニットによるシューティング面がかなり頻回に組み込まれるが、ぶっちゃけこれが大して難しくも無いのが余計に作業感を煽ってきて非常に面倒くさい。

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魂斗羅 アニバーサリーコレクション_20211015221255

明らかにSFCの『魂斗羅スピリッツ』のオマージュが出て来たのはちょっと面白かったが。


また『9S』による特殊能力や、特定のイベントにおいて発生するハッキングは弾幕シューティングとパズルを合体させたようなものをやることになるが、これは結構難易度が高いものもあり、やりごたえはある。それはそれでアクションゲームがやりてえんだ!という層には不評だろうが。

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極め付きが最後の最後、エンディングのスタッフロールの文字が敵になり、それを破壊するシューティング。
これが異常なほど長い上に難しく、なぜ最後にこんな思いをしなければならないのかという気持ちになる。

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一応これは何度か死ぬことによって自機が無敵になるという救済があるが、その後すべてのイベントを見終わると
「これからこのイベントをやる他のプレイヤーがこの自機無敵救済措置を使えるようになるためには、お前のセーブデータをすべて消し、そのデータをネット上にアップする必要があるが、その覚悟があるか?」
というとんでもない選択肢が現れる。
ゲーム機のネットワーク機能をこのように使うのは非常に斬新で面白い試みではあると思うが、それにしたって、である。
なお自分はデータを消すことはできなかった。ごめんて。


・総括

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率直に言えば“万人受けする高級食材を使ったが料理の方法が個性的過ぎる”という感じ。
ストーリーや選択肢の鬱要素自体は個人の好みの問題なので置いておくとしても、移動できるフィールドの狭さや視点の見づらさ、戦闘のダルさなど、本来なら楽しめる要素がストレス要因になってしまっているのが勿体ないと感じた。

そしてこれはあくまでも個人の感想だが、このゲームは古き良きゲームなのだと思う。
色々と不自由だったりやりづらかったりすること自体がこのゲームの個性であり、個性とは必ずしも好かれるものでは無いということ。
名作と言われている大作やレトロゲームだって思い返せば「…あれ?」となる部分はあったりするが、それも含めて全体として見て楽しめるかどうか。
だから個人的には、不満点があるのも他人に強く勧めるのが憚れるのも事実だが、このゲームの退廃的な雰囲気や、魅力的な『2B』を操作できるというだけで「良ゲー」と言いたくなるのもまた事実なのだ。

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だから、ゲームは面白い。

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