岐路に立つ人
何となく「人の移動」の時期ですかね。
お客さんと話していると、そんな気がします。
考えてみると、新卒で社会人になった方も、早3ヶ月が過ぎました。
俗にいう「3週間もてば3ヶ月もつ。3ヶ月もてば3年もつ。3年もてば・・・」
てな頃合いかもしれない。
もっとも、最近は3日で見切りをつける方もおられるのかもしれないが(苦笑。
まあ、いずれにせよ、人生の節目の決断は、どなたにも訪れる事かと思う。
かくいう僕も、ドロップアウト組なので、心境はよくわかる。
正味3年と10ヶ月くらいだったかな。
もう勤め人には向いていないのは充分わかったので、「どこかで飲み屋でもやりたいなあ。とりあえず店で働いてノウハウを勉強したいなあ。」と考えていた。
実際、修行をするなら「ここ」という場所は決めてあった。
かねてより、何度か伺っていた、新宿にあった某ジャズバーである。
初めて入った時から、「この店、格好良いなあ」とは思っていたのだが、
いざ働くとなると、どこにも求人募集など見当たらない。
人は足りているようだった。
ところが、だ。
そんなことは、お構いなしに、気付くと勝手にこちらから電話をしていた。
給与も待遇も、何も聞かない。
ただ「働きたいのですが・・・。」だけ。
いわゆる「飛び込み」というやつだ。
今なら考えられないことなんじゃないだろうか。
時代のせいもあったのかもしれない。
単純に若かったのかな(笑。
いずれにせよ、まだそんなアバウトな世の中だったように思う。
電話をしてみると、
マスターではなく、そこで働いている従業員の方が出られた。
こちらの要望をお伝えすると、
「とりあえず店に来て。」
と、マスターに取り次いでくれた。
後日行くと、マスターがおられて、面会をしてくれた。
「今、人は募集してないんだよね。週1とか2とかならいいけど。稼げないよ?」
という話だった。
こちらもそんなにすんなり行くとは思っていない。
何ならどこかと掛け持ちすればいい。
とにかく、今は少しでもここの雰囲気を吸収したい。
そんな気持ちで「是非お願いします!!」と答えた。
ちなみに、この、間を取り次いでくれた従業員の方。
仮に「福岡さん」としておくが、彼には、実のところ非常に感謝をしている。
人には、その後、それほど深い関係になる訳ではないけれど、人生の節目で、たまたまそこに居合わせて、少なからずその後に影響を与えたという人がいると思う。
(北海道で僕を拾ってくれたニンジン工場の専務とか(笑 )
こちらが人生の岐路に立った時、そこに立っていた人。
「彼がいなかったら、店をやっていなかった」とまでは言わないが、
今とは随分雰囲気の違う店になっていたことは間違いないと思う。
「いやあ。電話の話し方がちゃんとしてたから、取り次いだだけだよ〜。」
とは言ってくれているが、
折に触れて、感謝の念をお伝えしている。
さて、
お陰で、念願の店に上手く潜り込んだ僕であるが、ある日マスターから呼ばれて、
「吉田君、今よりもう少しシフトに入れるかな。わりとフルで。」
と申し出られる。
「もちろん!!ですけど、どうして??」
「いや、福岡君が辞めるんだって。」
「・・・。」
あ、そういう事ね。
神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。
ん??どっちが岐路に立ってたんだ??
お待ちしております。
You / C Y G N
Chillhop Publishing
2023
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
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