ウクライナ戦争の今後の予想(2023年4月時点)

 ロシアがウクライナに侵攻して1年が経過し、そしてまだ終わりは見えない状況だが、この先どうなるかの筆者的な予想。

 とはいえ、結論は以前の記事と同様。これは単にロシア対ウクライナの戦争ではなく、地球規模の新しい冷戦であり、今回は日本もその矢面に立たねばならず、さし当たり日本がやらなければならないのは日米同盟の堅持と原子力発電の推進だ、という話。および、普通程度に賢く立ち回る限り日本の平和は守られるのであり、応分の負担は必要になるし、それは快いものでは無いが、しかしたいして心配することも無い、という話。


 それでだが、物事には勘所というものがある。今回のロシア対ウクライナの戦争だが、注目すべきはロシア軍の過小さだと、筆者的には思う。

 つまり、そんな少ない戦力でウクライナ軍を撃滅するのは不可能。

 そこからして、ロシア側の意図も明白だと思う。それは、ウクライナの東部と南部を占領し、およびウクライナのNATO加盟を阻止することだけだ。ウクライナ全土を支配しようなど、さらさら考えてはいない。あるいは当初はプランAとして考えていたかもしれないが、今では。


 ということはつまり、今後の戦争はウクライナ東部と南部での持久戦となる。
 ロシア視点では、ウクライナの東部と南部を占領し、ウクライナ各地に思い出したようにミサイルでも撃ち込みつつ、ウクライナの戦意がつきるのを待つ、という展開。

 そのような展開だと、ロシア軍の過小さはむしろ有利になる。要するにロシアの国力への負担も少ないからだ。ロシアに対する経済制裁が奏功していないこと、ロシア国民の支持が高いこと、などと合わせて考えれば、ロシアはこの先の持久戦を戦い抜けるだろう。

 そして、それをウクライナがひっくり返すことは、たぶん、難しい。
 言うまでも無く、ウクライナが独力でそうすることは不可能で、それは諸国がどれだけウクライナを支援するかによる。しかし、おそらくそこまでの支援は行われない。


 以上、だからこの戦争は、一応、ロシアの勝利で終わる、というのが筆者的な読みだ。

 そしてたぶん、ロシア、というかプーチン大統領は、既に戦後を考え始めている。戦争はいずれ終わらせなければならないのは当たり前であり、それをより有利なものにしたいと考えるのも当たり前。
 だから、ロシアの核兵器使用、あるいはさらなる戦火の拡大を危惧する声もあるが、それは↑の観点からして決定的にマイナスなので絶対に無い。


 そして、持久戦を戦わなければならないロシアにとって、最も重要なのは国力の維持だ。2023年3月にプーチン大統領と習近平国家主席の会談が行われたが、恐らくその重点は、軍事協力ではなく経済協力だったはずだ。
 中華人民共和国にとっては、米ロの間を小狡く立ち回り、自らの利益を上げることが目的だろう。軍事面で、うかつにロシアに与するような浅はかなまねは、おそらく、しない。


 そしてこの戦争の結末は、おそらく第二の朝鮮戦争だ。いずれ休戦は成立するが、法的な戦争状態は永く続くという、そういう状態。

 そしてそれは、全世界での新しい形態の冷たい戦争の始まりでもある。今回は日本もその矢面に立つことになるが、悲観することはない。賢く立ち回る限り、ただしそれは必要な時にはあらゆる悪を行うマキャベリズム的な賢さだが、そうする限り冷たい戦争が熱い戦争になることはない。また、それも永くは続かない。この世は全て移ろいゆく。前回の冷戦とは状況が異なるが、せいぜい数十年だ。


 では、そのような状況で日本はどうすべきかというと、まず出来る範囲で軍拡はする必要がある。ただしそれは冷戦を戦い抜くためであり、熱い戦争を防止するための政治的な見せ駒に相当する。
 トマホーク巡航ミサイルの導入や、石垣島への自衛隊の配備など、まさしくそう。筆者的にはたいして役に立つとは思えないのだが、そのようなポーズを見せることには政治的効果は期待でき、戦争防止に役立つと考えられる。

 そして最も重要なのは、日米同盟の堅持だ。日本はロシア・中華人民共和国・北朝鮮と対峙しなければならず、しかしそれらはいずれも核保有国。日本が自前の核兵器を持たないのなら、アメリカの核の傘に頼るほか無い。(アメリカは日本を守るのか?というこれまた七面倒くさい議論もあるが、これまた以前説明したように『守る』が理論的な帰結)。

 そしてそれは、ロシアや北朝鮮とはともかく、中華人民共和国とはいわゆる『政冷経熱』な関係を続けることになる。この辺りが前回の冷戦とは全く違う。

 また、世界的なエネルギー危機あるいは食糧危機の恐れがあり、日本は原発の再稼働は比較的簡単にできるので、これは出来るだけ早く進める必要がある。
 ドイツは原発を全廃したようだが、ドイツは国内に石炭がある。およびドイツの近隣のフランスは原発大国で、ドイツはそれも当てに出来る。日本とは国情が全く違う。


 そして実のところ、日本が本当に行うべきは、戦争そのものを十分理解することだ。

 そもそもの話、物事は目先のことだけ見ていてはいけない。高所から全体像を達観する必要もあるし、深く事態の本質を洞察する必要もあるし、先々を予見する必要もある。

 ところが先の大戦頃の日本は、それらを完全に見失っていた。だから、船頭多くして船山に上るで右往左往の迷走状態に陥り、やるべきで無い戦争に自らのめり込んでいった。軍部や政府だけでなく国民皆がね。
 そして終いには、そもそも何のために戦争しているのか?という分別も失い、そもそも戦争とは何なのか?という常識は最初から無く、死んでも戦争に勝たなければならないと思い込むヒステリー状態に陥り、ついには全国民特攻というキチ○イ沙汰となっていく。


 もちろんそのような誤りを繰り返してはならないわけだが、そのために必要なのは「戦争反対」とか「憲法守れ」とかの平和ヒステリーに陥ることでは無い。これまた以前も記したことだが、それは上記の観点からは『上辺の皮一枚だけ平和主義に偏向した軍国主義』に他ならない。

 本当に必要なのは「そもそも戦争とは何なのか?」という分別と常識だ。そしてそれは、昨今の国際情勢を理解するためにも不可欠。


 戦争を防止したいなら、大体の場合、それはたいして難しくない。(残念ながら全ての場合では無いし、始まった戦争を終わらせるのは至難の業なのだが)。

 けれどもそのためには戦争そのものを十分理解する必要がある。そして戦争防止のために実行すべき方策は、しばしば「素晴らしい憲法第九条」な主張とは真逆なものとなる。

 例えば現在、フィンランドがNATO入りを果たし、デンマークのような小国も軍備に注力しているが、それって戦争するためじゃ無いよね? 戦争を防止するためだよね? という話。

 とどのつまり、国家は合法的な暴力団に他ならない。そして平和とは、警察も裁判所も存在しない世界での、そのような暴力団どうしの手打ちに他ならない。それがこの世の現実だ。

 そして繰り返すが、大体の場合それはたいして難しくない。なのだが、そこをしくじってしまうから、戦争が始まってしまう。筆者的な意見だけどね。

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