ウクライナの戦争(2)「美しい国日本、美しい国ロシア」

 その昔、日露戦争を描いた映画・ドラマ『二百三高地』が、さだまさし歌唱の主題歌『防人の歌』と共に大ヒットした。
 その登場人物の一人が小学校の教員なのだが、彼は出征する際、黒板にこう書き残していった。

「美しい国日本
 美しい国ロシア」

 その意図するところは説明不要だろう。
 しかし彼の思いは理解されなかった。やがて戦闘は激化し、多数の将兵が戦場で倒れ、人の情として当たり前だが、それと共に銃後の人々もロシアを憎悪し始め、黒板のその文字も消されてしまい、そして彼の恋人は……
 という、その顛末は映画で確かめて欲しいが、これも印象的なシーンだった。


 そして西暦2022年現在、ロシアはウクライナに侵攻している。それによって日本でも、心情的にウクライナを応援し、ロシアに反感や嫌悪感を抱く人が少なくないように見受けられる。

 しかしそれは正しくない。たとえ国家としてのロシアあるいはロシア軍が犯罪行為を行ったとしても、一般のロシア人には何の罪も無いのだ。一般のロシア軍将兵にも。

 物事はすべて「それはそれ、これはこれ」だ。

 筆者自身は、ロシアには何の嫌悪も反感も無い。もちろん、それはウクライナに対しても同様。色々難しいにしろ、それぞれの友好関係が回復する日を心底願っている。両国のみならず、全世界で。


 そして、たぶん、ひとつ付け加えておくべき事がある。つまり、日本と帝政ロシアが日露戦争を戦ったのは、歴史上の事実だ。しかしその後、両国は日露協約を結び、蜜月状態になっていく。ロシア革命が起きなければ、あるいは同盟国になっていたかもしれないほど親密な。

 すなわち「昨日の敵は今日の友」。それがこの世の習いであり、そういうマキャベリズムは決して忘れるべきでは無い。


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