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4歳の息子が突然、ポロポロと泣き出して。

はじめて見る泣き方だった。

夜、いつものように「トイレに行こうね」と言うと息子はうつむいた。
ポロポロと涙を流しながら、ゆっくりと幼稚園のことを打ち明けてくれた。


お昼になると、トイレの時間があって、

ひまわり組のみんなで、一斉にトイレに行く。

男の子はみんな、立っておしっこをするんだ。

でも、僕は、座らないとできない。

僕がおしっこをし終わって、トイレから出るときには、もう誰もいない。

代わりに違う組のお兄さんがたくさん走って来る。

こわい。トイレの時間がこわい。

息子が涙を「一粒ずつ」こぼすのを、はじめて見た。
こっちまで泣きそうになった。
なんて切実な悩みなんだろう。

大人にとっては、ささいな悩み事のように感じられる。
でも4歳児にとっては、自分を揺るがしてしまうほどの、大きな大きな悩み。

「そっか。話してくれてありがとう。」

ここでどう答えるかが息子の今後を左右するかもしれないと、直感的に分かった。

「じゃあ立ってやってみたら良いんじゃない?」
「ゆっくり自分のペースで良いんだよ」
「先生に相談してみたら?」

全部ダメだ。

自分で抱え込むよりも両親に相談した方が良い」と感じてもらいたい。
今後も、困ったことは相談してほしい。

だから。

「そういえば、家でもいつも座っておしっこしてるよね」

うなずく息子。

「それって、何か理由がある?」

黙り込む。
なんとなく理由の心当たりはあった。
息子がいま黙っているのも、何故なのか分かる。

「もしかしたらだけど、立ってしたら、失敗しちゃったことがあるんじゃない?」

うなずく。
新しい涙がまたこぼれる。

「わかる!難しいよね。お父さんも失敗することあるから。」

子どもの顔が上がる。

「でも相談してもらって良かったよ。失敗しない方法があるからね!」

「ほんと?」小さい声だ。

男の子のおしっこが変な方向に飛んでしまうのは、この皮に当たってしまうからなんだ。
こうやって皮をちょっとだけ、どけてあげれば、まっすぐ飛ぶよ。
でも約束してほしいのは、汚い手で触らないことと、先端を触らないこと。

「いま、家のトイレで試してみる?」
「うん、やってみる」

涙はもう出ていない。

上手にトイレをして、寝る前に、息子が「ありがとね」と。
「ちゃんと相談してくれたからだよ」
「相談してもらえなかったら、何もできなかったかも」
「これからも本当に困ったことがあったら、お父さんやお母さんに相談してね」



子どもの悩みが本人にとってどれほどつらいことなのかは、親には本当の意味では分かってあげられないですよね。
でもだからこそ、「親に打ち明けられた悩みはすべて、子どもにとっての大きな悩みである」と考えて接するべきだと思いました。

アメリカの発達心理学者であるエリク・エリクソンは、
愛情的承認をもって接することで、子どもに基本的信頼感が芽生える
と述べています。

つまり、親が子どもの悩みに対して、心から解決してあげたい、力になってあげたいと考えて接することにより、
子どもは「自分が困っていると世界が助けてくれるのだ」という、「世界に対する信頼感」が芽生えていくのです。
この「基本的信頼感」は、子どもが将来、つらいことに直面したときに耐える力となり、他者に対して自分の心を開くための助けにもなるとしています。

子育ては難しく、子どもへの接し方も分からないことだらけです。
しかし今回、「子どもの悩みを過小に扱わない」ことだけは絶対にブレないようにしようと決意を新たにしました。

明日のトイレが上手くいきますように。

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