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アルモンデ食材 "卵"

開くのに、ほんの少しばかり"力"の要る密閉されたその空間。
入り口の扉を引くと、その子は大抵いつもそこにいてくれる。

深い窪みにちょこんと腰を据えて、
"すっく"と背筋を伸ばし、
2列に整列している。

居てくれたら、安心。
居てくれないと少し……いえ…ずいぶんと不安。

1日に1度は勝手に視界の隅をかすめて来て、そこに居てくれるのが"当然"のような存在。……そう、
思い込んでいたのに……。

ときどき知らぬ間に、突然消えて無くなってしまっていて……慌てる。

『大切に温存しておいたはずの
最後の"あの子"を連れ去ったのは、
一体ダレ?』

多くの人に親しまれ、頼りにもされて、
常に"引く手あまた"の存在なのだから、たまに知らぬ間に、そんな物騒な"事件"に巻き込まれていたって不思議ではない。

"あの子"がそんな事件に巻き込まれがちなのは、その類い稀な柔軟性にあるのだと思う。

"ぐるぐる"と勢いよくかき混ぜて、
"泡状"にすることも、熱を加えて固形状に"固める"ことも、なんなら使い勝手に合わせて、初めから"色ごと"に"分離"させることだって簡単に出来てしまう。

焼こうと、茹でようと、混ぜ込もうとも、もちろんそのままであったって、素直に対応してくれる。

"内気"で"引っ込み思案"になる
なんてこともないのだから、
他の種類のものたちとも"すんなり"と打ち解けて、調和してくれる。

"あの子"はまさに、絵に描いたような愛されキャラクタの持ち主。

甘くされようが、塩っぱくされようが、
"喧嘩"や"仲間外れ"あるいは"癇癪"を起こす心配なんてない。

地球上の、様様な国の食文化にさえ受け入れられている"あの子"の存在を知らぬ者など居ないはず。


……

そんな順応性と社交性を兼ね備えた、
本日の"アルモンデ食材"の主役は

『 卵 』
Egg / Oeuf

その表面の質感は"画用紙"のようであり、"漆喰の壁"のようでもある。

決して滑らかでない
"カサカサ""ざらざら"と乾いた手触りのそれは、大抵は"真っ白"な恰好をしているけれど、時には
"コーヒー牛乳"のような濃い色をしていたり、或いはそれらの中間の
"ミルクティー"っぽい色味だったりもする。
最近知ったことなのだが、ほんのり青味がかった"薄水色"なんていう珍しいのも居るらしい……。

形も、ほんの少し細長かったり、
"ずんぐり"と丸っこかったりして、
そのサイズも"SS"から"LL"まで6種類もあるらしい。
それで、たまに各々が違った種類に見えたりもするけれど、"ひと殻"剥けば
その中身は同じ"仲間"。

もちろんそれぞれがその中身にも、
"味"や"色味"に良い意味での
"個性"は持っていたりもするけれど。『卵』であることに違いない。

あぁ、たまには"双子"なんてのもいる。
あれに当たると気分が上がる。

その個性を受け止め、見極めて、
上手く引き立ててあげるのは、
"人間の方の役目"。

いちばん簡単なのは、"目玉焼き?"
それとも"スクランブルエッグ?"

忙しい朝ならそれもありだけど、
休日のブランチに調理するなら、
もう少しだけ手を掛けてあげたい。

本当は"オムレツ"にしたいところだけれど、残念ながら今、アルモンデ食堂にある卵は1つだけ。
それだとオムレツにするには少しばかり心許ない。
"プルンッフワンッ…トロンッ"
に仕上げるならもう1個は欲しいところ。

卵白をメレンゲ状にして、フランスの
"モンサンミシェル"の旅で食べた
"スフレオムレット"風に仕上げて、
ボリュームを出すのも有りだけど、
そのボリュームは残念ながら見た目だけ。シュワシュワ……と直ぐに消えて食べ応えには欠けてしまう。

休日の、朝食と昼食を兼ねたブランチに使うのならば、もう少しのボリュームが欲しいところ。


あゝ!!
うっかりと忘れてしまうところだったけれど、次の日曜日は"Easter"(イースター)

……だったら、今日はこの卵をつかってイースターを祝うお菓子を作ろう。

そこでわたしは、卵型の焼き型で
"マドレーヌ"を焼いてイースターっぽくデコレーションをして週末のイースターを祝うことにした。



……

"Easter eggs"
『 マドレーヌ 』


-材料- 
(小さな卵型45㍉×35㍉で約12個分/普通サイズのマドレーヌ型なら約6個分/レモン型なら3〜4個分)


・薄力粉 50㌘
・ベーキングパウダー 小さじ1/3
*アルミニウムフリー製品をお薦めします

・全卵 1個
・砂糖 (グラニュー糖) 40㌘
・はちみつ 大さじ1
・バター (食塩不使用) 50㌘

(お好みで)
・ラム酒 小さじ2程度
(焼き型に塗る用)
・バター 又はオイルスプレー 適量

……

(Easter eggs decoration 用)
・アーモンドスライス 適量
・チョコレート 適量
・生クリーム 又は 牛乳 適量

・Easter仕様にアーモンドスライスで飾る場合は、アーモンドを150℃のオーブンで美しい焼き色が付くまでローストして荒く砕いておく。

……
『 基本のマドレーヌ 』

[下準備]
・Aの材料は合わせてふるっておく。
・型にバター (分量外)を塗って冷蔵庫で冷やしておく。
・バターは湯煎、又はレンジで溶かしておく。
*レンジ使用の際は爆発注意!
溶けた後もその状態をキープ。

……
-作り方-


ボウルに全卵と砂糖、はちみつを入れて泡立て器で砂糖が溶けるように、よくすり混ぜる。

*ラム酒を加える場合はここで入れて混ぜてください。
香りがとても良く、大人な仕上がりになるのでお薦めします。


ふるっておいたAを加え、粉気が無くなるまで混ぜてから、
溶かしバターを3回に分けて入れて、その都度さっと混ぜ合わせる。

*ここまでの行程では混ぜすぎないこと。膨らみが悪くなります。
粉を入れたら粉気が無くなるまで、最後のバターを入れたら、馴染んでツヤが出るくらいまでが目安です。


ボウルにラップを掛けて、冷蔵庫で最低でも1時間以上は休ませてください。


オーブンを180℃に予熱を始める。


冷蔵庫から取り出した生地を、全体が均一になるようにゴムベラで一旦混ぜてから、絞り袋に入れて、冷やしておいた焼き型に絞り出す。または、
これくらいの少量ならばスプーンで掬って型においていく方が早いです。

*生地を入れるのは型の7分目くらいまで。
膨らむので入れ過ぎに注意!


予熱が済んだオーブンに入れて15分ほど焼く。マドレーヌのお腹がプクッと膨れて、いい焼き色がつくまで焼く。気になるようなら厚みのある部分を串で刺して生の生地が付かないか確認して下さい。

*この焼き時間は普通のマドレーヌ型を目安にしているので、それより小さな卵型や大きなレモン型などで焼く場合は、焼き時間を3〜4分プラスマイナスして様子を見て下さい。


型から外して網の上で冷まして完成です。
焼き立ても表面がサクサクとしていて美味しいです。
これは、手作りでなければ味わえない美味しさでもあります。
是非一度、やけどに気をつけてお試しください下さいね。


Bon appétit!
どうぞ、召し上がれ。


……
-Easter eggs decoration -



デコレーションは、マドレーヌの熱がきちんと取れてから始めて下さい。


チョコレートを小さな容器に割り入れ、湯煎で溶かす。硬過ぎるようなら様子を見て極々少量の温めた牛乳か生クリームでのばす。
緩くなりすぎると冷やしてもしっかり固まらなくなるので注意!


溶けたチョコレートにマドレーヌをくぐらせる。
*やけどに注意!


チョコレートが固まる前に、砕いておいたアーモンドスライスをまぶしてから冷蔵庫で固まるまで冷やす。

ー Points ! ー
*スライスアーモンドが無くてもチョコレートだけでも美味しいです。

*カラフルなチョコレートを使って、
よりEaster egg ぽく仕上げても。

*細かく砕いたピスタチオや、ココナッツファインなどをまぶしても……。

*生地におろしたレモンの皮(1/4個分)など柑橘類の皮を入れて焼くのもおすすめです。
その場合は、白いワタの部分までおろさないよう注意!苦みの原因になります。

*その日の気分で生地に牛乳(大さじ1)加えることも。無しも好きなので、気分で変えています。こちらもおすすめです。お好みで試してみて下さい。



Bonne Pâques !
楽しいイースターを!

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