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デザイナーとして30年、フリーランスとして約20年。いつも気をつけていること

デザイナーとして、僕の仕事(デザイン)への対価としてお金を得るようになって30年が経ちます。最初はグラフィックデザイナーとして給料という形で報酬を得ていました。それが約10年。その後、フリーランスとなり、個人事務所を立ち上げ、デザインもしながら営業的なことも事務的なこともすべて自分でするようになって約20年になります。最近は、フリーランスの若いデザイナーや独立開業をした方によく聞かれる事柄があります。僕がフリーランスになって紆余曲折ある中で気をつけていると言うか、心掛けて居ることでなど、少しまとめてみたいと思います。参考になれば幸いです。



どうやって仕事を取っているのか?

これは、本当によく聞かれます。僕の場合、企業と契約して仕事をするということは少なく、ひとつの案件ごとに単発の仕事として依頼されることがほとんどです。ひとつの案件をする中で関連した次の案件、もう少し発展した大きなプロジェクトなどをすることになり、気づけば数年間に渡って同じクライアントに関わることもあります。一週間で納品して終わる事もあれば、一番長いお付き合いのクライアントは、かれこれ25年もお世話になっているところもあります。これらのご依頼は95%くらいがご紹介によるものです。

ひとつの案件を進める中で、デザインはもとよりその仕事の進め方やブレーンの仕事の良さに満足していただき、結果的にまた次の仕事につながるということが多い気がします。僕の事務所には一応 WEBサイトもあり、そこにはコンタクトページもあるのですが、そこからの相談・依頼があるにはあるのですが、成立する確率はあまり高くありません。その理由は色々ありますが、相談者(依頼者)の心づもりとこちらの覚悟が釣り合わないからだと考えています。

相談者にも色んな事情があり、たくさんのデザイナーに相談して多くのデザイン案から選びたいと考える方もいれば、WEBを細かなところまで読み込み、過去の仕事を見て僕にデザインして欲しいという方もいらっしゃいます。できれば僕のデザインを知り、その考え方なんかも理解して僕に頼みたいという方と仕事がしたいと思います。

そんなことから、どのようなことであれ相談があった時には、条件をつけるというかお願いすることがいくつかあります。

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1. 相談・依頼の大小、提案の採用不採用に関わらず提案料をいただく
2. 必ず会って話を聞いて、依頼を受けるかどうか決める(話を聞いてからお断りする場合もある)ということをご了承いただく
3. 相談内容を検討し、必要なスケジュールと予算を提示し、双方が納得してから仕事を始める
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以上をお伝えします。

上記の事柄は、フリーランスになると「お試しプレゼン」や「とりあえず提案して欲しい」など、都合よく使われるというか、タダでデザインをさせられることを防ぐということもありますが、やはり安くないデザイン料をいただく限りは真剣に仕事に取り組みたいし、相談者にもいい加減な気持ちでデザインを発注して欲しくないからです。
最初の頃は、こういう条件をつけると仕事が来ないのではないかと考えて躊躇したものですが、長年の経験からこれらの条件をつけても依頼してくれる方は、厳しい反面しっかりと考え、覚悟やビジョンを持ち、こちらの提案にも真剣に向き合ってくれるところが多い気がします。そして双方の考えや気持ちが上手くリンクして、結果的に良い仕事ができる環境になっていき、長く関係が続いていくように思います。

僕はクライアントとデザイナーの立場は同じと考えています。仕事を出す側と受ける側、お金を支払う側と受け取る側ではありますが、クライントが持っていないデザイン力や企画力、また別のネットワークを提供することがデザイナーの仕事で、例えば結果的な印刷物に値段をつけてモノを売っている訳ではありません。ノウハウだけを売っている訳でもありません。そのことをデザイナー自信がちゃんと理解し、それをクライアントに伝えることができれば必然的に仕事は上手くいき、次の仕事につながるはずだと思います。


仕事の結果が次の仕事を生む

デザイナーは結果がすべてと考えています。いくら素晴らしいコンセプトがあっても、美しいビジュアルがあっても、それが届かなければ、また響かなければ意味はないと思います。例えば、ひとつの広告を制作したとして、デザインが自分の提案や意図を取り入れられずに不本意なものなることがあります。「本当はこうなるはずだった」「クライアントが分かってくれなくてこんな結果になった」「予算がなくてこの程度のビジュアルしか作れなかった」などと、つい言い訳をしたくなります。でも成果物となったそのデザインにそれらの「言い訳」を記す訳にもいかず、その広告を見る人ひとりずつに説明して回ることもできません。デザイナーは、ただデザインをするだけでなく、常に変わる状況を読み、それらに対応しながらベストの結果を出す環境を整えることも、実は重要な仕事ではないでしょうか。


・言い訳をしなければならないようなら最初に断る
・臨機応変。対応はすばやく、思考は柔軟に
・ひとりで闘わない(なんでも独りでせずに能力のあるブレーンをつくる)


ということがフリーランスを続けていくために心掛けている事です。そして常に楽しんで仕事をしていると、周りも仕事が楽しくなると信じています。その結果、良い仕事ができると思っています。最終的にはデザインを含めた総合的な「仕事」で評価され、また次の仕事へと繋がり、実績も増えていくと思います。



仕事が人をつなぐ

実際、僕の場合は広告代理店や印刷会社などの同じ業界からの仕事は少なく、建築家やインテリアデザイナー、ファッションデザイナーから手伝って欲しいと言われ、そこから派生するプロジェクトに関わることが多くあります。例えば、店舗設計をする空間デザイナーから施主(クライアント)をご紹介いただき、その店舗のロゴから販促ツール、WEBサイトまでデザイン及びディレクションし、さらにそのクライアントが持つ別の企業やショップ、ブランドの仕事も手伝うに至ることがよくあります。逆に、グラフィックを依頼されて、空間デザイナーやプロダクトデザイナーをこちらが紹介、または一緒に組んで仕事をすることもあります。

時には、僕が書を書くこともあればイラストを自ら書くこともあるし、空間をデザインしたり、コーディネートしたり、プロダクトをデザインしたりもします。また、それぞれを専門家にお願いすることもありますが、全てはベストな結果が生まれると信じる方法、ブレーンを選んでいます。

いろんな仕事というか、クライアントの様々な要望に応えようとし、必要な企画やデザインを提案していても、自分ではできないことの方が実は多くあります。その時は最良の方法を考え、様々なブレーンに頼ることで乗り切れる場面は多いので、常に自分の業界だけでなく外の人たちとつながり、その人たちの仕事を知っておくことが大切です。僕の場合はグラフィックデザインもそれ以外の仕事も、なんでもかんでも興味が沸くというか、気になって仕方ない性格も功を奏しているのではないかと思っています。


もっと具体的なことを書きたかったのですが、なんとなく概念的な話になってしまいました。もし具体的な質問などがあれば、お答えしたいと思います。分かる範囲になりますが。