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【折々のギフト 令和5年6月号】お中元エレジー

2023年4月〜6月の3ヶ月間は、本記事を一般公開させていただきます。
7月からGRIメンバーズ限定コンテンツとなりますので、
公開されるのは一部のみです。

今年も伊勢丹からお中元の分厚い紙カタログが届いた。
今は「伊勢丹 夏の贈り物 2023」という表紙のタイトルである。別冊の「逸品集」と「夏のご自宅限定便」が併せて届いた。名称は何であれ、お中元といえば百貨店である。

百貨店のお中元は1960年代後半から2000年位までが全盛期だった。各百貨店は催事場の全てのスペースを「ギフトセンター」という受注場にする。関東は新盆なので、お中元の熨斗紙が使えるのは7月15日届け迄である。受注のピークは7月の第一日曜になるが、夏のクリアランスと重なるので、ピークを分散させるため、6月末迄に早期受注会という名目の優待を企画した。結果、6月28~30日に山を前倒しさせた。もちろんライバル百貨店との、売上の奪い合い、のれんの競い合いをする百貨店の一大夏祭り商戦だった。

2000年頃、このお中元ビジネスに疑問を持つ社員が伊勢丹に現れた。これだけ大きな売上の祭りだが、本当に儲かっているのか?である。答えはNOだった。昔も今もお中元好適品のプライスゾーンは3,000~5,000円と変わりがない。3,000円の商品をギフトセンターで販売員が受注し、物流センターで梱包し、宅配便で届ける。平均単価を3,800円と設定して、20年前でさえ利益は無かった。一番のコストはギフトセンターの人件費だった。そこで伊勢丹は他社と連携し、商品、カタログ、梱包、物流、システムを一本化することで百貨店共通ギフトを企画、推進し、実現させた。それによって売上の減少にも耐えられる仕組みづくりがなされて現在に至っている。

あれから20年余経って、全てのコストが上がった。顧客の予算を5,000円のプライスラインにしたいところだが、ギフトカタログは相も変わらず全国送料無料3,000円の商品で埋まっている。どんなにウェブ受注が増えたところで、相も変わらず紙カタログを制作し、ギフトセンターを設置している。

その実、百貨店から贈られる商品には安心感がある。かつてはスーパー・量販店もお中元に参戦してきた。例えば、インスタントコーヒーセットを3,000円で表示し、20%オフの割引で販売する価格戦略で対抗した。同じセットならば割安である。ただし、商品構成をよくみると同じ入数でも、百貨店がゴールドラベルを3本、ブルー・レッドラベルを2本セットするのに対し、割引商品はブルー・レッドラベルのみで組み合わせされていた。

適正価格商品という考え方。これこそ百貨店ギフトの真髄である。近頃はシェア買いという売り方が台頭してきている。量を売ることによって価格が抑えられる。賞味期限や在庫処理、又はPRやマーケティングという理由があってのことだと思う。百貨店で選ばれたお中元という商品ラインアップは、まさに歴史で築かれた、メーカーはじめ流通関係者の適正価格のギフト商品をつくる努力工夫の賜物ではないだろうか。

この20年でお中元という用途が、やや後ろめたい要素に使われてしまっている。本来はお世話になった方へ一年の折り返しに、感謝の気持ちを品物に込めて贈る習わしである。
お中元と言わず「夏の贈り物」上等である。この機会に疚しい気持ちを持たず、お世話になった人への感謝のギフトとすることこそ、百貨店型大量シェア買いではないだろうか。

贈り物相談室は儀礼ギフトではなく夏の贈り物(感謝ギフト)を推奨します。

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