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【荒木淳一郎の「体験」のデザイン vol.1】ブルーオーシャンを探せ


この記事を書いた人、著者紹介

荒木 淳一郎

荒木 淳一郎 Junichiro Araki

企業VMDとVI創出に一貫して携わり小売業にお ける店舗設計とVMDマネジメントに精通。感性と 科学のノウハウと行動経済学、人間工学、色彩学 を礎としたお客様に伝わる提案で集客と売上に 繋げる。店舗体験で社会課題を解決がモットー。 ギフト研究所専務理事


マジョリティの怖さ

1923年9月1日に起きた関東大震災で、帝都は壊滅的被害を受け、およそ10万5000人が犠牲になった。その中には多数の朝鮮人が含まれる。関東一帯で、日本の民間人や官吏らの手で虐殺されたのだ。引き金となったのは、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「集団で襲ってくる」などの流言だった。大手新聞社は当時、それらの流言を記事として掲載した。

その後、各紙は「朝鮮人の暴動」が事実ではなかったことを伝えたが、現在もSNSや一部の書籍では暴動があった証拠として当時の記事が示されることがある。流言は今も消えていない。
これほど大きな誤報を生んだ原因は、多様性を受け入れない偏見とマジョリティに流される弱さではなかっただろうか。

今やマスメディアがSNS上で爆発的に拡散する誤情報、虚偽情報をリアルタイムで抑制するのは困難だ。打消し報道の大前提となる信頼も、欧米などではすでに大きく揺らいでいるようだ。

Mommy

2024年8月に劇場公開されたドキュメンタリー映画『Mommy』。1998年、夏祭りでふるまわれたカレーに猛毒のヒ素が混入し、67人がヒ素中毒で倒れ4人が亡くなったいわゆる「和歌山毒物カレー事件」が題材だ。世間の注目を集め調査し尽された事件であるにも関わらず、犯人として2009年に死刑が確定した林真須美死刑囚とその家族は今も冤罪を訴え続けている。疑問を抱いた二村真弘監督が、自ら現場を歩き回り独自に裁判の法廷で取り上げられた化学鑑定や目撃証言への反証を試みる。

その結果、林家で押収されたヒ素は物的証拠とならないことや、目撃証言とされた証拠も採用する条件を満たしていないことを突き止める。つまり、証拠なき判決と言える。当時マスコミが散々取り上げていたのは証拠ではなく、林家が行っていた保険金詐欺についてだった。
しかし、これは事件との関連が曖昧である。むしろ、林家は保険金詐欺で多額の保険金を手に入れていたので、とても裕福だった。だから無差別殺人をする動機がない。
つまり、証拠がなく、動機もなく、自白もない事件なのだ。
当初、林真須美死刑囚は、保険金詐欺事件で逮捕されるのだが、共犯者である夫の証言によると、保険金詐欺事件に対する林真須美死刑囚の関与は非常に薄いということがわかる。

では、なぜ保険金詐欺事件に関与していなかった彼女が逮捕されたのか。それは、マスコミがそう書き立てたからかもしれない。マスコミは、「彼女は詐欺師で、毒で金もうけをしている。
だから、彼女が殺したんだ」という論調だった。それに世論も同調し、なぜかその論調に検察が応えようとする。世間が林真須美を犯人だと断定し、騒いでいるから彼女を犯人にしなければならないという風潮になっていた。
その結果、保険金詐欺で彼女を別件逮捕し、夫に司法取引を持ち掛けた。

N=1の分析

報道があると、疑いもせず信じてしまうのが世間。
「彼女が犯人だ。早く捕まえろ」と世間が騒ぐと、検察は威厳にかけて逮捕しようとする。大きな流れができてしまうと、それに抗うことは大変なことだ。1人でも異論を唱えると叩かれる。TV媒体などでも1人異を唱えると圧力がかかり、出演できなくなる。
実際に他の事件においても、フリーのジャーナリストが大きな勢力に立ち向かい、圧力をかけられるケースは少なくない。
今の世の中、大きな勢力に反対意見を述べるのは容易ではない。

しかし、冷静に考えると一方向に進むことを一度立ち止まり、みんなが一斉に右を向いている時に、「ちょっと立ち止まって左向いてみないか」という人がいてもいい。
マイノリティにこそ真実があり、果実の種が隠れていることもある。


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