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【店づくり相談室 vol.4】店づくりの神髄は「おもてなし」

しばらくは、本記事を一般公開させていただきます。
その後はGRIメンバーズ限定コンテンツとなりますので、
公開されるのは一部のみです。


一座建立を創りあげる

店舗の役割は、買い物の場として機能するだけではなく、ストレスで悩む人々の癒しの場としての使命も持っています。それは、店舗の動員力の本質なのかもしれません。
新宿伊勢丹本店の事例を三つご紹介します。一つ目は、「北海道物産展」です。この催事はとても動員力が高く、いつも会場は活気に溢れ北海道出身の方々のみならず北海道のグルメを求める人々でごった返しています。その会場は時には、対人恐怖症の治癒に患者さんを連れてこられる先生がいます。お祭りのような活気の中で買い物をしてもらい人との触れ合いを無理なく行うのです。二つ目は、新宿区のカウンセラーの事例です。患者さんを散歩に連れて来られます。鬱状態の患者さんの気持ちを揚げるために。そして三つめは、かなりいると思われるホリック客です。毎週のように、ある方は毎日のように店舗を訪れます。目的がないにも関らず「天気がいいから、なんかまた行きたい」と思うようです。なぜ、このようなセラピー効果(=心理的高揚/リラックス効果)があるのでしょうか。考えられることは、伊勢丹新宿本店には、①賑わいと活気がある。②鮮度(モード感)がある。③非(異)日常感がある。ということです。常に適度に客数が多いので、気兼ねなく商品を見ることが出来る。かつ、ほったらかしにもされず大事にされる。また、店員が親切でカッコイイ。お客さんがお洒落で素敵で若々しい。店内の音(賑わい音も含めて)が良い。新しいファッションや商品、演出が見られる。いろんな実演やイベントをやっている。などの理由が考えられます。つまり、賑わいとファッション性が店舗に艶気を醸し出しているということです。これは、商販に渡るマーチャンダイジングの結晶であると言えます。だからこそ、新宿伊勢丹本店は、店舗全体で一座建立を創り出せるのです。

「Hospitality」と「おもてなし」

全世界を震撼させたコロナも徐々に落ち着きすっかりコロナ前の風景を取り戻しました。街には人が溢れ、嬉々としてイベントや交流を愉しんでいます。中でも訪日客と思われる外国人の多さには目を見張るものがあります。関東近県では米欧を中心に、関西や福岡では韓国の方がとても多いように感じます。訪日客の目的や関心であるツーリズムは観光や買い物からアクティビティや文化体験に変わりつつありますが、私たち一人ひとりに求められるのは「おもてなし」の気持ちであることには変わりはありません。

東京オリンピックを契機に「おもてなし」という言葉に注目が集まりました。さて、「おもてなし」とは日本独自の文化なのでしょうか。「おもてなし」の英語表記は「Hospitality」。その違いは、「Hospitality」は「あなたが望まれるのであれば、喜んでやらせていただきます」という気持ち。「おもてなし」は「相手がお望みのことは何かを考えて、頼まれる前に望みをかなえたい」という意識。やはり「言われたら喜んで応える」=「Hospitality」と「言われる前に気づいて行動する」=「おもてなし」は少し異なる文化のようです。

ラグジュアリーホテルのおもてなし

以前、ある著名な方の話を聞き、感銘を覚えたことがあります。その方の海外出張でのできごと。『ホテルにチェックインして、シャワーを浴び寝ようとしたら、なんだか音が気になって眠れなくなってしまった。フロントに連絡して、調べてもらったら理由が判明。そのホテルでは、ルームサービスが24時間行われていて、どうやらその部屋はルームサービス用の厨房の近くで、その厨房の音が響いていたようです。ホテル側は、すぐに違う部屋を用意してくれたのですが、用意された部屋は予約していた部屋よりも少しグレードが低い部屋でした。ホテルはいくつかの高級な有料コンテンツをサービスしてくれたので全く不満はなかった。ところが、帰国後しばらくしてから旅行会社を通じてホテルの部屋代の差額分が返金されていたので大変驚いた。差額分は有料コンテンツで充分にサービスしてもらえたので満足していましたし、まして帰国後に差額返金など考えてもいなかったから。』一流ホテルの顧客満足を追求する姿勢を肌で感じたというエピソードです。

ラグジュアリーホテルの定義は、「お客さまの不快感のなさ」です。ひとりのお客さまに「このホテルは不快だ」と思われた瞬間にラグジュアリーホテルではなくなると聞きました。彼らは、ベンチマークを超えるサービスをすることがミッションだと捉えられていて、さまざまな神対応のエピソードを耳にします。その根底には、「究極のパーソナルサービス」「お客さまが言葉にされない願望やニーズまでも形にすること」があります。

アトモスフィアでお客さまの感嘆詞を

自宅にお客さまをお招きする場合を想定してみます。まずは、お客さまに不快感を与えないように部屋をきれいに掃除します。そして、お客さまの好みの料理を準備しようとします。自分の得意な料理がお客さまの好むものとは限らないわけです。押しつけては「おもてなし」はできません。お客さまがボリューム派ならばイタリアン。さっぱり派ならば懐石風。さらにお客さまの好みによって調理法も変えなければなりません。隠し味(スパイス)をどうするか。お客さまが好きなものを自分流にアレンジしてオリジナリティ溢れる料理を提供したいと考えます。そして、料理に合った器を選び、彩りや盛り付け方、並べ方などに気を配ります。さらに、テーブルのスタイリングやコーディネーション、テーブルウエアやテーブルフラワーといった演出。映像や音楽といった空間や話題作りの仕掛けなど空間を一体化し、視覚を中心とした五感に訴える演出を考えます。それは、雰囲気やムードといった空気感(アトモスフィア)を創り出すことでお客さまの「Wao!」が聞きたいからです。空間に魂を吹き込み生き生きとした躍動感を与えることがお客さまの感嘆詞を生み出します。

茶室は「おもてなし」の原点

おもてなしの空間と言えば茶室を思い浮かべます。茶室という小さな空間は、主人が趣向を凝らして客人をもてなす完結した小宇宙です。主人は掛け軸や生け花、一輪挿し、茶器などに工夫を凝らした演出を施すことで、その場の目的や主旨などを客人に無言のうちに伝えようとします。客人は、イマジネーションを働かせもてなしの心を感じ取ります。茶室には、客人をもてなすための主人の知恵と工夫、即ちクリエイティブ表現が仕掛けられているのです。それは、主人から語られることはなく、客人が気付き、感じ取ることでコミュニケーションが発生します。一期一会の精神でもてなし、客と主人の気持ちが共鳴し、一体化することで非常に高揚した茶席となります

「おもてなし」は気持ちの共鳴

「おもてなし」の語源は、表裏なし。「面なし」であり「以って成す」。いずれも「Selfless」の精神です。自分を消して相手を慮ることであり心で接することです。「おもてなし」には、お客さまとの「気持ちの共鳴」が不可欠です。それは、お客さまの感情やニーズを理解し、それに寄り添うことを指します。お客さまとのより深いつながりを築き、特別な体験を提供するためには、お客さまの声に真摯に耳を傾けることが重要です。さらに、お客さまの感情やニーズを的確に理解するためには、コミュニケーションスキルや共感力も必要です。

「おもてなし」の象徴的な場として高級料亭が挙げられます。高級料亭では、いかにお客さまに気持ちよく過ごしていただけるかに気を配ります。昭和時代の料亭には、7~8種類の扇風機が用意されていたと聞きます。まさか、ライバル会社の扇風機を「おもてなし」の場で使うことはできないからです。事前にお客さまの家族構成やその好みまで情報を収集し、お土産にも気を配ったと聞きます。

店舗での「おもてなし」は、最高の体験を提供することにあります。そのために、お客さまが快適に過ごせるような魅力的な空間づくりや商品、サービスの質の向上が重要です。店舗スタッフの親切で思いやりのある対応が心地よい体験を提供する一方で、効率性も不可欠です。お客さまをお待たせしないということも大切な「おもてなし」だからです。スムーズなオペレーションや効果的な予約管理、迅速なサービス提供などが顧客満足度を向上させます。お客さまのフィードバックや要望に対して柔軟に対応することも大切です。また、店舗での「おもてなし」は、人を介したものだけではありません。適切な表示は、人手不足をオペレーションで解決する方法です。この時、ピクトグラムを使うとより効果的です。

お客さまの感情やニーズを理解し寄り添うことで、お客さまが言葉にできない願望やニーズを汲み取ることも可能になります。気持ちが通い合うことで、そこに「高揚した空気感」が生まれます。それが一座建立感です。これは、顧客ロイヤルティの向上や口コミの拡散にも大きな影響を与え、アドボケイト(自社のブランドや商品を熱狂的に支持して他社に推奨してくれるファン)を生み出します。質の高い「おもてなし」は、お客さまからの支持を得るだけでなく、競争力を高めることにもつながります。今の時代のマーケティングの要はアドボケイトの存在であり、店づくりの神髄は「おもてなし」にあるのです。



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