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オカルトに魅せられて

子供の頃からやたらとオカルチックなものに惹かれてしまう。それはもう病名をつけられそうなほど。

私とオカルト


きっかけなんてもう思い出せないが、幼稚園のアルバムに書いてあった将来の夢を見ると他の子はお姫様、お花屋さん、ケーキ屋さん、バレリーナなどと書いてあったが私は「魔女、妖精さん」だった。人外。もう既に様子がおかしい。「おジャ魔女どれみ」や「ハリー・ポッター」の影響だと思うのだが幼少期とはいえ将来の夢に魔女と妖精を掲げていたのは私くらいだ。
ほん怖も必ずと言っていいほど見ていた。見た後しばらくはトイレに行く度に本編の倍の恐怖を味わうのがお約束なのだが、それでもどうしても見てしまう魅力があった。

小学校に上がると図書室で怪談本を片っ端から読み漁り、行きつけのレンタルビデオ店でも「トイレの花子さん」や 「学校の怪談」、「ゲゲゲの鬼太郎」といったアニメをよく借りた。
その頃何度も繰り返し借りていたドラマ「六番目の小夜子」は今でも印象に残っている。恩田陸先生の小説が原作なのだがなかなかオカルチックな仕上がりになっていて、そして実はキャストが豪華。鈴木杏さん、山田孝之さん、栗山千明さん、松本まりかさん。特に謎めいた転校生役の栗山千明さんが漫画のような美貌で目立っていた。最近見返してみたのだがおぼろげな記憶の印象以上に不気味で、我ながらあの年でよくこんなの好んで見てたなと驚いた。(ドラマ自体はとても面白く、久々に楽しく観ました。最近こういう色の作品なかなかないですよね)
ビビリなくせにどうしてわざわざ見たがるのかと母は相当イライラしていたがやがてレンタルビデオ店でホラー映画を借りる許可をくれた。嬉々としておどろおどろしいパッケージを眺め、どれを借りるか熟考する私を母は気味悪そうに見ていた。父は面白がって「シックス・センス」を見せてくれた。
高学年になると「スパイダーウィック家の謎」(妖精)、「ダレン・シャン」(ヴァンパイア)、「ハリー・ポッター」(魔法)にどハマりして毎日ランドセルいっぱいに本が詰まっていた。当然机の中も本がぎっしり詰まっていて、ある日の授業参観で私の机の異常に気づいた保護者がざわつく事態となり母にぶん殴られた。中学では「トワイライト」(ヴァンパイア、狼人間)、ドラマ「SPEC」(超能力)や海外ドラマの「ゴースト ~天国からのささやき」、「ミディアム 霊能者アリソン・デュボア」。
どれもオカルトやファンタジーが好きで読み始めたわけではなく他にも色々と本は読んでいたのだが、不思議なことにハマるものには明らかに偏りがあった。

高校生になりスマホを手に入れてからは怖い話が身近になった。普段は無害なオタクをやっている私だが、無性に怖い話が読みたくなる波があり、自分でも何かに取り憑かれているのかと思うほど授業中だろうがなんだろうが関係なしに2ちゃんの怪談まとめサイトを読み続けてしまうことがあった。その頃ビビリなりに知恵をつけた私は読む怪談のセレクトには気をつけるようにしていた。地方伝承系、海や山の怪談、呪い系など自分の日常生活とは関わらない怪談を選び、一人にならざるを得ないトイレや風呂場の怪談は絶対に回避していた。
こんなことを続けて高校3年の夏休み、祖母の家に行く機会があった。一週間ほど滞在したのだが面白いくらいに何もない田舎で家の前には田んぼが広がりずっと先の道路まで見渡せる。周りは山。なにもかもグリーン。さぞかし勉強が捗っただろう、勉強道具があれば。受験生だというのに私はそれらを全て「忘れた」ので暇を持て余してひたすらスマホばかり弄っていた。そしてそのうち2ちゃんまとめサイトのとある怪談に辿り着いた。


師匠シリーズ

掲示板特有の文章のなかで異質な輝きのある文に興味を引かれた。2ちゃんに書かれたものなのにまるで小説のよう。ちょうどその物語も田舎で過ごす夏休みを描いていたのでシンパシーを感じて夢中で読み進めた。幼かった頃の幸福で輝くような夏休みを思い出しながら、所々でゾクゾクする感覚も楽しみ、最後は美しく哀しいノスタルジーに浸った。こういう後味が残る物語は大好物だ。なんだこれ!なんだこれ!と調べるうちに「先生」というタイトルのその物語が作者ウニ氏による師匠シリーズの一作だと分かった。連作短編小説として断片的に、時系列バラバラに投稿されたこのシリーズの構成は語り手ウニ、ウニのオカルトの師匠、さらにその師匠の加奈子さんという三人の師弟関係がベースにあり、ウニが自分と師匠の体験した話、師匠から聞いた話を語っていく。ただ怖い話をしているのではなく、その怪異の意味を調査したり解決したりとミステリー要素も満載で推理小説のようだ。歴史や民俗学などの知識も盛り込まれ、説得力の強さが素晴らしい。このシリーズは断片的に語られるなかで徐々に張り巡らされた伏線が明らかになり、核心部分の輪郭が見えてきた…ところなのだがまだまだ謎が多く読者による考察が大いに盛り上がっている。つまり未完であり、たまに新作が出る状態だ。私の「これが完結するまでは絶対に死ねないランキング」ベスト3に入っている。

とにかく、2ちゃんを知らないという人でも怖い話に深刻なアレルギーがない限りはぜひ一度読んでみて欲しいのでまとめサイトを置いておく。免疫がない人も安心して読める安全なサイトなのでお見知りおきを。
※掲示板に書かれたものを抜き出してまとめたサイトで2ちゃんに繋がるわけではない。

時系列順に読むか投稿順に読むかは賛否両論あるのでとりあえず一作、二作読んでみてから決めたらいいと思う。

時系列順
https://nazolog.com/blog-entry-4803.html

投稿順
https://nazolog.com/blog-entry-737.html


全て無料で読める素晴らしくお得なシリーズですので絶対に損はしないとお約束します。ウニ氏の文章センスが光っていて、これが無料で読めて2ちゃんにあるのが信じられないレベルの完成度です。kindleの無料本をついつい買ってしまう感覚で気軽に読んで見てほしい。


しかし何しろ話数が多いのでどこから読むか戸惑うかもしれないので個人的におすすめの話をいくつか紹介させていただく(これがやりたかっただけ)。単体で読んでも面白いのをチョイスしてみた。

・「先生」
https://nazolog.com/blog-entry-834.html
先述の私が初めて読んだ話で、今も一番好きな作品。師匠が小学生の頃に田舎で過ごした夏休みのエピソード。幼い思い出の中の夏の香りを思い出させてくれる。懐かしさや終わりの寂しい雰囲気が余韻を残すセンチメンタルな後味。最後まで読めばそんなに怖い話ではないのでビビりも安心。

・「貯水池」
https://nazolog.com/blog-entry-790.html
師匠シリーズの構造が良く分かる一作。師匠は男?女?と困惑した人はこの話を読めば納得できるはずだ。そしてこのシリーズ全体に漂っている、戻らない過去をじっと見つめて愛おしむような感覚の根底にあるものが見えてくる。ホラー要素はそこそこ強め。

・「花」
https://nazolog.com/blog-entry-3647.html
短編。心霊と人コワの融合でゾクッとさせられる。こういうホラーの発想はなかなか無い気がする。

・「未」
https://nazolog.com/blog-entry-1590.html
シリーズの中では長めで読み応えがある。旅館の心霊現象を紐解き解決する話。師匠と加奈子さんのコンビが奔走する姿がシャーロックホームズを彷彿とさせる。推理小説、歴史や民俗学に興味がある人は特に楽しめると思う。幽霊は出るがおどろおどろしい感じはない。私のお気に入りの一つ。

・「怪物」
https://nazolog.com/blog-entry-804.html
こちらもなかなか長いが、ウニの知り合いの京介さん(※女性)が高校生の頃に体験した話。連日の悪夢と周囲で起こる超常現象の原因を探っていく。私は京介さんが大好きなのでこれもお気に入り。心霊的なホラー要素は薄い。

師匠シリーズを誰かと語りたくて仕方がない私は数少ない友達に押しつけにならない程度に勧めたりtwitterでちょこちょこ呟いたりしていたのだがある時ついに布教に成功した。
大学で知り合った知的なその友人はかなりの読書家で、いつも文庫本を持ち歩いていた。絵にかいたような理想の文学部生だ。自分よりはるかに小説を読みなれている人に2ちゃんを勧めるのも気が引けたが言ってみるものだ。ネットで無料で読める気軽さもあってか彼女は読んでくれて、かなりハマった。分析が得意な彼女は提出用のレジュメかと突っ込みたくなるほど几帳面に伏線らしき部分や人間関係をまとめ、考察までまとめてメモしていた。彼女は別にホラー好きという訳ではなかったのだが、共通の話題ができたことで仲良くなり、華の女子大生二人サイゼで夜遅くまで2ちゃんのホラー小説で盛り上がった。今でも数時間の長通話で考察を語り合う仲だ。
何が言いたいのかと言うと、オカルト好きの私だけでなく、むしろ怖い話が苦手な読書家も面白いと言ってハマっているので自信を持っておすすめしています、ということだ。実際、師匠シリーズの読者のコメントは「これが無料で読めるなんて」「映画化してほしい」といった声で溢れている。それに一部は書籍化したし、コミックスも出たし、ラジオドラマも作成された。あの関智一さん、朴璐美さんが師匠と加奈子さんを演じ、璐美さんファンの私は大歓喜である。
ただやはり読みやすいのはこのまとめサイトなのだ。
念のためもう一度置いておく。

時系列順
https://nazolog.com/blog-entry-4803.html

投稿順
https://nazolog.com/blog-entry-737.html

師匠シリーズの更新が待ちきれず、こんな物語が他にないかとずっと探していた私が出会ったもう一つの作品についても紹介しておきたい。

ゴーストハントシリーズ


小野不由美先生の作品で「悪霊シリーズ」とも呼ばれている。
普通の女子高生・谷山麻衣が旧校舎の怪異をきっかけに超常現象の専門家の美青年・渋谷一也や霊能者たちと怪事件の調査をしていく。
Kindleの無料お試しコミックから偶然知った作品で途中まで読んでこれはアタリだと確信した。

原作小説は最近になって角川で文庫化されたのだが、表紙がホラーお決まりの黒地でなく綺麗な色遣いに幻想的なデザインなのが気に入った。ホラーはただ不気味で気持ち悪いものではなくて美しく恐ろしく神秘的なものなのだ。
師匠シリーズは心霊メインだったがゴーストハントシリーズは超能力や呪いも取り上げていて興味深かった。霊に対して仏教、神道、キリスト教に精通した坊主、巫女、エクソシストが出てきて除霊をしようとするあたりは師匠シリーズを読んでいると少し違和感(宗教関係に頓着せず法事だけ仏教、というような日本人の霊に生前親しみのないキリスト教の除霊が果たして有効なのか)があったが、超常現象や中国巫蠱道など幅広い知識が盛り沢山でそれらが上手く展開しているのでシリーズ7作全てとても面白かった。師匠シリーズと同じく怪異×ミステリー。7巻で物語の伏線が回収されるところも印象深く、何度も最初から読み返したくなる作品だ。個人的には4作目、6作目、7作目、続編の「悪夢の棲む家」が特にお気に入りで何度も読み返している。「悪夢の棲む家」は今は絶版になっていて入手が難しいのだが、漫画版は電子書籍でも買うことができる。ちなみに私はどうしても小説が読みたくて中古の上下巻セットに4000円出した。届いた文庫本は定価450円と書いてあった。後悔しないくらい面白いので文句はないが。
このゴーストハントシリーズは1989年に刊行されてから何度か再刊されていてシリーズ累計で100万部を突破しているという。それだけ長く愛され、コミック化、アニメ化まで果たした人気の作品と張り合える(※個人の意見です)師匠シリーズ、これが無料で読めるなんてすごくないか?!とあらためて思った。師匠シリーズもゴーストハントもとても面白いので是非読んでみてほしい。

終わりに

こんなにオカルトに関心がある私だがどういうわけか零感だ。たぶんそういったアンテナや感受性が備わっていないのだろう。もしくは鎧をつけた武士とかガタイのいいマッチョなボクサーとかイカつい守護霊か背後霊がついていて私にそういったものを寄せ付けないのかもしれない。それなら私の気性の荒さも納得がいく。心霊体験があれば喜んで書くのに、と思いつつも「遠目でチラッと見えるだけでいい、決して目があったり追いかけてきたり憑いてきたり引っ越し先で同居する羽目にはなりたくない」とも祈っている。自分が霊体になる前に、ほんのちょっとだけ姿を見てみたいものだ。


おまけ:零感な私の怖い話


零感の私が語れる心霊エピソードはほぼ無に等しいのだが、せっかくなので友達に話したところちょっとウケがよかった話を書いてみる。


私の家は川の近くにある。細く浅く舗装もしっかりしていて滅多なことでは氾濫しない、大して綺麗でもない普通の川だ。通っていた小学校は私の家から上流に向かってしばらく行った辺り、川の真横にあった。都会でもないが田舎というほど自然が身近な地域でもなかったので、今のうちにどんどん自然と触れ合うべきだ、と入学してからというもの何かにつけては連れ出された。私を含め大半の児童は川遊びを大喜びで受け入れる野生児ばかりだった。

入学したばかりの一年生の頃。ハカセと呼ばれるクラスメイトがいた。大の昆虫好きで図鑑のほとんどを暗記しており、子供向けの百科事典や科学の本を読んではその知識を披露していたからだ。本人もそのあだ名が気に入っていたように思う。誰よりも早く計算問題を解くことができ、泣き虫でお調子者だった。
ある日いつものように川に放牧されて私たちがやかましく遊んでいるとそのハカセが「化石みっけた!」と大声をあげた。私たちは即座に集合してハカセが掲げる石を眺めた。ごく普通のグレーの石にくっきりとエビの尻尾のような形が浮き出た石だった。楕円形のものが半分に割れたような形をしたその石を私たちは“化石”と呼んで盛り上がった。今思えば何となく人工物っぽい石だったが、小学校一年生の児童には立派な化石に見えたのだ。それにハカセが化石と言ったのだからそれは化石だ。ハカセは珍しい虫や石を見つける天才だった。私たちは野生児から化石の発掘調査員になり、ハカセがその石を見つけたという場所はしゃがみこんで砂利をかき分ける児童でいっぱいになった。しかし収穫はゼロ。しばらく川に行く度に化石探しは続いたが、ハカセが見つけたような石は誰も見つけることができずに終わった。

それから何年も経って、私は川沿いの道で犬の散歩をしていた。
その道には中途半端な位置に古いお地蔵様がある一角があった。道路を作るときに移設されなかったようで道はそのお地蔵様を避けるようにY字になっていた。お墓のようにしっかりした土台と塀があり、そのすぐ横に生えた大きな木が影を落としているのでいつも薄暗い感じがしている。夕方になり日が暮れてくるとひどく不気味なスポットになるのだが、その日はまだ明るく顔の怖い愛犬もいたので私は何となく通りがかりに覗くことにした。住宅地と川の間でどっちつかずの位置に浮いた一角は明るくても少し不気味だったが犬も呑気にしているしおかしなところは何もない。近寄ってみると思っていたよりだいぶ古めかしいお地蔵様や灯篭のようなものがあるだけだった。丁寧に手入れをされているわけでもなく、黒いつるつるした石がばらまいたように敷いてある。花もお菓子も小銭もない。この、人の世界と何の繋がりもなくなって放置されている様子が不気味に感じる原因かもしれない。さっさと帰ろうとしてふとお地蔵様の足元が目に留まった。なんだか変な形の石がいくつか転がっている。それをよく見てはっとした。
あの“化石”だ。記憶にあるエビの尻尾みたいな形が全く同じだった。ハカセが見つけた“化石”は石でできたお供え物だったのだ。気づいた途端急にその場の空気が冷えたように感じ、私は犬を引っ張って足早にそこを離れた。時間が経っていたこともあってハカセに化石の正体を言うことはできなかった。どういう経緯であの石が河原にあったのか、ハカセがその石を持ち帰った後でどうしたのか、今となっては知る由もない。


川沿いには桜並木があって春はとてもきれいなのだが、以前は梅並木だったらしい。家の近くに一本だけその名残が残っている。梅の花もきれいなので小学生の頃は犬の散歩のついでに見に行っていた。
しかし、どうして一本だけその木が残っていたのか。その訳を近所に住む人から聞いた時はショックだった。
舗装される前の川はよく氾濫して洪水被害が多発していたらしい。流される人もいたとか。ある時氾濫して流されてしまったおばあさんの遺体がその梅の木に引っかかって見つかったそうだ。それで川が舗装され荒れることがなくなった今もその一本だけが残されているらしい。その木を残すためにそこだけ道幅が広くスペースが空いている。
小学生だった私はその話を聞いて、よせばいいのにその梅の木に寄り添って立つ老婆までしっかり想像してしまい一人で恐怖心を膨らませた。どうして残すなら残すで場所を移さなかったのか。その理由を考え始めると不吉な考えばかりが浮かんでしまったのだ。切ろうとして事故が続いたというような怪談あるあるか、万が一の時に誰かが引っかかって発見されるように、というのは嫌な考えだ。最近になって遺族や地域の人々が純粋にご遺体が見つかっただけで幸運だった、と感謝したのかもしれないと思うようになった。夜は決して通らないが。

こうして私にとって川はだんだん不気味な場所になっていたが決定打となる出来事があった。
中学に上がった頃、家のすぐ近くで入水自殺があったのだ。若い女性が雨で荒れた川に向かって土手を降りていったらしい。消防車やパトカーが集まって付近は一時騒然としていたそうだ。私は何も知らなかったのだが翌日たまたま目撃者の中年男性と会ってしまったために橋から十数メートル、土手の草むらの一部が不自然に下向きに倒れているわけを知ってしまったし、その男性が遺体の写真確認をさせられたときにどんな悲惨な姿を見たのか聞いてしまった。
その場所はほぼ毎日通っていて日が暮れてからの帰り道にはよく思い出す。とりわけ雨の日には視界の端に見てはいけないものが映らないか心配だ。


川のエピソードばかり並べてみたが、実際私は何か見たわけでもないのでただ不気味なだけの話だ。書いておいてなんだがこんな話より是非一度師匠シリーズを読んでいただきたい。

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