虹色の従者
クィーロ・ルスティアがカップを持ち上げ中身を覗き見ると、いつも通りウアトの淹れたカムは虹色をしている。油が浮いている訳じゃない。
焙煎された豆の香りはそのままに、本来の色である漆黒ではなく、虹色に変貌しただけだ。
「腕を上げたな」
「恐れ入ります」
一口飲んだクィーロの感想に、ウアトは右目を細めて喜びを露わにした。
クィーロはその様子を見やり、左目を覆う眼帯を見る。眼帯に覆われた左目が、彼女が淹れたカムと同じ色である事を知るからだ。
メイド服を隙なく着こなしたウアトは美しい。だが、何処か非人間的で恐ろしくもある。
異様な幾つかの力も恐怖を呼び起こす。
だが、魔術師であり敗軍の将であるクィーロは、恐れない。力を求めた故の出会いであるからだ。
「復讐は自身の力で行わなければ意味が無い、か」
誰の言葉かは忘れたが道理だ。
だからこそ、クィーロの飲むカムは苦い。
【続く】
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