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「ソーラーシェアリングが台風に弱い」は本当か

今年はソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)がメディアに取り上げられる機会が以前にも増して多くなり、テレビの報道番組やネットニュースなどで報じられたことでSNS上などに様々な反応が見られるようになりました。

他のテーマでも同様ですが、パッと動画・画像で目にしたときの印象・先入観というのは避けられないものだと思う中で、ソーラーシェアリングの場合に多いのは「農業が出来ない」と「台風ですぐ壊れる」の2点だと見受けられました。

「農業が出来ない」という印象

「農業が出来ない」は細分化すると「農業機械が入らない」「作物が育たない」などの印象が一纏まりになっているのと、どうしても農業面で不適切な事例が目立ってしまっているので、その払拭には個別の発信を強化していくしかないのだろうと思います。

コンバインによる稲刈り
トラクター作業
夏野菜の栽培
トンネルによるショウガ栽培

「台風ですぐ壊れる」という印象

こちらは私もよくTwitterなどでコメントを貰いますが、実際に台風で損壊してしまった事例があるのも事実です。一方で大木戸のソーラーシェアリングのように、2019年に千葉県を中心に大停電を引き起こした令和元年房総半島台風(千葉市で最大瞬間風速57.5m/s)でも設備に全く被害がなかったという実績もあります。

令和元年房総半島台風通過直後の大木戸の設備

この点は、私もこういった実績があることをコメントで返すのですが、その後はパッタリとレスがなくなることが多いので、特に根拠のない単なる外見的な印象での反応なのだと思います。

これまで台風などの暴風による被害を受けた設備は、藤棚式でもアレイ式でも様々見てきましたが、大きく分けると架台設計と施工品質が影響しているように見受けられました。そのため、架台メーカーと施工会社の間で責任の押し付け合いになることも珍しくありません。

結局は、設計・施工時に必要な配慮をしていれば頑強な設備になり、イニシャルコスト削減などを無理にやり過ぎてしまえば強度が下がって台風で壊れたりするという、当たり前の話に落ち着きます。

営農型太陽光発電の設計・施工ガイドライン

とは言え、今後ソーラーシェアリングが更に普及していく段階に入れば、適切な設備・不適切な設備の玉石混交の状況が拡大してしまうことも大きな懸念材料です。そうした懸念に先手を打つべく、今年11月に営農型太陽光発電の設計・施工ガイドラインがNEDOから公開されました。

これまでは公的なガイドラインがなく、弊社のようなコンサルティング会社や、各地の施工会社がそれぞれ独自の知見に基づいてソーラーシェアリングの設備を設計・施工してきましたが、これからはガイドラインに準じたものとなっているかどうかで発電事業者側からも妥当性の判断がやりやすくなるでしょう。

そうなっていけば、ソーラーシェアリングに対する「農業が出来ない」や「台風ですぐ壊れる」といった印象も払拭されていくのではと期待しています。

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